自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第74話 経営法務⑰ 組織再編終わります

もう17回ですかぁ。いったい何回まで続くのだろう。こんな調子じゃ春が来ちゃうかもしれないな。やれやれだ。
今回は簡易組織再編と略式組織再編についてふれます。

1.簡易組織再編

 存続会社などが当該組織再編の退化として交付する株式などの財産価額が当該存続会社等の純資産額の5分の1以下などの要件を満たした場合、株主総会特別決議による承認を不要とする制度

はて? 何のことだ?

例えば、事業譲渡はこうだ。
A社にはP事業とQ事業がある。Q事業をB社に全部譲渡したい。そうするとA社はその対価としてB社から金銭をゲットできる。B社がA社に支払う金銭がB社の純資産額の5分の1以下であるとき、譲受会社であるB社は株主総会の特別決議による承認が不要、ということだ。なお、A社は全部譲渡にあたり株総特決が必要。譲受会社であるB社の株総特決が不要、ということだ。
そもそも、一部譲渡はそれが重要だろうと重要でなかろうと譲受会社には株総特決により承認は不要となっている。

 ●全部譲渡 → 譲受会社が支払う対価が譲受会社の純資産額の5分の1以下であるとき、譲受会社の株総特決は不要

それなら合併はどうか。
合併は吸収合併と新設合併がある。新設合併は存続会社は消滅するので該当しない。だから吸収合併で考える。

 ●合併の簡易再編 → 吸収合併のみ該当

例えばこうだ。
C社とD社がある。C社がD社に吸収されるケースを考える。
この場合、C社が消滅会社、D社が存続会社となるが、D社は吸収合併に際し、C社株主にD社株を交付する。このとき、交付するD社株式がD社の純資産額の5分の1以下であるとき、D社において株主総会特別決議による承認は不要となる。

 ●吸収合併 → 対価の株式が純資産額の5分の1以下ナラ株総特決不要

次に株式交換、株式移転について考える。
株式移転は簡易再編に該当しないので株式交換を検討する。例えばこうだ。
H社とJ社がある。J社はH社を子会社にしたいと考えている。J社はH社株主に「ワシらJ社株のほうが価値がありまっせ。交換してあげるからH社株を渡しなよ」とささやく。するとH社株主は「J社のほうが儲かりそうですな。交換しちゃお」となる(笑)
このとき、J社がH社株主に交付するJ社株式がJ社の純資産額の5分の1以下である場合、J社において株主総会特別決議による承認が不要になるということだ。つまり完全親会社がラクできるわけ。

 株式交換 → 交換で渡す完全親会社の株式が純資産額の5分の1以下なら株総特決不要

最後に会社分割をみてみよう。
まずは吸収分割。例えばこうだ。
甲社にはP事業とQ事業がある。Q事業を乙社に分割して切り離したい。甲社はQ事業を乙社に承継させる代わりに乙社の株式をゲットする。このとき、乙社が対価として渡す乙社株式が乙社の純資産額の5分の1以下なら乙社において株総特決が不要となる。

 ●吸収分割 → 対価として渡す株式が、純資産額の5分の1以下なら株総特決不要

さらに、Q事業甲社の総資産の5分の1以下の価額であれば、Q事業を分割し、乙社に承継させることを承認してもらう株総特決も不要になる。

 ●吸収分割 → 分割する事業が、総資産額の5分の1以下なら株総特決は不要

次に新設分割をみてみよう。例えばこうだ。
甲社にはP事業とQ事業とがある。今、Q事業を切り離して別会社でQ事業をやらせたい。
このQ事業が、甲社の総資産額の5分の1以下であるとき、甲社において株主総会特別決議による承認は不要となる。

 ●新設分割 → 分割する事業が、当該企業の総資産額の5分の1以下であるとき株総特決不要

スピテキはさくっと書いてあるのだけれど、なかなかどうして細かいです。

2.略式組織再編

 支配関係にある会社間での組織再編について、被支配会社での承認株主総会を不要とする制度

 この制度は前提として支配関係(親会社、子会社みたいに考えればいいかな)にある場合のみ適用されるものだ。なお、支配関係とは、被支配会社の総株主の議決権の10分の9以上を他の会社が有している会社間をいう。支配している会社を特別支配会社といい、被支配会社での株主総会決議による承認は不要となる。

 事業譲渡
  全部譲渡、重要な一部 → 被支配会社が譲渡会社なら株総特決不要
  重要でない一部 → 被支配会社が譲受会社なら株総特決不要
 ●吸収合併 → 被支配会社が存続会社でも消滅会社でも株総特決不要
 ●株式交換 → 被支配会社が完全親会社でも完全子会社でも株総特決不要
 ●吸収分割 → 被支配会社が承継会社でも分割会社でも株総特決不要

支配している、支配していない、という関係だから、被支配会社つまり支配されているほうの承認決議はいらないよ、ということなんだろう。

3.合併等の対価の柔軟化

 会社が組織再編を行う場合、従来は消滅会社に対して、対価として交付する財産は存続会社の株式に限られていた。しかし、会社法が改正されたことで対価を金銭等にしてもよいという組織再編行為が登場した。ふーん。
 対価が株式でなくてもよいとされる組織再編行為は、吸収合併・株式交換・吸収分割の3つ
吸収合併は、消滅会社の株式を渡す代わりに対価として存続会社の株式をもらうが、その対価を金銭等にできる。
株式交換は、子会社になる相手の株式をもらうけれども、その対価を親会社の株式にするのではなく、金銭等にできる。
吸収分割は、対価として分割会社の株式をもらう代わりに金銭等をもらう。

 ●吸収合併、株式交換、吸収分割 → 対価は株式でなくてもよく、金銭等でもよい

 
ここまでで組織再編は終了です。
もう少しで会社法関連が終わります。長いなぁ。

続く。