自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第39話 運営管理⑦ 資材管理

運営管理は興味ある人には楽しめる科目だろうけれど、興味ない人にとっては苦痛の何者でもないのではなかろうか。その理由はイメージがしづらいことが挙げられるだろう。それにこのようなテキストだけの説明では分かりづらいことも多いので余計にイメージできないのではないか。特にSEや女性には苦手意識があるという。

 

今回は資材管理についてから始める。

生産しようにも資材が必要数ない場合は生産できない。じゃ、資材が豊富にあればよいかといえば在庫コストが増えるので経営的によろしくない在庫は棚卸資産であり、棚卸資産が増加することでキャッシュフローが減少してしまう。いわゆる「黒字倒産」になりかねないのだ。資材についてもポイントになるのは、必要なときに必要な分だけ在庫がある、ということであり、商品である財やモノの需要予測がキーになることがうかがい知れよう。
例を挙げて説明するなら、
「カレーライスを○kg作ろう」とした場合、カレーライス○kgに必要な材料(部品)は何と何で、それぞれ○kgずつ必要で、といった資材面の計画を立案し、その在庫までを管理するのが資材管理だ。

そこで、1960年以降、コンピュータの使用を前提としたさまざまなMRPが開発されてきた。

<MRP(資材所要量計画)>
 生産計画情報、部品構成表情報および在庫情報に基づいて、資材の必要量と時期を求める生産管理体系、とJIS定義されている。

MRPの仕組みはこうだ。
名称のとおり、資材の所要量を計画する仕組みであるが、「何をいつ何個作るか」という情報をインプットすることで、「どの資材を、いつ、どれだけ発注するか」がアウトプットされるということだ。
それには現状の部品の在庫、納入リードタイム、生産ロットサイズ、部品構成表などの情報を経由して計算されることが必要となる。
MRPは生産計画そのものは作ってくれない。MRPを有効に利用するための情報をあらかじめインプットする必要があり、MRPが実行される場合には基準となる生産計画をもインプットする必要がある。MRPはインプットした以上の情報は持ち得ないため、何らかの環境変化による情報の変化に即座に対応できない。たとえば、納入リードタイムが変わったとか、基準在庫量が変化したとかいう条件の変化は再度インプットしなおす必要がある。つまり、万能ではない、ということだ。
MRPに必要な情報の一つに、部品構成表というのがある。要するに材料表とか、配合表とか、レシピといったものだ。
たとえば、カレーライス100人分(これを独立需要品目という)生産するのに必要な材料が部品であるが、これらの部品を従属需要品目と呼ぶ。独立需要品目はレシピに紐づいていて、レシピに基づいて従属需要品目が算出される仕組みとなっている。


実際にMRPを扱ったことのある人ならイメージがわくと思うが、そうでない方にはイメージしづらいところかもしれない。
MRPは需要が平準化されている場合は有効に機能するかもしれないが、需要変動の大きい場合には不向きだ。どうしても人間の経験とカンには勝てないところであって、いくらAI機能が進化しても人間に取って代わるということはないのではないかとさえ思う。

次いで在庫管理についてだ。

先にも述べたように在庫が多すぎても少なすぎても問題点はある。もっともよいのは受注情報が到達したとき、すなわちディカップリングポイントで生産指図できれば在庫ゼロで受注分に対応することは可能だ。もちろん極論すれば、であるが。

そこでここでは発注方式から細かく見ていくことにする。

まずは定量発注方式
JIS定義は、在庫量が一定の量(発注点)に達した場合、あらかじめ設定した一定量(経済的発注量)を発注する方式、とある。ここでポイントになるのは発注点の出し方、経済的発注量の出し方、定量発注方式のメリット・デメリットについて、だ。
まずは安全在庫を決定する。これにも算定式がある。そして安全在庫を使って発注点を求める。これにも算定式がある。発注点は調達リードタイムに調達リーダ尾タイム中の一日あたりの平均需要量を乗じたものに安全在庫を加えたもの、である。そんなに難しくない。
経済的発注量は総費用をもっとも小さくする発注量のことで、これにも算定式がある。
言葉で説明するとややこしいが・・・、

経済的発注量(EOQ)=(2×1日あたりの発注費用×年間需要量÷在庫品単価×在庫費用率)の正の平方根

となる。んー、分からん。

定量発注方式のメリット・デメリットをまとめる。
<メリット>
 運用や管理が容易なところ。事務処理が効率化できるところ
<デメリット>
 需要変動の激しいものには不向きだ。調達期間の長いものも不向き

だから安定した需要で、各調達資材の納入リードタイムが長くないものについてであれば、定量発注方式が適しているといえる。

一方、定期発注方式という方法について述べる。
JIS定義は、あらかじめ定めた発注間隔で、発注量を発注ごとに決めて発注する在庫管理方式、とある。
メリット・デメリットを見てみよう。
<メリット>
 精度の高い在庫管理が可能。需要変動が激しいものにも対応可能
<デメリット>
 管理が複雑で手間。発注の都度、需要予測に基づく発注量を計算する必要がある。安全在庫が増加する可能性がある

定期発注方式の場合、発注量は発注ごとに決める必要があるが、このとき発注ごとに発注量を変えない方法は定期定量方式と呼ばれる。
定期発注方式における発注量=在庫調整期間における予想消費量-(現在の在庫量+発注残)+安全在庫 というのが算定式。
なお、在庫調整期間=発注サイクル+調達リードタイム となる。
また、安全在庫は発注サイクルと調達リードタイムの合計である在庫調整期間中の需要量と予測とのブレに対応するための在庫

次は、実はよく使われるダブルビン方式と呼ばれる発注方法だ。これはABC分析におけるC品目などに使われることが多い。
ABC分析ではパレート図が利用されるが、品目数累計上位20%、在庫金額全体の80%の品目をA品目、同様に、上位20~50%、在庫金額が全体の15%の品目をB品目、その他をC品目とする。ABC分析の結果、
<A品目>
 重点管理項目として扱う。発注方式は定期発注方式を採用
<B品目>
 一般には、定量発注方式を採用するが単価の高い品目については定期発注方式を採用
<C品目>
 管理の効率化を優先し、定量発注方式またはダブルビン方式を採用
というふうに活用できるわけ。

なお、JIS定義では、「安全在庫」と「見越在庫」を明確に区別している。先にも述べたが、運営管理の生産管理分野はJISの定義をどれだけ正確に押さえるかがポイントだといっても過言ではない。しっかり区別すべき。
安全在庫 → 需要変動または補充期間の不確実性を吸収するために必要とされる在庫
見越在庫 → あらかじめ予測できる変動への備えとしての在庫

ホント、いろいろあるよねー。

続く。