自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成20年度 第9問】

【平成20年度 第9問】
 下図は、開放経済下におけるマクロ経済モデルを描いたものである。
 この図に関する次の文章中の空欄A~Cに入る最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。


 いま、小国モデル、完全資本移動、固定為替レート制、物価の硬直性、静学的な為替レート予想を仮定する。下図は、これらの前提に基づき、生産物市場の均衡を表すIS曲線、貨幣市場の均衡を表すLM曲線、自国利子率と外国利子率が均等化することを表すBP曲線を描いたものである。
 ここで政府支出が増加すると、IS曲線が右方にシフトし、新たなIS曲線LM曲線の交点において( A )になる。このため、( B )が生じる。結果として、( C )になる。

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〔解答群〕
ア A:国際収支(経常収支と資本収支の合計)が赤字
  B:外貨準備の減少と貨幣供給の減少
  C:LM曲線が左方にシフトして国際収支の均衡が回復するが、
   財政政策は景気拡大に無効
イ A:国際収支(経常収支と資本収支の合計)が黒字
  B:外貨準備の増加と貨幣供給の増加
  C:LM曲線が右方にシフトして国際収支の均衡が回復し、
   財政政策は景気拡大に有効
ウ A:国際収支(経常収支と資本収支の合計)が黒字
  B:円高
  C:LM曲線が左方にシフトして国際収支の均衡が回復するが、
   財政政策は景気拡大に無効
エ A:経常収支が黒字
  B:外貨準備の増加と貨幣供給の増加
  C:LM曲線が右方にシフトして経常収支の均衡が回復し、
   財政政策は景気拡大に有効
オ A:資本収支が赤字
  B:円安
  C:LM曲線が右方にシフトして資本収支の均衡が回復し、財政政策は
   景気拡大に有効

 

 

 

 

 

IS-LM-BP分析ですね。
この問題は完全資本移動と固定相場制を仮定としています。マンデル=フレミングモデルではないですね。
固定相場制の場合は中央銀行が為替介入を行いますから、財政出動後にIS曲線がシフトしますが、為替介入後、LM曲線もシフトするところに注意が必要ですね。
また、資本移動もありますから資本収支も考慮に入れる必要があります。
完全資本移動、固定相場制は財政政策は有効、と結論だけを覚えてもいいのですが、ここはしっかりとその結論に至るプロセスまで押さえておきたいですね。
また、IS-LM-BP分析では、貿易収支イコール経常収支、国際収支イコール経常収支+資本収支と仮定することも忘れてはならない。

問題のように財政出動を行い、政府支出を増加させたとしましょう。
そうすると、IS曲線が右シフトします。
その結果、自国の利子率が上昇しますから海外資金が流入します。
外資金が流入することで資本収支は改善します。
すると自国内は利子率が高いですから自国通貨が買われることで自国通貨の超過需要が発生します。

ところが自国は固定相場制を採用していますから中央銀行の為替介入が始まります。自国通貨が買われるので中央銀行は貨幣供給量を増加させ、為替のバランスを維持しようとたくらみます。
貨幣供給量が増加しますから当然にLM曲線は右シフトします。
なお、固定相場制ですから自国通貨の変動に伴う輸出入の変化は生じません。
IS曲線が右シフトし、LM曲線も右シフトしますから新しい均衡点は元の均衡点よりも右側に移ります。すなわちGDPが増加したことを意味するので固定相場制、完全資本移動の場合の財政政策は有効であるといえます。
まとめると、
完全資本移動ですから、IS曲線が右シフトし、自国利子率が上昇すれば資本収支は改善します。
為替介入により、貨幣供給量は増加します。
LM曲線は右シフトします。
財政政策は有効です。
以上を踏まえて、選択肢を検討します。

アは、Aで国際収支が赤字とありますので不適。
イは、A、B、Cのすべてが正しい記述です。
ウは、Bで円高といっています。固定相場制なので円高になりようがありません。よって不適です。それにCでは、LM曲線が左シフトとありますが、右シフトです。
エは、Aの経常収支の記述は誤りですね。Cの経常収支の均衡が回復も誤りです。固定相場制ですから通貨変動による貿易収支(イコール経常収支)の変動はないため、経常収支は不変です。ゆえに不適。
オは、外貨が流入しますから資本収支は黒字になります。Aの記述がおかしいですね。固定相場制だから円安にもならないのでBもおかしいし、Cの記述も誤り。
以上により、正解は、イ である。