自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第94話 経営法務27 商標権

商標権知的財産権のヤマなんですよねぇ。特許と商標がヤマ。これらが出題されないときがない、みたいな感じ。
ということで、その商標権についてレビューしましょう。

4.商標権
 商標法の目的は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護すること」である。特許は「発明」、実用新案は「考案」、意匠は「創作」であったが、商標についてはそういうフレーズがない。そもそも商標には「創作」という概念がない。商標は特許、実用新案、意匠とは異なり、独特の論点を持つので注意が必要だ。

 ●商標 → 特許・実用新案・意匠とは異なり、かなり独特

 商標とは、文字、図形、記号、立体的形状やこれらの結合、これに色彩を加えた標章(マーク)で、事業者が商品または役務(サービス)について使用するものである。商標の分類として、商品に関するものを商品商標、サービスに関するものを役務商標という。
 商標法は平成26年に改正されて、従来の標章に加えて、新しいタイプの標章も登録が出来るようになった。今回の法改正により、新たに「音」「色彩のみからなる商標」「ホログラム」「動き」が商標登録の対象となったのだ。

 ●商標の改正論点 → 「音」「色彩のみからなる商標」「ホログラム」「動き」が新たに対象となった

 商標権は、商標を使用する者が商標登録を受けることが出来る。商標は創作性とか独創性といった概念がないため、創作性があるからとか独創的だからといって商標登録できるわけではない。
 商標には次の3つの機能がある。
 一つには、「出所表示機能」であり、二つ目には「品質保証機能」。三つ目は「宣伝広告機能」である。自他識別力を有することで、一定の商品・役務は同一の事業者に由来するものであることを消費者や取引者に示す機能が出所表示機能だ。自他識別力があるかないかというのがポイントだね。

 商標法は、商標は登録により商標権が発生するとしている。ただ、権利の発生と使用が必ずしも結びつかないこともあり、商標法では不使用取消審判制度を採りいれている。この不使用取消審判制度とは、継続して3年以上日本国内において使用されていない登録商標の取消の審判を請求することができる制度利害関係人だけでなく、誰でも請求が可能だ。

 ●不使用取消審判 → 商標のみ。3年以上不使用の商標の取消を請求

 商標も、特許・実用新案・意匠と同じように先願主義を採用している。出願が同一日にあった場合には協議によって決めることとしているが、協議が不成立の場合は、特許庁長官が行う公正な方法によるくじで決められる。

 ●商標 → 同一日出願、協議不成立の場合、公正な方法のくじで決定

 なお、当然に、商標も審査、登録を経て商標権が成立する。

 商標の登録要件はちいとややこしい。商標には、一般的登録要件と不登録事由の消極的登録要件の二つがある。一般的登録要件とは、ある事業者の商品・役務を他の事業者の商品・役務と識別する「自他商品・役務識別力」を持つこと、である。つまり、自他識別力があれば登録できるという意味合い。

 ●商標の一般登録要件 → 自他商品・役務識別力をもつこと

 なお、識別力がないものとされ、登録は認められない。たとえば、ごくありふれた時計に付ける商標「時計」はダメ。レストランで提供される料理に「高級料理」といった商標はダメだし、「鈴木」「田中」といったありふれた氏もダメ。「AB」とか「10」といった標章からなる商標もダメ。単なるスローガンや標語(キャッチフレーズ)もダメだし、業務内容そのものの説明も商標として登録することは出来ない。ただし、これらに該当する商標であっても、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品または役務を認識することが出来るものについては、登録を受けることが出来る。これも全国的な知名度で有名になったものでないとならないとされている。

 ●自他識別力がない商標 → 原則、登録不可。
    ただし、全国的な知名度で有名になったもので識別力があれば登録可

 今度は逆に、一般的登録要件を満たしていても、不登録事由に該当すると登録されないものをみていこう。たとえば、国・地方公共団体、国際機関等を表示する表彰と同一・類似の商標は登録できず。公序良俗に反するものもダメ。ビールなのに商標がウィスキーもダメ。他人の登録商標や周知・著名な略称等を含む商標は登録されない。ただし、その他人の承諾を得ているものは登録できる。

 商標の類似について。意匠は類似するものも保護の対象となっていた。商標は、比較される複数の商標が同一・類似の商品・役務に使用されたとき、商品・役務の出所について誤認や混同を生ずるおそれがある状態のとき、商標の類似という認識をする。ちょいとややこしい。カンタンにいうと、見た目が類似する商標、たとえば、「ライオン」と「テイオン」は類似するものとみなされるということ。それと、商品に類似するものの範囲には役務が含まれ、役務に類似するものの範囲には商品が含まれる。商品・役務間で類似しているとダメよ、ということだ。
なお、色彩のみが異なる商標は同一商標とみなされる。

 ●商標の類似 → 商品・役務間で類似してもダメ

今回はここまで。
次回は商標権の取得手続についてみていきます。

続く。