自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第92話 経営法務26 意匠

今回は意匠権

3.意匠権
 意匠法の目的は、「意匠の保護および利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与すること」とある。
意匠法では、意匠とは、「物品(物品の部分含む)の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と定義している。目で見て美しいもの、物品と結びついていることが該当するというわけだ。

 ●意匠 → 物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合。物品と結びついていること

 特許は「発明」、実用新案は「考案」、意匠は「創作」という。創作を完成させた者を意匠の創作者、創作者に意匠登録を受ける権利が発生する。

 意匠の登録要件について。特許や実用新案とは異なるところがあるので注意が必要だ。
まずは工業上の利用可能性があること。これは反復して量産できることを意味する。だから自然物などはダメだし、美術の分野に属する物もダメだということになる。次に新規性、創作性があること、先願であること。これは特許、実用新案も同じ。不登録事由に該当しないことが要件となっている。

 ●意匠 → 工業上の利用可能性があること

 先に述べた不登録事由だが、公序良俗に反するおそれがあるものや他人の業務に係る物品と混同するおそれがあるもの、物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠については意匠登録されない。JISとかISOとか、そういうやつね。

 次に意匠権の取得手続についてだ。
出願は特許庁長官宛。これは特許も実用新案も同じ。必要な出願書類は、願書、図面(必須)のみ。明細書や請求の範囲を示す書類は不要だ。

 ●意匠の出願 → 願書、図面のみ

なお、特許、実用新案と同じように新規性喪失の例外規定が定められている。
特許、実用新案と同じで、方式審査を経て実体審査が行われる。ここで特許、実用新案、意匠の違いを確認しよう。

 ●特許 → 方式審査・出願公開・審査請求・実体審査・登録
 ●実用新案 → 方式審査・登録
 ●意匠 → 方式審査・実体審査・登録

つまり、特許は実体審査を受けるのに、審査請求が必要であったが、実用新案、意匠は不要だし、実用新案は出願イコール登録であった。もちろん出願公開制度もない。一方で、意匠は登録設定前に公開されることもないし、審査請求の必要もないし、出願されたものすべてが審査されることになる。

 ●意匠 → すべての出願が審査される

こうして意匠権の設定登録となるが、初回の登録料は1年分だけでよい。ちなみに特許、実用新案は3年分。
特許や実用新案と同様に、意匠にも登録無効審判が可能だ。特許は、利害関係人に限り、いつでも可能で、実用新案は、いつでも誰でも可能だったけれど、意匠はというと、

 ●意匠の登録無効審判 → 実用新案と同様に、いつでも誰でもOK

結局、実用新案と同じだったですね。特許は2015年4月から「利害関係人に限り、いつでも」に変更になっています。こうやって法改正があるのは受験生泣かせですよねー。

次は意匠権の効力について。
意匠は物品と結びついていることが要件だから、当然に「方法」や「プログラム」は意匠権は及ばない
逆に、特許や実用新案とは異なり、意匠権は登録意匠に類似する意匠にまで効力が及ぶとされている。つまり、全く同じでなくても似たような意匠もダメよ、ということだ。意匠の類似の判断については需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づくとされる。

 意匠権 → 類似の意匠にまで効力が及ぶ

また意匠権の制限については、特許や実用新案と同様である。
意匠権の存続期間は、設定登録の日から20年。ここは特許や実用新案とは異なるところだから注意したい。

 ●特許 → 出願の日から20年(一定の条件で5年の延長あり)
 ●実用新案 → 出願の日から10年
 ●意匠 → 登録の日から20年

意匠権は財産権でもあるから、他人に譲渡・売却したり、相続等で承継すること可能だ。この場合は相続等で承継の場合を除き、登録が必要。

 意匠権 → 一般承継を除き、移転には登録が必要

また、特許や実用新案と同様に、専用実施権、通常実施権、仮通常実施権がある。ただし、仮専用実施権は設定がない。専用実施権は設定登録が必要だし、通常実施権は設定登録の必要がない当然対抗制度が認められている。質権の設定も特許や実用新案と同様。

 ●意匠の専用実施権 → 設定登録必要
 ●意匠の通常実施権 → 登録不要。当然対抗制度あり

意匠権には特殊な制度がある。
部分意匠制度
 物品の全体から物理的に切り離せない部分に関する意匠について意匠登録を受けることが出来る権利
部分意匠の効力は、その部分意匠と同一・類似の意匠を含む全体意匠に及ぶ。また部分意匠の出願は、全体意匠に係る意匠公報の発行の日の前日まで認められることになっている。

 ●部分意匠制度 → 部分だけでなく全体を保護。出願は公報発行日の前日まで

画面デザイン
 物品の本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要となる操作に使用される画面デザインについて、衣装の構成要素として意匠法の保護対象

組物意匠制度
 同時に使用される2以上の物品であって、経産省令で定められた構成物品に係る意匠で、組物全体として統一感があるものを一意匠として出願し、意匠登録を受けることが出来る権利

たとえば、一組のナイフ・フォーク・スプーンセットだったり、一組のオーディオセットは意匠登録することが出来るということであり、それらを構成する部分的な組物は部分意匠の対象にならず、意匠登録を受けることが出来ない。全体なら登録可能だが、部分的にはダメだということ。

関連意匠制度
 意匠(本意匠)に類似する意匠(関連意匠)について意匠登録することが出来る権利

意匠は類似の物品にまで効力が及ぶため、先願主義により最初に出願された意匠に類似する出願は認められていない。ただし、意匠権者による類似の意匠の出願まで認めないのは不合理なので、同一人に限り関連意匠の登録を認めた制度である。ちなみに関連意匠の関連意匠は登録出来ない。以下、関連意匠のポイントを記す。
・関連意匠の存続期間は、本意匠の設定登録から20年
・本意匠の意匠権が消滅事由により消滅したとしても、本意匠の設定登録から20年以内であれば関連意匠の意匠権は消滅しない
・関連意匠は単独で移転することは出来ない
・関連意匠の移転は、本意匠とセットで行わなければならない
・本意匠の意匠権が消滅してしまった場合には、当然に関連意匠は移転出来ない
関連意匠に係る専用実施権は、同一人に対して本意匠も同時に設定しなければならない
・すでに専用実施権が設定された本意匠についての関連意匠の登録は出来ない
・関連意匠の出願は、本意匠に係る意匠公報発行日の前日までOK

⑤秘密意匠制度
 設定登録日から3年を限度として意匠を秘密にすることを認める制度

自動車のモデルチェンジなどに利用され、本制度を利用することで模倣を防ぐことが期待される。以下、秘密意匠制度のポイントを記す。

・秘密意匠制度を利用する場合には、意匠登録出願と同時に出願する
・登録前に初年分の登録料を支払う
・秘密にする期間は、3年以内であれば任意で設定することが出来る
・3年の範囲内であれば、請求後に延長または短縮の請求が可能
・秘密意匠制度で“秘密”にされるのは図面等
・秘密にすることを請求する期間の長短に関わらず、当意匠権の存続期間は設定登録から20年

以上、意匠権終わり。
次回は商標権を概観します。

続く。