自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第73話 運営管理24 ISMに入ります

店舗管理のうち、マーチャンダイジングに関する内容は今回で終わりです。今回は価格設定とか販売促進について触れますが、小売業の価格戦略を知ってしまうと、実際にスーパー等で買い物をした場合に価格設定の意味を考えてしまうようになります。無意識にそういう目で見てしまうのだけれど、診断士試験ではそういうものの見方をしながら知識の定着を図ることも大切かなぁなんて思う次第でございます。

小売業における価格はいわゆる“末端価格”ですから、高すぎれば顧客は逃げるし、安すぎれば儲けは減ります。そのあたりの駆け引きが重要なポイントになるのですが、小売店側にすれば価格政策は経営レベルの意思決定に他なりません。企業が価格競争に対してどのような姿勢で臨むのかを価格競争における意思決定といいます。

非価格競争政策
 価格競争は原則として行わない
競争的価格政策
 価格を主たる手段にはしないが、価格競争には価格で対応するという政策
掠奪的価格政策
 ディスカウンターとして、価格を最大の競争手段にするという政策

大枠でこのような価格政策を考えます。戦略的には非価格競争政策と採っていても、戦術的には一定期間安売りしてみたり、ポイントを付与したり、おまけしてみたりといったことを行うのは通常。具体的な価格政策の組み合わせで価格設定をしていると見るべきであろう。

ロスリーダー政策
 特売用の目玉商品を選び、それらの低価格をアピールし来店客数および売上高の増大を狙う政策。目玉商品以外の商品を購入させ、一定の利益率を確保する(粗利ミックス)。結果的に売上高が増えていない場合にはロスリーダー政策は失敗だったということになる
EDLP政策(Every Day Low Price)
 全ての商品を、毎日いつでも同業他社よりも低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現するための仕組み。毎日すべての商品の価格が安いこと、安さの理由を顧客にアピールし、他店へ行く動機をなくし時点での購入を増大させることを狙う

プライスライン政策
 それぞれの品目をいくつかの「よく売れる値ごろ」に段階別に価格を整理し決定する価格政策。買回品に適している。5,000円、7,000円、9,000円など金額の間隔を同じにすると効果的。いくつかあるプライスラインのうち、最も売上・販売数量の多いプライスラインをプライスポイントといい、プライスラインの上限と下限の幅のことをプライスゾーン(価格帯)という
価格比較表示政策
 競合他社の販売価格と比較した自店の安さをアピールし、競争優位に立とうとする価格政策。家電量販店で見られる
オフプライス政策
 積極的・意図的に価格を下げ、販売数量増による売上増を図る場合の値下げ政策。その昔のマクドナルドで見られた価格政策

次に価格の種類を確認する。

ディスカウント
 単なる割引ではなく、精算の仕組みやオペレーションコストの低減などの措置を講じ、常に割引販売ができる状態を作り出すこと
プロパー価格
 本来の値入率で設定した価格
店インプロ価格
 インストアプロモーション価格のこと。チラシに掲載せずに、店内で販売する特売商品の価格のこと
建値制
 メーカーがメーカー希望小売価格を設定し、卸売業や小売業への売り渡し価格を設定・設計士、販売価格を設定すること
メーカー希望小売価格
 メーカーが設定した、小売業に対して小売価格の目安を示した参考価格
再販売価格維持制度
 メーカーが、商品の販売価格を、以後の流通段階において守らせるように統制する制度。現在では新聞や書籍等が該当

次のテーマは販売促進(販促)。いよいよ店舗管理のメインを迎えます。
販売促進の活動をインストアマーチャンダイジング(ISM)という。

ISMとは「マーチャンダイジング部門において決定されたマーチャンダイジング計画と戦略を、店頭において実現しようとする活動であって、具体的には、計画された商品構成とそれに基づいて設定された商品を、店頭に陳列・演出することによって消費者に提示し、効率的で効果的な方法により、その販売を促進しようとする諸活動である」と定義している。

・・・長い。

ISMは、結果として資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動を意味しており、小売店頭における価値工学(VE)といえる。
ISMのテーマは「客単価の増加」。客単価の増加は「商品単価の増加」×「買上点数の増加」であるから、これを目的とした店舗レイアウトや陳列棚の管理、フェイシング管理、POPの設置などの技術が導入されることになる。

 売上高=客単価×来店客数
  ※客単価=商品単価×買上点数  来店客数=顧客数×来店回数

上記分解式より、ISMの目的は客単価の増大。客単価を増やすために、すなわち商品単価を上げ、買上点数を多くするための活動がISMだということになる。
なお、来店客数の増加は広告などの店外活動が必要なため、ISMの対象にはなっていない

そもそもISMの背景には、最初から買い物を決めて来店する人が約1割なのに対して、店内で購買決定する非計画購買が約9割であるという点にある。非計画購買者により多くの購買を促すための売場生産性向上策がISMなのだ。それにISMは比較的低コストで実施できる。

次回はISMの体系から。具体的な手法まで進めることにする。

続く。