自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成20年度 第10問】

【平成20年度 第10問】
 下図は、ケインズ派モデルにおける総需要曲線(AD)と総供給曲線(AS)を描いたものである。ここで、供給サイドにおいては、物価は上下に伸縮的であるが、名目賃金は硬直的であると考える。下記の設問に答えよ。

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(設問1)
 総需要曲線の説明として最も適当なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 経済が「流動性のわな」の状態にあるとき、総需要曲線は垂直に描かれる。
b 増税は総需要曲線を右方にシフトさせる。
c 投資の利子弾力性が大きいほど、総需要曲線はより急勾配に描かれる。
d 物価の下落は、実質貨幣供給の増加を通じて利子率を低下させ、
  投資の拡大と総需要の増加をもたらす。


〔解答群〕
ア a と b   イ a と d   ウ b と c
エ b と d   オ c と d

 

(設問2)
 総供給曲線の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a エネルギーなどの原材料費の上昇は、総供給曲線を左方にシフトさせる。
b 技術進歩は生産性の上昇を通じて総供給曲線を右方にシフトさせる。
c 人口構成の少子化・高齢化に伴う労働市場の変化は、総供給曲線を右方に
 シフトさせる。
d 物価の上昇は、実質賃金の上昇を通じて労働需要を増加させ、生産量の拡大
 を生じさせる。


〔解答群〕
ア a と b   イ a と c   ウ a と d   
エ b と c   オ b と d

 

 

 

 

AD-AS分析の問題ですが、スピテキではあまり詳細に書かれてなかった論点でもあります。
勉強1年目ではAD-AS分析をかる~く見ていたのですが、2年目に入り、詳細に見てみるとずいぶんと難しい論点であることが分かりました。さ~てどこまで詳細に見れるか、確認してみよう。

設問1は総需要曲線の説明を選ぶ。
これはスピテキに載っていなかった論点でしたが、経済が「流動性のわな」の状態のとき、AD曲線は垂直に描かれることが知られています。これはタテ解きをやるまで知らなかった。
増税GDPを減少させる要因になりますから、AD曲線は左シフトします。ですから誤りですね。
投資の利子弾力性が大きいほど、AD曲線もIS曲線と同じように傾きが緩やかになります。よって不適です。
物価の下落は、名目貨幣供給量が一定だとすると、実質供給量の増加になりますね。
貨幣供給量が増加すると利子率が低下しますので投資が拡大し生産量が増えます。ゆえに総需要は増大します。したがって本肢は正しい記述です。
したがって、正解は、イ となります。

なお、古典派では、実質賃金率の調整により常に需給が等しく完全雇用です。したがって、古典派における総供給曲線は完全雇用GDPで垂直になります。

 

設問2は総供給曲線の説明を選びます。
エネルギーなどの原材料費の上昇は生産に支障をきたすものとなりますのでAS曲線は左シフトします。
一方で技術革新などの技術進歩は生産性の上昇を通じてAS曲線を右シフトさせます。
よって、正解は、ア ですね。
労働市場の変化は少子化・高齢化に伴う労働人口の減少によりAS曲線を左シフトさせます。
物価の上昇は、で始まる d ですが、実質賃金の上昇とありますね。そもそも物価の上昇は実質賃金を低下させます。それに問題文冒頭に“名目賃金は硬直的”と仮定されています。したがって、この時点で誤りだと分かります。それに実質賃金の上昇によって労働需要は増加しませんね。実質賃金率が低下すると労働需要が増加するのです。実質賃金上昇で増加するのは労働供給量でしたね。