自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成17年度 第4問】

【平成17年度 第4問】
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。ただし、ここでは閉鎖経済を前提としている。


 政府支出の拡大は、GDPを押し上げる効果を発揮するが、①クラウディング・アウトを引き起こし、利子率の上昇を通じて民間投資支出を減少させてしまう。したがって、クラウディング・アウトの程度が大きいほど、政府支出の拡大に伴うGDPの押し上げ効果は小さくなる。
 他方で、貨幣供給の増加は、利子率の低下を通じて民間投資支出を刺激し、GDPを押し上げる。このように、金融政策は、貨幣供給の増加→利子率の低下→民間投資支出の増加という②伝達メカニズムが作用する場合に有効な景気調整の手段となりうる。

 

(設問1)
文中の下線部①について、クラウディング・アウトが発生せず、政府支出の拡大に伴うGDP押し上げ効果が発揮される場合はどれか。最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 投資の利子弾力性がゼロの場合
b 投資の利子弾力性が無限大の場合
c 貨幣需要の利子弾力性がゼロの場合
d 貨幣需要の利子弾力性が無限大の場合


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   エ b と d

 

(設問2)
文中の下線部②について、伝達メカニズムに関する説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣需要の利子弾力性が大きいほど、
  貨幣供給の増加に伴う利子率の低下幅が小さくなる。
b 貨幣需要の利子弾力性がゼロになる「流動性のわな」のもとでは、
  貨幣供給が増加しても利子率は低下しない。
c 古典派のケースでは、貨幣需要の所得弾力性がゼロになり、
  貨幣供給が増加しても利子率は低下しない。
d 投資の利子弾力性が大きいほど、
  利子率の低下に伴う民間投資支出の増加幅が大きい。
e 投資の利子弾力性がゼロの場合、
  利子率の低下は、無限に民間投資支出を増加させる。


〔解答群〕
ア a と d   イ a と e   ウ b と d   エ b と e   オ c と d

 

 

 

 

 

こういう問題こそ確実にとりたいですね。
設問1からいきましょう。クラウディング・アウトが発生しないもの、かつGDPが増加するものを選びます。
投資の利子弾力性がゼロの場合、政府支出を拡大させるとIS曲線が右シフトしますからGDPは増加します。利子率も上昇するのですが、利子弾力性=ゼロなので投資は増えも減りもしません。だからクラウディング・アウトも起こりません。
IS曲線は水平な状態で、政府支出を拡大させても水平のままシフトするだけでGDPは増えません。なお、利子率は不変です。
貨幣需要の利子弾力性がゼロの場合です。政府支出の拡大でIS曲線が右シフトすると利子率が上昇します。IS曲線には傾きがありますからクラウディング・アウトが発生して投資が抑制されます。また貨幣需要の弾力性がゼロですから貨幣需要はゼロですし、IS曲線が右シフトしてもGDPの水準は不変です。
いわゆる「流動性のわな」の状態ですね。政府支出が拡大すると、GDPは増加します。しかも利子率は不変です。だからクラウディング・アウトも発生しないし、GDP押し上げ効果も発揮されます。
したがって、正解は、イ です。

次の設問2です。ちょっぴり手ごわそうです。
貨幣需要の利子弾力性が大きいということは、少しの利子率低下でも増える貨幣需要が大きいということを意味します。また、貨幣供給量が増加すると利子率は下落します。ゆえに、貨幣需要の利子弾力性が大きい場合は貨幣供給の増加により下落する利子率が少しであっても貨幣需要を満たすことになるので正しい記述だ。
流動性のわな」は貨幣需要の利子弾力性はゼロではありませんね。無限大です。よって不適。
古典派の考える貨幣需要とは取引的動機によるものと予備的動機によるもの、つまり取引需要のみでした。取引需要があるのに所得弾力性がゼロになることはありえませんよね。
投資の利子弾力性が大きいほど利子率の低下に敏感になります。だから利子率が低下すると民間投資支出が増加するのです。
さらに投資の利子弾力性がゼロの場合、IS曲線は垂直になりますから利子率の変動による投資量は不変です。
したがって、a と d が正しい記述となるので正解は、ア である。