自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成19年度 第8問】

【平成19年度 第8問】
貨幣理論および金融政策に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 貨幣数量説と完全雇用を前提とすれば、名目貨幣供給が増加しても
  実質貨幣供給は不変であるが、利子率の低下を通じて投資を刺激する。
イ 貨幣数量説と完全雇用を前提とすれば、名目貨幣供給の増加はそれと
  同率の物価の上昇を引き起こし、貨幣の中立性が成立する。
ウ 公定歩合の引き下げ、売りオペ、外貨準備の増加はハイ・パワード・マ
  ネーの増加を通じて貨幣供給量を増加させる。
エ 流動性選好理論では、所得の増加によって貨幣の投機的需要が増加
  すると考える。
オ 流動性選好理論では、利子率の低下によって貨幣需要が減少すると
  考える。

 

 

 

 

 

 

まずは「貨幣数量説と完全雇用」という部分から“古典派”の考え方であることがピンと来ないといけない。
また「流動性選好理論」から“ケインズ”の考え方であることがピンと来ないといけない。
古典派の考えでは、利子率は財市場で決まるものとしているし、貨幣市場で決まるのは物価水準だけとしているため利子率云々の記述は古典派の考えとしてはふさわしくない。

アとイの肢に出ている「貨幣数量説」とは、貨幣供給量を2倍にすれば物価水準も2倍になり、実体経済にはなんら影響を与えないとする古典派の考えのこと。貨幣のベール観とか貨幣の中立性とも言いましたね。貨幣の世界と実物の世界とは互いに影響を与えないという意味で「古典派の二分法」とも言いました。

流動性選好理論とは、カンタンにまとめれば、資産需要(L2)は利子率の減少関数であり、利子率が上昇すれば資産需要は減少し、利子率が下落すれば資産需要が増加するというもの。

これらを踏まえて選択肢の検討をしていきます。

まずはアです。先にも述べたように「貨幣数量説と完全雇用」で古典派の考えです。
古典派の考えでは、貨幣供給量は常に“実質貨幣供給量”であり、貨幣供給量は物価水準と連動します。
さらに言えば古典派の考えでは、貨幣供給を増やそうが減らそうが実体経済には何の影響も与えませんので利子率も変化しません。
また古典派の考えは、利子率を決めるのは財市場であって貨幣市場ではないのです。したがってアの記述は不適だと分かります。
次はイです。貨幣供給量と物価水準は連動します。貨幣の中立性でした。よって正しい記述です。
ウです。公定歩合の引き下げはもはやアナウンス効果でしかないのですが、ハイパワードマネーを増加させるので貨幣供給量は増加します。売りオペは中央銀行による債券の売りなので市中から資金を回収することになり、貨幣供給量を減少させます。よって不適です。
なお、外貨準備の増加は中央銀行によるドル買い介入となりますから外為市場においてハイパワードマネーは増加します。

続いてエを見てみましょう。流動性選好理論とありますからケインズの考えです。資産需要は利子率の減少関数ということです。肢を吟味しましょう。
「所得の増加によって貨幣の投機的需要が増加」とあります。さて所得の増加によって貨幣の投機的需要が増加するのでしょうか?
今、市場利子率が下落したとしましょう。そうすると、債券の利子率は確定利子率ですから債券人気が高まります。ゆえに債券価格が高くなります。債券価格が高いのは今のうちだけだから値下がりしないように貨幣に交換してしまおうとして貨幣需要が増加します。
つまり、貨幣の投機的需要が増加するのは“市場利子率の下落”です。ゆえに不適。
最後のオです。流動性選好理論とは、資産需要は利子率の減少関数であるということを覚えておくとあっさりと不適だと判断できます。「利子率の低下によって貨幣需要が減少」ではなく、「利子率の低下によって貨幣需要が増加」が正しい記述です。
したがって、正解は、イ です。