第106話 経営法務34 けっこう国際条約が出るんだよねぇ
知的財産権の最後になります。知的財産権の契約に関する知識について整理しておきましょう。
ライセンス契約でのロイヤルティは、当事者間の契約で事由に決められる。その方法には次のようなものがある。
①ランニングロイヤリティ方式
売上などに比例して実施料を支払う方式。
②ミニマムロイヤリティ方式
一定数量以下しか製造・販売出来ない場合でも最低の金額を支払う方式。基本料みたいなイメージです。
③ランプサムペイメント方式
最初に一括金を支払い、追加金を不要とする方式。
④イニシャルペイメント方式
頭金(イニシャルペイメント)を支払い、追加量に応じてランニングロイヤリティを支払う方式。
次に、トレードシークレットライセンス契約。これは営業秘密を守る契約のこと。製品の製造方法だけでなく、マーケティングやプロモーションの方法、芸術などのノウハウなどもライセンス契約の対象となりうる。
また、トレードシークレットライセンス契約が交わされる際の秘密情報を開示するときに締結する契約書に秘密保持契約書(NDA)がある。
次は商品化権。マーチャンダイジングライツという。アニメのキャラクターなどを商品に利用して販売促進を図り、経済的利益をあげる権利のこと。商品化権は、法律に明文化された権利ではないが、著作権法、商標法、意匠法、不正競争防止法などを根拠にした権利。
ソフトウェアのライセンス契約について。
ソフトウェア製品の販売では、ソフトウェアの所有権がユーザー側に移転したように感じられるが、実質的には売買契約ではなく、利用許諾契約であり、法律上は、所有権も著作権もライセンサー側にそのまま残り続ける。
近年のIT化の進展に伴い、従来よりも情報の重要性が高まっている。その中でも中心となるのはコンピュータプログラム(ソフトウエア)である。法律上、コンピュータプログラムを保護の対象として明文化しているのは以下のとおりである。
まずは特許法。
「物」についてプログラムが含まれることを明文化している。ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に表現されている場合、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思想の創作」として発明に該当するとしている。
次に著作権法。
「プログラムの著作物」を明文で保護対象にしている。なお、「プログラムの著作物」を表現するための手段であるプログラム言語、プロトコル、アルゴリズムは保護対象にならないとされている。
●著作権法 → 「プログラムは著作物」と明記。
※プログラム言語、プロトコル、アルゴリズムは保護対象にならない
不正競争防止法も、「物」についてプログラムが含まれるとしている。したがって、アイコンなどは商品形態模倣行為として保護される。
●不正競争防止法 → アイコンは商品形態模倣行為として保護
最後に知的財産権に関係する国際条約について概観する。
特許権等の知的財産権の効力は、その権利を取得した国の領域内に限られ、他国までは及ばない。ゆえに、外国でも権利を取得したい場合には、その国の規定に従って出願等の手続を行うことになる。しかし、言語の違いなどにより、国際出願は国内に比べて労力がかかることが多い。そこで国際出願を容易にするために、さまざまな国際条約が制定されている。
①パリ条約→1883年成立。産業財産権の国際的保護を推進
②ベルヌ条約→1886年成立。文学的および美術的著作物に関する条約
③万国著作権条約→1952年成立。ベルヌ条約との調整を図る条約
④特許協力条約(PCT)→1970年成立。同一発明の複数国出願の労力の軽減が目的
⑤マドリッド協定議定書→1989年成立。商標について国際登録出願に係る条約
⑥TRIPs協定→1994年成立。知的財産権の貿易に係る協定
なんだかこういうまどろっこしいのが出題されたりするからね。
さて、知的財産権が終了した。
残る項はあと4つほどだ。
続く。