自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第82話 経営法務21 父さんの会社、倒産したよ!

ったく、くだらないけど(笑)

一般に企業が不渡り手形を出して銀行取引停止処分を受けたときなどに「企業が倒産した」という。企業は債務超過の状態に陥ったときに、その企業を清算するのか再建するのかによって採用する倒産処理の方法も決まる。清算する場合は「私的整理」「破産」「特別清算」といった方法があり、再建する場合にも「私的整理」「民事再生」「会社更生」といった方法がある。順番に整理してみよう。

1.私的整理(任意整理)
 企業を清算する場合の方法で、法的手続きによらないものが私的整理。法的手続きによらないということは、債務者と債権者の話し合いで企業の債務を整理することになる。

2.破産
 破産とは、債務者が経済的に破綻し債務が返済できなくなった場合に、その財産や相続財産を清算する手続。債権者または債務者の申し立てを受けて裁判所が破産手続開始の決定をする。決定と同時に破産管財人によって財産の管理・処分が行われ、債権者に配当される。債務者自ら破産の申し立てをすることを自己破産という。破産は個人でも法人でも対象となる。

 ●破産 → 裁判所の決定。破産管財人による財産の管理・処分

 破産の原因は3つあり、支払不能・支払停止・債務超過。支払不能は債務者が支払能力を欠いているために弁済期にある債務を弁済できない状態にあること。支払停止は債務者が債務の弁済を行うことが出来ない状態に陥ったことを自ら表示する行為。「手形の不渡り」や「夜逃げ」が該当する。債務超過は債務者がその債務について、その財産をもって完済することが出来ない状態をさす。

 ●破産原因 → 支払不能・支払停止・債務超過

 破産手続きの申し立ては債権者でも債務者でも可能だし、個人も法人も可能。申し立てを行うと裁判所は破産手続きの開始を決定すると同時に破産管財人を選任する。その後、1回目の債権者集会が開かれる。
 破産においては、抵当権者などの担保権者は別除権者と呼ばれ、原則として優先的に弁済を受けられる。しかし、別除権の行使によって、かえって手続の遂行に支障をきたすばあには、破産管財人は、担保権が設定されている財産を売却して得た金銭を裁判所に納付することなどにより、当該財産の担保権を消滅させることが出来るという担保権消滅制度が規定されている。

 ●破産 → 別除権者は優先して弁済を受けられる。担保権消滅制度もある

3.特別清算
 清算中の株式会社に清算を進めていくのに著しい支障をきたすような事情があるか、債務超過の疑いがあるときに行われる手続。債権者や清算人の申し立てを受けて裁判所が決定する。なお、特別清算がうまくいかない場合、破産へ移行する。
 また私的整理との違いは、特別清算は“株式会社”が対象になっていること。私的整理は個人でも法人でもOKだから株式会社もOK。特別清算は株式会社のみが使える手段。

 特別清算 → 株式会社のみOK

これまで見てきたのは「清算」であったが、法的手続きには再建型の倒産手続がある。

4.民事再生
 経済的に窮地にある債務者の事業または経済的生活の再生を図ることを目的にしている。債務者に破産手続き開始の原因となるような事実が生じるおそれがあるとき、あるいは事業の継続に著しい支障をきたすことなく債務を弁済出来ない場合(弁済しちゃうと途端に事業が継続できなくなる)に、債務者もしくは債権者が裁判所にその開始を申し立てる。なお、債務者は個人・法人を問わない。

 民事再生 → 個人・法人でもOK

 再生手続が開始されると、債務者が再生計画案を立てて債権者集会に諮る。これが可決され、裁判所が認可すると再生計画に沿って弁済がなされる。民事再生では、再生手続開始後も原則として債務者自らが企業再建を行うことが出来る

 民事再生 → 企業自らが再建できる
       (※裁判所が認めた場合、管財人が選ばれることもある)

 少し細かくみていく。
 先にも述べたが、倒産しそうなおそれがあったり、弁済すると事業の継続が不可能な場合に申し立てることが出来る。また、この申し立ては基本的には債務者が申し立てることが出来るが、倒産しそうなおそれが生じた場合には債権者でも申し立ては可能だ。

 再生計画案は議決権者の過半数の同意かつ議決権総額の2分の1以上の同意を得たときに可決される。たとえば、債権者集会に出席した債権者が100名いたとする。その債権者が有する債権の総額が100億円であった場合、再生計画案が可決されるには、51名以上の債権者の同意かつ債権総額50億円以上が条件となる。

 ●再生計画案の可決 → 債権者の過半数の同意かつ債権総額の2分の1以上

 また、担保権の取り扱いについて、破産同様に民事再生についても別除権となる。さらに破産と同様に担保権消滅制度もある

 民事再生における担保権 → 別除権あり。ただし、担保権消滅制度もある

5.会社更生
 事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することが出来ない株式会社や、破産手続開始の原因たる事実の生じるおそれがある株式会社について、債権者や株主などが利害を調整しながら、事業の維持更生を図るもの。会社更生は、申し立てを受けて開始決定がなされると更生管財人の管理の下で手続が進められる。現経営陣は継続して再建を担当できるが、経営責任があれば退陣する必要がある。なお、会社更生は持分会社は使うことが出来ない

 ●会社更生 → 株式会社のみ。更生管財人が管理

 申立権者は当該株式会社のほかに、破産のおそれが生じる可能性があった場合は当該株式会社の債権者も申し立てることができる。申立権者になれる債権者は、当該株式会社の資本金の10分の1以上に当たる再建を有する債権者または当該株式会社の総株主の議決権の10分の1を有する株主が該当する。

 民事再生では債権者集会で再生計画案を決議するが、会社更生では、債権者に加えて担保権者や株主も含めた関係人集会で更生計画案を決議する。会社更生は債権者のみならず、担保権者や株主をも拘束する強力な法的手続きとなっている。会社更生は租税債権も拘束してしまうほど強力な手続なのだ。

 ●会社更生案 → 債権者、担保権者、株主を含む関係人集会で決議

 また更生計画案の可決の要件は民事再生の再生計画案の可決要件とは異なり、関係人集会の頭数に関わらず、議決権総額の2分の1超の議決権を有する者の同意が必要となる。たとえば、債権者が100名、債権総額が100億円出会った場合、更生計画案が可決されるためには、債権者総額が51億円以上の債権者の同意が必要となる。何人反対しようと、債権総額が2分の1を超えればよい。

 ●更生計画案の可決要件 → 員数に関わらず債権総額の2分の1
(再生計画案の可決要件→議決権者の過半数の同意かつ債権総額の2分の1以上

 担保物権の取り扱いについても、民事再生のときとで若干異なる。
 会社更生においては、抵当権者などの担保権者は更生担保権者と呼ばれ、更生計画に拘束され、更生計画に基づいて弁済をうける。担保権者が優先して弁済を受けられることはない。なお、会社更生にも担保権消滅制度が規定されている。

 ●会社更生 → 担保権者は優先して弁済を受けられない。担保権消滅制度もある

民事再生と会社更生の違いは重要なかつ頻出論点になりそうだからしっかりと押さえておく必要がありそうだ。

続く。