自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第44話 経営法務② 大学時代を思い出す『不法行為』

今回は、契約の不履行から始める。

契約が履行されない場合の代表的なケースが債務不履行債務不履行とは、債務者が正当な理由がないのに債務者の責めに帰すべき事由(債務者の故意・過失による事由)によって債務の本旨に従った債務の履行をしないことをいう。
債務不履行が生じた場合、債権者は、損害賠償請求、契約の解除といった手段を講じることが出来る。債務不履行には次の3タイプがある。
履行遅滞
・履行期が到来し履行が可能であるにも関わらず、債務者の故意・過失によって債務を履行しないこと
・債権者は履行請求、損害が生じた場合には損害賠償請求、契約の解除(催告必要)が可
金銭債務の場合には、履行遅滞が不可抗力であっても債務者は損害賠償責任を負う
履行不能
・債権が成立当初は履行可能であったものが、その後に債務者の故意・過失によって不能になるもの
・債権者は損害賠償請求、契約の解除(催告不要)が可
・金銭債務の場合は、履行不能ではなく、履行遅滞となる
不完全履行
・債務の履行はあったが債務者の故意・過失によりそれが不完全であった場合のこと
不完全履行の時点で、履行が可能であれば履行遅滞、履行が不可能であれば履行不能となる

続いて、債権者代位権と詐害行為取消権(債権者取消権)について。
民法では債権者に対して、債務者の財産を保全するための制度として債権者代位権と詐害行為取消権を用意している。
債権者代位権
・債権者が自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することが出来る権利
詐害行為取消権
・債務者が債権者を害することを知ってした法律行為について、債権者が裁判所に取消を請求できる権利

危険負担。
危険負担とは、双務契約において、各債務が完全に履行される前に一方の債務が債務者の責任外で債務不能になって消滅した場合に、他方の債務はどうなるのかという問題をいう。不特定物については債務者主義、不動産などの特定物に関しては債権者主義を採用している。だから入居前にマイホームが家事で焼失してしまった場合、買主(債権者)は代金支払義務を負うということ。なんだか変だなぁと思うけどね。

次は瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、売買契約など有償契約において目的物に隠れた瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う損害賠償をする責任、契約解除に応ずべき責任のこと
特定物の売買においては、売主はその目的物を引き渡せば、履行したものとみなされる。だからその目的物に瑕疵があっても売主は債務不履行責任を負うことはない。それでは債権者である買主に不公平だから、民法は特に買主を保護するために瑕疵担保責任を設けている。
瑕疵担保責任は法定の責任であり、当事者間の契約うんぬんは関係がない。
なお、瑕疵担保責任は買主にとっては善意無過失であることが必要であり、売主にとっては無過失責任。時効は買主が知ったときから1年
つまり、売主に責任があろうとなかろうと買主が善意無過失であり、知ってから1年である限り売主は瑕疵担保責任を負うということ。

次は不法行為
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、これによって損害を与える利益侵害行為をいう。不法行為には成立要件が5つある。
被害者に損害が発生していること
債務不履行の場合と同様に、財産的損害、精神的損害を含む
加害行為が加害者の故意または過失に基づくものであること
・故意とは「わざと」、過失とは「不注意」
損害と加害行為との間に因果関係があること
・加害行為があったから損害を受けた、という因果関係があること
加害行為が違法なものであること
・他人の権利または法律上保護される利益を違法に侵害することが要件。
 なお、正当防衛や緊急避難は違法性がないため不法行為にはならない
加害者に責任能力があること
また、不法行為は、被害者側が加害者の故意・過失を立証する必要がある。消滅時効は、損害および加害者を知ったときから3年。

続いては、不当利得。不法行為に字面が似ているけれど、まったく別物だ。

不当利得とは、法律上の原因がないのに(正当の理由がないのに)他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(受益者)に対して、その利得を返還する義務を負わせる制度。お釣りを多くもらいすぎた場合、もらいすぎた分は返還する義務がありますよ、という当たり前の考え。
不法利得の成立要件は4つで、これらをすべて満たしたとき、不当利得が成立する。
その4つとは、1)他人の財産または労務によって利益を受けた(受益)、2)そのために他人に損失を与えた、3)「受益」と「損失」に因果関係がある。4)法律上の原因がないこと、となっている。
不当利得についての善意の受益者は、「その利益の現存する限度(現存利益)」で、利得の返還義務を負う。お釣りを多くもらったことを知らなかった場合、その多くもらった分は全額返還する義務があるが、善意である場合には、全額でなくともよい、ということ。
一方で、悪意の受益者の場合、もらいすぎた分の全額と利息を足して返還しなければならない。さらに損失者に損害が生じた場合にはその損害を賠償する義務を負う。
悪いことは出来ないよね、ということです。

診断士試験における経営法務は物権については細かく問われることはないです。だから基本的な内容さえ押さえておけばよいということになっています。
土地や建物などは不動産、それ以外は動産という。第三者への対抗要件として、不動産は「登記」、動産は「引渡し」。物権は対抗要件を備えない限り第三者に対して主張できない(対抗要件主義)。
物権には、物の支配の根拠となる権利である本権としての物権と、事実上の物の支配を独立に保護した占有権とがある。
占有権とは、自己のためにする意思をもって物を所持すること、であり、占有つまり事実上の支配をしているものに対して一定の権利を認めるというもの。
本権としての物権には、物を全面的に支配しうる物権である所有権と、限られた範囲内でしか使用できない制限物権とがある。
所有権とは、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益および処分をすることが出来る権利をいう。
制限物権はさらに「用益物権」と「担保物権」とに分けられるが、用益物権は診断士試験には出ない。だから省略する。
で、担保物権について。担保物権とは、一定の物を債券の担保に供する(差し出す)ことを目的とする物権のこと。
担保物権には、当事者の意思には関係なく、法律上当然に発生する法定担保物権と、当事者間の設定契約によって生じる約定担保物権とに分類される。
法定担保物権
・当事者の意思は関係ない
・法律上、当然に発生
1)留置権
・他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することが出来る権利

2)先取特権
・法律の定める一定の権利を有する者(先取特権者)が、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることが出来る権利のこと
約定担保物権
1)質権
・債権者(質権者)が、その債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を占有し、かつその物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることが出来る権利
2)抵当権
・債権者(抵当権者)が、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることが出来る権利

ここまで民法の債権と物権をみてきた。

次回は相続について。