自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第78話 経営法務⑲ 株式上場

今回から資本市場に関する知識をレビューしていきます。「アベノミクス」効果だか分かりませんが、株式市場がそれなりに活況ですよね。そうしたときには新聞紙上でも話題に上がることが多いですから、そういうところを狙った出題を想定するならこの資本市場関連の知識も侮れないわけですよね。特に法改正論点を絡めての出題が考えられるので、そうすると、枝問のある設問になったりして配点が重くなるわけです。苦手論点を作ってしまうとその設問だけ全滅といったことも考えられます。そういう事態にならないように整理しておきたいところです。

今回の論点は大きく分けて三つに分類できます。
①株式上場(株式公開)
②株式市場
金融商品取引法
の三つです。

では始めましょう。

まずは株式上場ですが、これは一般投資家が自由に売買できるように株式市場に自社の株式を公開することで、株式上場のことをIPOまたはゴーイングパブリックといい、株式上場した会社をパブリックカンパニーといいます。
株式上場にはいろんな手順や手続がありますが、その中に公募売り出しの価格(公開価格)を決めるという手順があります。上場を申請した会社は公募・売り出し価格を次の二つの方法のいずれかで決定します。

 ブックビルディング方式 → 投資家の需要動向によって決定する
 ●入札方式 → 採用されることはほとんどない

株式上場のメリットは、上場することで直接金融の道が開かれ、資金調達能力が増大することです。また社会的な認知度が高まることで、金融機関や取引先に対する信用力もアップしますね。優秀な人材の確保もしやすくなります。
一方で投資家に対するディスクロージャーが要求され、社会的責任や義務が生じるとともに、買収のリスクが高まるというデメリットもあります。

次に証券市場を概観してみましょう。
金融商品取引所市場に上場するためには、それぞれの市場ごとに定められた上場基準を満たす必要があります。新聞等で目にするのは市場第一部や第二部でしょうけれども、そのほかにはマザーズと呼ばれるものやジャスダックと呼ばれる市場もあります。また、2008年に創設された「TOKYO PRO Market」というプロ向けの市場もあります。

いろんな市場がありますが、それぞれの市場に上場するためには審査があります。
上場を申請するにあたって最低限クリアしなければならない要件の形式基準はもちろんのこと、上場会社としてふさわしいかどうか、取引所が適否を判断する基準の実質基準というものもあります。

中小企業診断士は中小企業を対象としたコンサルタントですから、一部上場企業などを相手にすることは稀でしょう。
ですから、ここでは二部、マザーズ、ジャスダックについて詳細を見ることにしましょう。
なお、いきなり一部市場に上場することは滅多にありません。時のJRやNTTや日本郵政などがいきなり一部上場したことはありましたけどね。

1.市場第二部
 以下は二部市場に上場を申請するための形式基準です。一部の形式基準はもっとすごいってことですよね?
 ・上場見込時の純資産額 → 10億位円以上(連結純資産)かつ単体純資産額が負ではないこと
 ・利益額 → 最近2年間の利益(連結経常利益)の額の総額が5億円以上(※)
 ・時価総額 → 20億円以上
 ・株主数 → 800人以上
 ・事業継続年数 → 3年以上
 ※最近1年間における売上高が100億円以上である場合かつ時価総額が500億円以上となる場合には利益額は問わない
2.マザーズ
 マザーズ市場は近い将来の市場第一部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場です。規模や業種などによる制限を設けていません。
 ・上場見込時の純資産の額 → ナシ
 ・利益の額 → ナシ
 ・時価総額 → 10億円以上
 ・株主数 → 300人以上
 ・事業継続年数 → 1年以上
3.ジャスダック
 信頼性、革新性、地域・国際性という3つのコンセプトを掲げる市場です。ジャスダックにはさらに二つの市場が存在します。
 (A)スタンダード
  一定の事業規模と実績を有する成長企業を対象にした市場です。
  ・上場見込時の純資産額 → 2億円以上
  ・利益の額 → 最近1年間の利益(連結経常利益)の額が1億円以上(※)
  ・時価総額 → 5億円以上
  ・株主数 → 300人以上
  ・事業継続年数 → ナシ
  ※時価総額が50億円以上の場合は利益の額は問わない
 (B)グロース
  ・上場見込時の純資産額 → 正
  ・利益の額 → ナシ
  ・時価総額 → 5億円以上
  ・株主数 → 300人以上
  ・事業継続年数 → ナシ

上場するには審査基準があり、上場した暁には資金調達が容易になる反面、ディスクロージャーや内部統制などめんどくさい仕事も増えるということだ。また株主資本コストなどいろんなコストが発生し、株主対応や利益の追求などプレッシャーも多く出てくるんだろうなと思う。

続く。