自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成24年度 第8問】

【平成24年度 第8問】
金融政策及びマネーサプライマネーストック)に関する下記の設問に答えよ。

 

(設問1)
金融政策に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣の供給メカニズムで中央銀行が直接的に操作するのは、マネタリーベース
 (ハイパワードマネー)というよりも、マネーサプライマネーストック)である。
b 市中銀行が保有する現金を分子、預金を分母とする比率が
 上昇すると、信用乗数貨幣乗数)は上昇する。
c 市中銀行から中央銀行への預け金を分子、市中銀行の保有する
 預金を分母とする比率が上昇すると、信用乗数貨幣乗数)は低下する。
d 信用乗数貨幣乗数)は、分子をマネーサプライマネーストック)、分母をマネ
 タリーベース(ハイパワードマネー)として算出される比率のことである。


〔解答群〕
ア a と b   イ a と d   ウ b と c   エ c と d

 

(設問2)
日本銀行が公表しているマネーサプライ統計は、2008年に、マネーストック統計へと見直しが行われた。この見直しに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 証券会社が保有する現金通貨が、M1に含まれることになった。
イ ゆうちょ銀行への要求払預金が、M1に含まれることになった。 
ウ 預金取扱機関が保有する現金通貨が、M1に含まれることになった。

 

 

 

 

 

特に設問2は時事的ですね。逆に設問1は古典的な問題ですが、紛らわしい記述が並んでいますので勘違いに要注意です。
まずは設問1から見ていきましょう。
かなりざっくりした設問要求ですから消去法で攻めるのがベターでしょう。
aは、中央銀行が直接的に操作できるのがハイパワードマネーですから不適です。これは悩むことなく消せますね。
次はbです。信用乗数貨幣乗数)とは、預金が預金を増やしていく仕組みでした。だから預金が増えれば乗数は増加しますし、現金が増えれば乗数は低下します。
で、bの記述は分子に現金、分母に預金とする比率といっていますから、それが上昇するということは現金の比率が高くなるということですね。すなわち信用乗数は低下しますから本肢の記述は不適です。
他方、cの記述は正しい記述になります。
最後のdですが、信用乗数の理論は預金が預金を呼ぶ仕組みですからマネーサプライハイパワードマネーのどちらが預金を生み出すのかが分かれば問題ありません。マネーサプライマネーストック)は市中に流通する現金であり、ハイパワードマネー(マネタリーベース)は中央銀行が直接的に操作できる現金でしたね。ということは、そもそもマネーサプライハイパワードマネーの何倍に増えるのかを表すのが信用乗数ですから分子にマネーサプライが入ります。よってこれはただしい記述です。
したがって、正解は、エ です。

次は時事的な設問2です。郵便局が民営化されたことに伴い、制度上国内銀行としての扱いを受けるようになりました。
2008年の見直しで証券会社が保有する現金通貨はM1から外されました。ゆうちょ銀行の現金通貨は逆にM1に含まれるようになりました。なお、ゆうちょに加えて、JAや信用組合などのを含むすべての預金取扱期間の現金通貨がM1に含まれるようになりました。定期性預金はM2に含まれます。知っている知らないの世界。
ゆえに、正解は、イ です。

なお、マネーストック統計の中で貨幣の範囲を次のように定めている。
①M1(エムワン)
 現金、預金、郵便貯金などの要求払預金
②M2(エムツー)
 要求払預金以外のもの。ただし、郵便貯金やJA預金は含まない
③M3(エムスリー)
 現金通貨と全預金のこと
④広義流動性
 投資信託や国際など換金しやすい金融商品
エ 預金取扱期間への定期性預金が、M1に含まれることになった。