自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第86話 経営法務23 特許権

今回から主に産業財産権についてふれます。
産業上・文化的創作物と営業上の標識を利用する権利の総称を知的財産権といいます。学習してみると結構楽しかった覚えもありますが、いろいろと細かい論点も多く、似たような考え方も多いので混乱したことのほうが印象に残っていますね。
とはいえ、なかなか興味深い内容でもあり、楽しんで学習できたと思います。その知的財産権についてみていきましょう。

 知的財産権とは、特許権実用新案権、育成者権、意匠権著作権商標権その他の知的財産に関して法令で定められた権利または法律上保護される利益に係る権利をいう。なお、特許権実用新案権意匠権商標権の4つを産業財産権ともいう。

 ここからは産業財産権を中心に、特許権実用新案権意匠権商標権の4つについて詳細にみていくことにする。

1.特許権
 特許権の根拠法は特許法だ。特許法の目的は、「発明の保護および利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発展に寄与すること」である。特許法では、発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義している。また、発明を物の発明と方法の発明に分けており、物の生産する方法の発明でも物の生産を伴わない発明でもOKとされている。

 ●特許法における発明 → 物の発明、物の生産する方法の発明、物の生産を伴わない発明

 特許を受ける権利は発明者に発生し、国家(特許庁)に対して特許権の付与を請求することができる。特許を受ける権利は、発明と同時に発生し、自然人である発明者にのみ発生する。だから法人に特許を受ける権利は発生することはない
 特許を受ける権利は財産権であるため、他人に譲渡することが出来る。それゆえ、法人は特許を受ける権利を承継することで特許出願をすることが出来る。つまり、特許出願は自然人・法人に認められているが、法人格のない団体は特許出願することが出来ない

 ●特許を受ける権利 → 発明と同時に発生
 ●特許出願 → 自然人・法人OK。法人格のない団体等は×

 次に特許要件について。
 特許法の目的は産業の発達にあるので、産業上利用できることが必要。また新規性が求められ、特許出願前に公然に知られたものは特許が認められない。また先願主義が採用され、同一の発明について複数の出願があった場合には先に出願したものに特許権を付与することとしている。なお、同一発明について同一の日に2以上の特許出願があった場合は、時間の先後に関係なく特許出願人の協議により定めた出願人一命だけが特許を受けることが出来るとされている。協議が不成立の場合には、誰も特許を受けることが出来ない。

 ●先願主義 → 同一発明同一日出願の場合、協議。協議不成立なら特許を受けることが出来ない
 ●特許要件 → 産業上利用できること、新規性があること、進歩性があること、先願の発明、反社会的な発明でないこと

 次に特許権の取得手続についてみていこう。
 まずは出願する。特許を受ける権利がある者(発明者またはその承継人)が特許庁長官宛に出願する。出願にあたり用意する書類は、願書・明細書・特許請求の範囲・要約書・必要な図面(任意)。

 ●出願 → 特許を受ける権利がある者が行う
 ●出願書類 → 願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、図面(任意)

 特許権は、特許出願前に国内外で公然と知られた発明は、新規性を欠くものとして特許要件を満たさないことになる。そこで特許法では、新規性喪失の例外として次のように定めている。公表日から6月以内に例外規定の適用を受けたい旨の書面などを特許出願と同時に提出し、かつ出願日から30日以内に公表などの事実を証明する書面を提出すれば、新規性喪失の例外として特許を受けられることがある。2012年の改正特許法により、この要件が緩和されている。本人の行為による公知・公用・刊行物への記載などは新規性を欠くものとして認められなかったのが、新規性喪失の例外として認められることとなった。また本人の意に反する公知・公用・刊行物への記載なども新規性喪失の例外とされた。なお、本人の意に反する場合は事実証明の書面は不要とされた。

 ●新規性喪失の例外 → 公表後6月以内に特許出願と同時に例外規定適用出願
            30日以内に証明書面の提出(本人の意に反する場合不要)

 出願された書類は、出願形式などの形式的審査(方式審査)を受ける。所定の要件に合致しない場合には補正が命じられたり、却下されたりすることもある。特許出願は出願しただけでは特許が認められない。というのも、方式審査を終えただけでは出願内容の審査はされないのだ。出願しただけでは内容の審査が行われることはなく、審査請求があってはじめて審査が行われる(審査請求制度。出願審査請求は、特許出願人に限らず誰でも請求できる。なお、出願日から3年以内に審査請求がない場合には、出願は取り下げたものとみなされる

 ●特許 → 審査請求があってはじめて審査。請求は特許出願人以外もOK
 ●審査請求 → 出願日から3年以内に請求ない場合、取り下げたものとみなされる

 出願日から1年6月経過すると、特許出願を特許公報に計算することにより出願公開される。出願公開とは、第三者に特許出願した旨を知らしめることであり、出願人の任意で1年6月経過する前でも出願公開請求が可能になっている。

 ●出願公開 → 1年6月経過すると強制的に出願公開
        出願人に限り、1年6月経過前でも出願公開請求が可能

つまり、この出願公開制度は第三者に対する対抗手段となる。出願公開後に第三者が模倣した場合には書面による警告が可能だし、第三者に対する補償金請求権を行使できる。ただし、実際に補償金を請求できるのは特許権設定登録後となる。
 特許査定謄本が出願に送達された日から原則として30日以内に所定の特許料を納付すると設定登録され、特許公報に掲載される。

 ●設定登録 → 査定謄本送達から30日以内に特許料納付

 特許要件の規定違反や負特許事由に該当する場合、その特許を無効とする審判を特許庁長官に請求できる権利を特許無効審判という。これは利害関係人だけでなく、原則、誰でもいつでも請求可能であった(注:過去形ですよ

 ●特許無効審判 → いつでも、誰でも請求できた(2014年度まで)

 また、2015年の特許法改正で特許異議申し立て制度が創設された。創設というか復活が正しい言い方なんだろうけれどね。

 ●特許異議申立制度 → 公報掲載の日から6月以内ナラ誰でも請求可

本制度の復活により、特許無効審判は「いつでも誰でも」から「利害関係人ならいつでも」に変更された。

 ●特許無効審判の改正論点 → 「いつでも誰でも」が「利害関係人ならいつでも」に変更(2015年4月~)

こういうふうに改正されるとそこが論点になるからチェックすべきだよね。
ここまで特許権の出願から登録設定、無効審判、異議申立までみてきた。実に、特許については多くの論点があるので続きは次回にまわそうと思います。産業財産権は特許だけでなく、他あと3つもあるから、それらとの比較で出題されることも多い。つまり、産業財産権の4つを横並びで見た場合に異なるもの(仲間はずれみたいなやつ)が“ひっかけ系”論点になるんだろうと予測できるということだ。

次回は特許権の効力から始めてみる。

続く。