自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成19年度 第14問】

【平成19年度 第14問】
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 下表は、A国とB国が、農業製品または工業製品を1単位生産するのに必要な生産要素量を示している。ここで、簡単化のために、A国とB国の2国のみを想定し、それぞれの国は、農業製品ならびに工業製品のみを生産すると考える。さらに、生産要素として労働力のみを考え、両国間で労働力の移動はないものとする。

         農業製品  工業製品
    A国     5     6
    B国     3     1

 

(設問1)
A国とB国の比較優位、絶対優位に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア A国は、工業製品に比較優位を持っているが、絶対優位は持っていない。
イ A国は、農業製品に比較優位を持っているが、どちらの製品に関して
  も絶対優位は持っていない。
ウ B国は、工業製品に比較優位を持っているが、どちらの製品に関しても
  絶対優位は持っていない。
エ B国は、農業製品に比較優位を持っており、かつ、どちらの製品に関しても
  絶対優位を持っている。

 

(設問2)
A国とB国が比較優位の原理にしたがって貿易を行おうとするとき、両国間での貿易パターンとして最も適切なものはどれか。

ア A国は、工業製品も農業製品も輸出出来ない。
イ A国は、両国間で貿易が行われるとすれば、農業製品を輸出する。
ウ B国は、A国に比べて同程度の生産要素の賦存量を持つとすると、農業製品を
  輸出するが、A国に比べ賦存量が大きいと、工業製品を輸出する。
エ B国は、両国間で貿易が行われるとすれば、農業製品を輸出する。

 

(設問3)
産業発展を目指すA国に関して、最も不適切なものはどれか

ア 教育の充実により、比較優位を変えることで貿易パターンを変えることが出来る。
イ 産業政策により、比較優位を変えることで、貿易パターンを変えることが出来る。
ウ 生産要素賦存量を変えても、比較優位を変えることは出来ない。
エ 比較優位を変えなくても工業製品を輸出することで貿易の利益を得ることが出来る。

 

 

 

 

 

絶対優位説では同じ財で比較、比較優位説では同じ国内で比較、でしたね。
さっそく両方求めてみましょう。
同じ財で比較します。
農業製品  A国:5  B国:3  ですからB国のほうが少ない生産要素量でいけます。
工業製品  A国:6  B国:1  ですからこれもB国のほうが少ない生産要素量でいけますね。
したがって、B国は絶対優位であり、A国は絶対劣位だといえそうです。
次に同じ国同士で比較します。
A国  農業製品:5  工業製品:6  ですから農業製品のほうが少ない生産要素量でいけます。
B国  農業製品:3  工業製品:1  ですから工業製品のほうが少ない生産要素量でいけます。
したがって、A国は農業製品に比較優位があり、B国は工業製品に比較優位があるということになります。
それでは設問1の選択肢の検討です。
アは、「A国は、工業製品に比較優位」とあります。A国は農業製品に比較優位ですので不適です。
イは、「A国は、農業製品に比較優位」とあります。ここは正しい記述。
後段の「どちらの製品に関しても絶対優位は持っていない」ですが、絶対優位はB国ですからこれも正しい記述であることが分かります。ゆえにこれが正解。
ウですが、「B国は、工業製品に比較優位」とあります。前段は正しい記述になっています。後段の「どちらの製品に関しても絶対優位を持っていない」ですが、B国には絶対優位がありました。よって不適。
エは、前段の「B国は、農業製品に比較優位」ですが、B国は工業製品に比較優位です。よって不適。
以上により、正解は、イ である。

続いて設問2の検討に入ります。
比較優位の原則に従えば、A国は農業製品を輸出し、B国は工業製品を輸出します。これが比較生産費説ですね。だから正解は、イ のようにみえます。
気になるのはウの肢ですね。しかも「賦存量」という語句が気になります。
ちなみに賦存量とは、ある資源について理論的に導き出された総量という意味らしいですが、賦存量に紐付いて生産要素量も変化するのであれば変わってくるのだろうけれど、何も条件はありません。ですのでここは賦存量が増えようが投入する生産要素量は変わらないといえそうなのでウも不適です。

設問3を見てみましょう。
A国は相対的に絶対劣位であり、農業製品に比較優位を持っていますから2国間で貿易をするなら農業製品を輸出します。
ところで、問題文中に“産業発展”とかあると、A国は農業か?と勘付いてしまいますね(笑)
さて、この設問は結構サービス問題です。この問題の前提は2国モデルですから農業製品に比較優位を持つA国が工業製品を輸出できるわけはありません。なぜなら工業製品に比較優位があるのはB国なのですから、わざわざ輸入する必要もないからです。それでもA国が工業製品を輸出したいとなれば貿易そのものが成立しませんです。
したがって、正解は、エ である。