第118話 中小企業政策④ 支援策いろいろ
今回から中小企業者に対する支援や新規事業促進などについて概観しましょう。いずれも根拠法に基づいて行われる支援で、基本的には、申請→審査→融資みたいな形式をとるものが多いですね。
中小企業基本法の基本方針に則り、それを具体化するような施策が行われています。中小企業基本法における基本方針は、
「隠そう基盤の演歌獣(かくそう きばんの えんか じゅう)」と覚えます。もちろん、受け売りです。
「隠そう」は「経営の革新」と「創造的な事業活動」の「革」と「創」です。
「基盤の」は「経営基盤」の「基盤」でそのまま。
「演歌」は「環境変化への適応の円滑化」「資金供給の円滑化」の「円滑」。
「獣」は「自己資本の充実」の「充」を表します。
結構役に立ちましたよ(笑)
●中小企業基本法の基本方針 → 革創基盤の円滑充
それでは、中小企業新事業活動促進法を概観しましょう。
1.中小企業新事業活動促進法
これは正式名称ではありませんが、正式名称を問う問題は出ません。この法律の目的は、中小企業の創意ある成長発展が経済の活性化に果たす役割の重要性に鑑み、創業および新たに設立された企業の事業活動の支援ならびに中小企業の経営革新および異分野の中小企業の連携による新事業分野開拓の支援を行うとともに、地域におけるこれらの活動に資する事業環境を整備すること等により、中小企業の新たな事業活動の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に資することである。
ん~、長い。
この目的に従って、次のような支援策が用意されている。
2.中小企業新事業活動促進法に基づく支援策
中小企業の新たな事業活動を促進するため、次の5つの支援を定めている。
①創業の支援 ②経営革新の支援 ③新連携の支援 ④技術革新の支援 ⑤地域における支援 の5つ。なお、④と⑤はまとめて環境整備ともいう。
・・・。
え? 覚え方ですと?
受け売りですが、いいですか?
●中小企業新事業活動促進法 → 早慶審議地
(創経新技地)
・・・。
1)創業支援
これから事業を開始しようとする個人や創業して5年未満の事業者等に対して、中小企業信用保険法や中小企業投資育成株式会社法の特例等が講じられる。
なお、法律上の「創業者」の定義は
・事業を営んでいない個人であって、1月以内に新たに事業を開始する具体的な計画を有する者
・事業を営んでいない個人であって、2月以内に、新たに会社を設立し、かつ、当該新たに設立される会社が事業を開始する具体的な計画を有する者
・会社であって、自らの事業の全部または一部を継続して実施しつつ、新たに会社を設立し、かつ、当該新たに設立される会社が事業を開始する具体的な計画を有する者
としている。
●創業支援 → これから事業を開始しようとする個人。
創業して5年未満
2)経営革新支援
支援策を受けるためには、計画を作成し、それが承認されなければならない。基本のスキームをみてみよう。
<スキーム>
・国(主務大臣)が基本方針を定める
・経営革新計画を作成
・単一の都道府県にとどまる計画は都道府県知事、全国に渡るような広域の案件は国(主務大臣)が承認
・各種支援策が受けられる
<用語の定義>
①新事業活動
新商品の開発または生産、新役務の開発または提供、商品の新たな販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動のことを指す。
②経営革新
同法における経営革新とは、事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること。
<経営革新計画の内容>
経営革新計画には、新事業活動に関する内容のほかに経営の相当程度の向上表す経営目標を盛り込むことが必要である。指標は「付加価値額または従業員1人あたりの付加価値額および経常利益の伸び率」である。計画期間は3~5年で、それぞれの期間終了時における伸び率は、以下のとおり。
①付加価値額または従業員1人あたりの付加価値額
3年計画 → 9%以上
4年計画 → 12%以上
5年計画 → 15%以上
※年率3%以上の伸びが求められる
②経常利益
3年計画 → 3%以上
4年計画 → 4%以上
5年計画 → 5%以上
※年率1%以上の伸びが求められる
●付加価値額 → 年率3%以上の伸び
●経常利益 → 年率1%以上の伸び
また、同法における付加価値額の定義と、経常利益の算出式は以下のとおり。
●付加価値額 → 営業利益+人件費+減価償却費
●経常利益 → 営業利益-営業外費用
<支援措置>
承認された計画は支援が受けられる権利を得ることになるが、実際に支援を受けるためには個別の審査を受ける必要がある。基本的には支援を受けるためには個別の審査が必要であることを覚えておけばよい。
●支援策 → 承認されても個別の審査必要
①融資
日本政策金融公庫からの貸付、中小機構からの無利子融資
②中小企業信用保険法の特例
信用保証協会の普通保証、無担保保証、無担保無保証人保証それぞれについて保証限度額の別枠化
③資本金3億円超の企業においても、中小企業投資育成株式会社法の株式引受等の対象になる。
④特許料等の減免
1年~10年分が半額。ただし、計画開始から2年以内の出願に限る。
⑤販路開拓支援
中小企業総合展や販売開拓コーディネート事業の支援が受けられる。
3)新連携支援
新連携(正式には、異分野連携新事業分野開拓)とは、その行う事業の分野を異にする2社以上の中小企業者が有機的に連携し、その経営資源を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ること。
●新連携 → 分野を異にする、有機的に連携
<スキーム>
・国(主務大臣)が基本方針を定める
・2社以上の異分野の中小企業体の連携体が共同で計画を作成
・国(主務大臣)の承認
<連携の対象>
対象はコア企業を含めて2社以上の異分野の中小企業者(他に組合、大学、研究機関、大企業、NPO等含む)で連携して新事業に取り組む者。ただし、貢献度合いで中小企業のしめる割合が半数以下の場合は支援対象外。だから過半数必要。
●2社以上 → 組合、大学、大企業を含めても可
●中小企業者の占める割合 → 過半数(半数以下はダメ)
<新連携事業の要件>
①新事業
・新商品の開発または生産
・新役務の開発または提供
・商品の新たな生産または販売の方法の導入
・役務の新たな提供の方法の導入とその他の新たな事業活動
②市場において事業を成立させること
③計画期間は3~5年
④新事業活動により持続的なキャッシュフローを確保し、10年以内に融資返済や投資回収が可能なものであり、資金調達コストも含めて一定の利益を上げることが必要。
●新連携 → 10年以内に返済・回収が可能なもの
<支援措置>
①補助金
当該計画に従って行う試作品開発や展示会出展等にかかる経費の一部を補助する。
・補助率 3分の2以内(上限3,000万円)
・対象 コア企業
②融資
・日本政策金融公庫による低利融資
・中小機構による無利子融資
③保証限度額の別枠化
④中小企業投資育成株式会社法による特例(以下、直接金融とします)
⑤特許料の減免
4)環境整備
①技術革新(中小起票技術革新制度(SBIR制度))
②地域における支援(地域プラットフォームの整備等)は都道府県に対する支援
中小企業新事業活動促進法について、おしまい。
続く。