経済学・経済政策【平成25年度 第9問】
【平成25年度 第9問】
インフレーション(インフレ)について、下記の設問に答えよ。
(設問1)
インフレに関する記述として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 同一時点で成立する財貨・サービスの相対価格体系を変化させる。
b 異時点間で成立する財貨・サービスの相対価格体系を変化させる。
c 名目利子率を所与として、期待インフレ率がより高くなると、実質利子率は
低くなる。
d 期待インフレ率がより高くなると同じだけ、名目利子率も高くなると、
実質利子率も高くなる。
〔解答群〕
ア a と c イ a と d ウ b と c エ b と d
(設問2)
インフレが、所得分配に与える影響に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア インフレは債権者から債務者への実質所得移転をもたらす。
イ インフレは名目額で固定された所得を得ている人々の実質所得を減少させる。
ウ 課税最低所得がインフレにスライドして引き上げられない場合、
インフレは課税対象者を増やす効果を持つ。
エ 累進課税のもとでは、インフレは名目所得税額を変化させない。
インフレは物価の持続的上昇です。物価が上昇したかどうかって現時点で比べようはありませんね。過去と現在において上がったのか下がったのかが分かるためです。したがって、現時点ではなく、異時点間での比較になるので、b が正しい記述。
次は、c と d の検討です。
名目利子率は見た目の利子率ですし、実質利子率は物価上昇率を考慮したものです。
例えば、利子率10%で借入した100万円があります。償還は2年後だとしましょう。
この利子率は確定利子率だとすると、2年後も10%のままです。
そこで、2年の間、物価上昇率が10%であったとすると、2年前に借入した100万円は110万円の価値になっています。
しかし、利子率10%は確定利子率ですから返済する額は110万円でよいことになりますよね。
物価上昇率を加味していないからです。物価上昇率を加味すると、返済額は121万円になるはずです。
この場合、名目利子率は10%であり返済額は110万円。物価上昇率は10%ですから借入した100万円は2年後には110万円になりますよね。
ですが、実際の支払額は110万円で済んでいますから実質利子率は0%です。びっくり。
これを一般化してみましょう。
俗にフィッシャーの方程式と呼ばれるものですが、
実質利子率=名目利子率-期待インフレ率 と表すことが出来ます。
上記の例にあてはめれば、実質利子率=名目利子率10%-物価上昇率10%=0%だということです。
これを踏まえて c と d を検討します。
名目利子率を所与とすると、期待インフレ率がより高くなると、実質利子率は低くなるとありますから、
実質利子率=名目利子率(所与)-期待インフレ率 より
実質利子率↓=姪重く利子率(所与)-期待インフレ率↑ になりますね。ですから正しい記述です。
次いで d ですが、
同様に、実質利子率=名目利子率↑-期待インフレ率↑ だと実質利子率は不変ですね。
したがって、正解は、ウ です。
設問2です。不適切なものを選びましょう。
アは、「インフレは債権者から債務者への」とあります。インフレ時の100万円とデフレ時の100万円を考えましょう。インフレは貨幣価値が下落しますので100円の債務を持つ債務者にしてみたら負担が軽くなります。アは正しい記述です。
イは、名目で固定された所得を得ている場合、インフレつまり物価が上昇すると実質所得が減少します。よって正しい記述です。
ウは、インフレは貨幣価値が下落します。物価が上昇しています。課税最低額がインフレにスライドして引き上げられない場合、物価上昇率分だけ課税対象者が増えます。よって正しい記述です。
エは、累進課税は所得額に応じて課税額が高くなる仕組みです。インフレによって物価が上昇すると、名目所得が一定ならば実質所得は減少します。
インフレによって名目所得が上昇すれば当然に名目上の課税額も上昇します。よって誤りです。
以上により、正解は、エ である。