自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第50話 経営法務⑤ 知っているとオモシロい会社の機関

会社法の続きで、株式会社の機関についてレビューしております。前回の株主総会の続きで今回は「取締役」に焦点を当てます。

2.取締役
 取締役とは、定款の別段の定めがある場合を除き、株式会社の業務執行を行う機関であると、会社法は定めている。取締役はすべての株式会社で設置が義務付けられている絶対的必要機関。員数は原則として1人以上いればよいことになっている。

 ●取締役 → 必ず設置

 取締役は株式会社とは雇用関係ではなく、委任関係となっている。取締役は株主総会の普通決議により選任および解任される。また原則として取締役を株主に限定することは認められていない。

 ●取締役の選任・解任 → 株主総会普通決議

 取締役はいわゆる“役員”と呼ばれ、その任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまでとなっている。ありていに言えば、「2年」でよい。ただし、定款または株主総会の決議により任期を短縮することが出来る。

 ●取締役の任期 → 2年

 取締役は、株式会社のために忠実にその職務を遂行しなければならないとしている(忠実義務)。また競業避止義務、利益相反取引規制も義務付けられる。さらには、取締役は、その任務を怠って株式会社に損害を与えた場合、株式会社に損害賠償責任を負うとされている(任務懈怠責任)。この任務懈怠責任は原則として過失責任。ただし、利益相反の直接取引をした場合は無過失責任となる。

 取締役で構成される合議体を取締役会という。取締役会の設置は任意となっており、取締役会を設置した会社を「取締役会設置会社」とよぶ。取締役会は3人以上の取締役によって構成され、代表取締役の選任をはじめ、重要な業務の意思決定を行う。

 ●取締役会の設置 → 原則任意。3人以上の取締役で構成

3.監査役
 取締役や会計参与の職務執行の監査(業務監査)および計算書類等の監査(会計監査)を行う機関。設置は原則として任意であり、監査役を置く会社を監査役設置会社とよぶ。

 監査役 → 業務監査と会計監査。設置は原則任意

 監査の範囲を会計に関するものに限定された監査役を会計監査限定監査役とか小監査役とよぶ(後述)。
 監査役も“役員”であるから取締役同様に、監査役の選任・解任に関しては株主総会の決議が必要。ただし、選任は普通決議。解任は特別決議が必要。会社との関係は委任関係、欠格事由も取締役と同様。

 監査役の選任 → 株主総会普通決議
 ●監査役の解任 → 株主総会特別決議

 監査役の任期は「4年」であり、取締役とは異なり、監査役の任期を短縮することはできない

 監査役の任期 → 4年(短縮不可)

 監査役会は3人以上の監査役(ただし、半数以上は社外監査役)によって構成される。監査役会の設置は原則任意であり、監査役会を置く会社を監査役会設置会社という。

 監査役会 → 3人以上の監査役。半数以上は社外監査役。1人以上の常勤者必要

4.委員会

 平成26年の会社法改正前までは、委員会といえば、指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3つの委員会を指した。会社法改正後は、従来の委員会設置会社を「指名委員会等設置会社」新設された機構を「監査等委員会設置会社と呼ばれるようになった。すなわち委員会とは、
  ①指名委員会
  ②監査委員会
  ③報酬委員会
  ④監査等委員会
の4つのことをいうようになった。委員会の設置は原則として任意であり、監査等委員会以外の委員会を設置する場合は必ず3つの委員会を設置しなければならない。
 委員会設置会社の詳細は後述する。

5.会計監査人
 主として大規模な株式会社において計算書類の監査などを行う機関。会計監査人の設置は原則任意会計監査人を設置する会社を会計監査人設置会社という。なお、会計監査人は株式会社の役員ではないものの、株式会社との関係、選任・解任の要件は取締役と同様。

 ●会計監査人 → 設置は任意。委任関係。選任・解任は株主総会普通決議

 会計監査人の任期は「1年」とされている。定時株主総会において特段の決議がなされなかった場合には再任されたものとみなされる。取締役や監査役とは異なり、任期の伸長や短縮は認められていない。

 ●会計監査人の任期 → 1年

会計監査人は、公認会計士または監査法人に限定される。これら以外は会計監査人になることは出来ない。

 ●会計監査人 → 公認会計士または監査法人のみ

 また会計監査人は、計算書類を監査するが、取締役に対して会計に関する報告を求めることが出来る。会計帳簿等の閲覧・謄写を求めることも出来る。計算書類について監査役監査役会あるいは監査委員会)と意見が異なる場合、会計監査人は定時株主総会に出席して意見を述べることが出来る

 ●会計監査人の株主総会出席 → 計算書類で監査役と意見が異なる場合は出席OK

6.会計参与
 中小規模の株式会社が財務の健全性を確保することが出来るように、会計のプロである公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人に資格を限定した機関。会計参与の設置は任意であり、会計参与を設置した会社を会計参与設置会社とよぶ。

 ●会計参与 → 公認会計士(もしくは監査法人)または税理士(もしくは税理士法人)のみ

 会計参与は会社の“役員”であり、任期は「2年」。株式会社との関係や選任・解任は取締役と同様。

 ●会計参与 → 任期「2年」。委任関係。選任・解任は株主総会普通決議

会計参与の任期は2年と決められているが、定款または株主総会普通決議によって任期を短縮することが出来る
 会計参与は、取締役と共同で、計算書類の作成を行う。また取締役等に対して会計に関する報告を求めることが出来、会計帳簿の閲覧・謄写を求めることも出来る。計算書類の作成に関して、取締役と意見が異なる場合には株主総会に出席して意見を述べることが出来る

 ●会計参与の職務 → 取締役と共同で計算書類を作成

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ここまで具体的に株式会社の機関を概観した。
次回は機関設計についてみていくことにする。