自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第110話 経営法務36 最終回

予定通り進めば、今回が法務の最終回となる。全部で35回かぁ。
かなり細かくやりすぎたかなぁ。
っつうことで今回は消費者契約法からはじめることとする。

読んで字の如しで、消費者契約法は消費者の契約に関する法律だ。これは消費者が契約の取消や無効を主張できる場合等を定めた法律なのだが、あくまでも消費者と事業者との間で締結した契約のすべてに適用となる法律だ。だから事業者と事業者、いわゆる B to B が適用にはならないので注意が必要だ。したがって、フランチャイズ契約は消費者契約法の対象外ということになる。

 消費者契約法は、一定の条件のもとで、「取消」か「無効」に出来る。
契約内容の取り消しについては、消費者契約締結の勧誘に際して、事業者の行為により、消費者が誤認または困惑した場合に取り消すことが出来るとしている。この取消権の行使は、追認をすることが出来るとき(誤認に気づいたとき、困惑から脱したとき)から6ヶ月間(または契約締結のときから5年間)である。

 消費者契約法における取消権 → 誤認・困惑をうけたとき
 ●行使期間 → 追認できるときから6ヶ月または締結から5年間

また消費者が結んだ契約について、消費者の利益を不当に害する条項の全部または一部は無効になる。たとえば、事業者の損害賠償責任を免除する条項があったり、消費者の支払う損害賠償額を予定する条項等あれば、その全部または一部は無効になる。契約そのものが無効になるわけではない。

 消費者契約法における無効 → 条項の全部または一部を無効

続いては、特定商取引法について。正式には、特定商取引に関する法律という。
この法律は、特定商取引とネガティブオプション(送りつけ商法)を規制している。一定の要件のもとに、消費者に無条件で申し込みの撤回または契約の解除を認めるクーリングオフ制度を規定している。
たとえば、訪問販売・訪問購入では、店舗・営業所以外なら8日以内にクーリングオフできるし、電話勧誘では8日以内、マルチ商法等による契約なら20日以内だし、外国語教室とかエステティックなど6つの取引については8日以内だし、内職・モニター等をさせる契約なら20日以内にクーリングオフが出来る。また広告やカタログ等を見ての通信販売では、広告に「返品制度はない」などの明示がない場合、商品を受け取った日から8日以内であれば返品・契約解除が出来るとしている。

 ●クーリングオフ → 訪問販売・訪問購入・電話勧誘・外国語教室などは8日以内
           マルチ商法・内職・モニターは20日以内

またネガティブオプション(送りつけ商法)とは、消費者が申し込みをしていないのに、商品を勝手に送りつけ、返品または購入しないことの意思表示をしないと購入を承諾したものとして商品代金を請求する販売方式である。消費者は承諾をしない限り売買契約は成立しないので、代金を支払う義務も商品を返送する必要もない。だから特定商取引にも該当しない
特定商取引法では、ネガティブオプションについて、商品が送られてきた日から14日間(商品の引取りを販売業者に請求したときは、その日から7日間)を経過すれば事由に処分できると定めている。

 ●ネガティブオプション → 商品が送られてきてから14日間。
         ※引取請求をした日から7日間を経過すれば自由に処分可

法務の最後に、国際取引に関する知識を整理しておく。
グローバル化が叫ばれて久しい。当然に国際取引が増えればそれだけ紛争の類も増加することになる。そこで紛争解決の方法としては、主に裁判、仲裁、調停の3つがある。
1.裁判
 外国企業と取引や契約などをして、紛争が発生し裁判になる場合、どこの国の裁判所に訴えることができるかという問題がある。これを国際裁判管轄の問題という。民事訴訟法では、被告側の住所居所が日本国内にある場合は日本の裁判所に管轄権があるとしている。また、契約上の債務の履行地が日本国内であれば、それも日本の裁判所が管轄権を持つとされている。

 ●国際裁判管轄 → 被告の住所居所、債務の履行地が日本国内なら日本に管轄権

また、契約の当事者は、合意により、いずれの国の裁判所に訴えを起こすことが出来るかについて定めることが出来る。ただし、この定めは書面でしなければ効力を生じない

 外国企業と取引をし、紛争が発生した場合に適用される法律を準拠法という。準拠法の法定基準を決めるのが国際私法である。日本は「法の適用に関する通則法(以下、通則法)」を国際私法にしている。つまり、日本で法的手段をとる必要が生じた場合には、法廷地国である日本の通則法が定める基準に従って準拠法が決まる。
とはいえ、多くの国が当事者自治の原則を採用している。だから前もって紛争が起きた場合に適用する準拠法を、合意により決めておこうとしている。通則法では、前もって準拠法を定めていなかった場合、法律行為に最も密接に関係する地の法律(これを最密接関係地法という)が準拠法となる。たとえば、売買契約であれば売主の法律(ただし、目的物が不動産である場合には当該不動産の所在地)が最密接関係地法となる。

 ●準拠法の決定 → 当事者間で準拠法を選択
          ※定めがない場合は、最密接関係地法を採用

2.仲裁
 紛争を解決するために、契約当事者が選定した第三者である仲裁人に最低の判断を任せ、当事者双方はその仲裁人の判断に従わなければならないというもの。適任な専門家の選出が出来るし、柔軟な手続も可能。仲裁手続は非公開で、トレードシークレットは守られるし、迅速な解決が可能となる。また外国での執行が容易なのも特徴である。
3・調停
 紛争を解決するため、契約当事者が選定した第三者である調停人を仲介として話し合いをしたあとに、調停人から調停案を提示してもらうというもの。調停は仲裁のように拘束力はない。
 ちなみに、1.裁判は英語表記で「Adjudication」「Judgement」と書き、2.仲裁は「Arbitration」、3.調停は「Mediation」と書く。

 最後に国際契約に関する基礎知識を確認する。
国際取引は契約自由の原則や当事者自治に基づき、双方の合意で決められることが多いが、多くは英文契約書で示される。診断士試験ではなぜか英文の契約書を出題し、あたかも英語の問題のような出題がある。国際契約に関する基礎知識を知っていると、それがそのまま英語になったようなものだから解けるんだろうけれど、これがなかなかどうして手ごわい。英語が苦手でない著者も英文問題には非常に手を焼いた。

ところで、その英文契約で定められる合意や内容の確定には、国際慣習法や国際的な業界団体の作成した取引約款が参考になっている。
ICC(International Chamber of Commerce :国際商業会議所)の定めるインコタームズによる定型取引約款が有名だ。
インコタームズとは、国際的民間団体であるICCの定める国際貿易についての統一規則のこと。主に売主と買主の義務が規定されている。
インコタームズは、INCOTERMSと綴り、Internationl Commercial Terms の略称。最新版は2011年発効のインコタームズ2010である。

インコタームズは11の規則を大きく2つに分類している。
①あらゆる輸送形態に適した規則 (Rules for Any Mode or Modes of Transport)
EXW Ex Works 工場渡し条件
FCA Free Carrier 運送人渡し条件
CPT Carriage Paid To 輸送費込み条件
CIP Carriage and Insurance Paid To 輸送費保険料込み条件
DAT Delivered at Terminal ターミナル持込渡し条件
DAP Delivered at Place 仕向地持込渡し条件
DDP Delivered Duty Paid 関税込み持込渡し条件
②海上および内陸水路輸送のための規則(Rules for Sea and Inland Waterway Transport)
FAS Free Alongside Ship 船側渡し
FOB Free On Board 本船渡し
CFR Cost and Freight 運賃込み
CIF Cost, Insurance and Freight 運賃保険料込み

スピテキでは代表的な「FOB」と「CIF」を説明している。
FOB:Free On Board(本船渡し)
 船積港(売主が出荷する港)で売主が売買契約の目的物を船積みすることにより、売主の義務が完了する売買契約のこと。
だから、船積みに必要な船舶の手配や海上保険契約の締結は買主の義務となる。
CIF:Cost,Insurance and Freight(運賃保険料込み)
 売主が仕向港(買主が荷揚げする港)までの海上運賃と海上保険料を負担する売買契約のこと。
FOBもCIFも船上に物品を置くことによって、売主から買主に目的物の危険が移転するとしている。インコタームズ2010までは、「欄干を通過する」ことで移転するとしていたが、2010で船上に物品を置くに変更となっている。

なお、国際的な物品売買に関する統一法ともいえる国連条約をウィーン条約という。大半は任意規定なので、当事者の合意により同条約の適用を排除することも可能である。

やっと法務が終了した。
結構細かくみてきたが、法務については重箱の隅を突くような出題があるために細かいところまでレビューしてしまった。経営法務は2015年12月に学習を開始し、年末に終わっている。つまり、年末年始休暇をつぎ込んで勉強していたことになる。しかも年末年始にスピ問を2回転させていたと記録にはある。
過去問は年明けに着手しているが、合格点の60点に乗らないため、4月から「過去問マスター」を購入してやり込んでいる。
このように内容的には知識の暗記や論点の整理は出来ていたと思っていたが、過去問を解く、しかも論点別に解くことを始めたのが本試験の4ヶ月前だったのが遅かったのかもしれない。しかも改正論点を知ったのは直前期の7月であり、かなり焦燥感があったように思う。
結果、本試験では52点という結果であと2マークというところで経営法務も敗退した。

海老みそブシューッ! にやられたのだ。
(実際に試験を受けた方は笑えるところです)