自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成19年度 第7問】

【平成19年度 第7問】
財政政策の理論に関する説明として、最も適切なものはどれか。

 

ア 貨幣需要が利子率にまったく反応しない場合、政府支出の発動によって
  クラウディング・アウトは生じず、所得の増加がもたらされる。
イ 経済が「流動性のわな」に陥った場合、政府支出を発動しても
  完全なクラウディング・アウトを招くのみで、景気押し上げ効果が発生しない。
ウ 恒常所得仮説では、1回限りの減税は可処分所得の増加と
  消費の拡大を引き起こし、景気の拡大に寄与すると考えられる。
エ 等価定理が成り立つ場合、人々は、財政赤字を伴う政府支出の増加は
  将来の増税によって賄われることを予想するために、景気刺激効果は発生
  しない。

 

 

 

 

設問が「財政政策の理論」という大雑把な言い方をしています。なので、一つずつの選択肢を否定していけば正解にたどり着けるというスタンスで検討してみます。
アです。貨幣需要が利子率にまったく反応しないというのは貨幣需要の利子弾力性がゼロの状態ですね。LM曲線が垂直のパターンです。このとき、政府支出の増加などの拡張的財政政策を行うとIS曲線が右シフトします。そうすると利子率が上昇します。貨幣需要の利子弾力性はゼロなのでクラウディング・アウトが生じます。したがってアの肢は不適だと分かります。
続いてイです。「流動性のわな」の状態のとき、LM曲線は水平な形状でした。このとき、拡張的財政政策を行うと利子率は不変でGDPが増加します。「クラウディング・アウトを招くのみ」という記述が不適です。
ウはどうでしょうか。恒常所得仮説とは、恒常的に得られる所得によってのみ決まり、偶発的な所得には影響されないとする考え方でした。よって、「1回限りの減税は消費の拡大を引き起こし」の記述が不適です。
よって正解は、エ であることが分かりますが、エの肢も見ておきましょう。
等価定理とはリカードが唱えた説で、
公債発行は政府の借金であり、返済するときに増税で賄うだろうから将来の増税と同じであると国民が考えたとすると、公債発行は増税の先延ばしであり現在の消費を減少させるので増税と同じだとし、公債発行と増税による資金調達は価値が同じだとする説のこと。

なお、このリカードの等価定理は、公債の償還が現役世代の場合を想定しています。
公債の償還が将来世代であるとしたら、現役世代は償還時の増税の負担を負わないことになりますね。すると、将来の税負担はないので消費は減らさないと考えます。ゆえにこの場合、リカードの等価定理は成立しません。
ところが、現役世代が将来世代のために“増税に備えて将来世代のために貯蓄しよう”とすると消費は減ってしまいます。つまり現役世代の増税による資金調達と効果は同じことになってしまいます。
公債の償還が将来世代であったとしても、現役世代が将来世代のために税負担の増加分を遺産として残すという「子想いの親」の前提を置くと、遺産を残すことで等価定理が成立してしまいます。これをバローの等価定理(中立命題)と呼んでいます。