自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成23年度 第24問】

【平成23年度 第24問】
下図は、ある財の消費が外部不経済を及ぼす場合を示したものである。当該財の私的限界価値曲線はD0D1として、社会的限界価値曲線はD2D3として描かれる。また、供給曲線はS0S1である。

f:id:sk6960:20160302141423j:plain

この図の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 市場均衡点はE点であり、最適状態と比較して三角形EFGの余剰が失われる。
b 社会的に最適な状態を実現したとき、経済余剰は三角形D0ES0になる。
c 社会的な最適点は課税によって実現し、このときの税収は四角形D0HFD2に
  等しく、これは外部経済と相殺される。
d 社会手金最適な状態を課税によって実現したとき、税込みの市場価格はP1
  で示される。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   エ b と d

 

 

 

 

 

さてさて今回から図を貼り付けてみますよ~。どうなるんすかねー。

まずは下図のようにそれぞれの領域に a ~ j の記号をつけました。これをもとに解いていきたいと思います。

f:id:sk6960:20160302141503j:plain

この余剰分析の問題は、
①もともとの経済余剰
②変化後の経済余剰
の比較がポイントになりそうです。ですからここでは①と②について確認しようと思うのであります。

まずはもともとの経済余剰の確認をしましょう。
もともとの余剰は私的限界価値曲線のほうを見ます。ですからD0D1の曲線に注目すればいいわけです。
もともとの経済余剰は、
消費者余剰→abcde です。また、
生産者余剰→fghi ですね。この問題では外部不経済が発生していますから、
外部不経済→adeghi となり、
ですから余剰の合計は、
①社会的総余剰→ abcde + fghi - adeghi = bcfi - j になります。
ここで注意すべきは、外部不経済が発生しているときの需要量から外部不経済を算出することです。

この財は消費すればするほど外部不経済を発生させますからなんとかして消費を抑える必要があります。
そこで何らかの手段を講じた結果、限界価値曲線が下方にシフトし、それが社会的限界価値曲線となります。これがD2D3曲線です。
まぁ消費を抑えるには課税しかないでしょ(笑)
ここで限界価値曲線がシフトした後の余剰を確認します。
社会的限界価値曲線D2D3と供給曲線S0S1との交点はFですから、
消費者余剰→bcf
生産者余剰→i ですね。
限界価値曲線がD2D3のときの需要量はQ1ですから、
課税による税収入は、
税収入→adg
になります。
またこのときの外部不経済
外部不経済→adg です。
よって、②社会的総余剰は、
bcf + i + adg - adg = bcfi です。

それでは、①②を比較しましょう。
①もともとの総余剰 → bcfi - j
②変化後の総余剰 → bcfi
したがって、何らかの手段を講じた結果、j の余剰が失われることになります。

これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。
aですが、市場均衡点はEです。最適状態(もともと)と比較して三角形EFG(= j )の余剰が失われています。ゆえにこれは正しい記述です。
bです。社会的に最適な状態が実現したときは②のケースです。
このときの経済余剰は、bcfi でした。これって三角形D2FS0です。
選択肢にある三角形D0ES0は、abcdefghi ですから不適だと分かります。
cは、社会的に最適な状態を実現したいときに使われる手段の一つに課税があり、この問題の場合は課税したということです。このときの税収は四角形D0HFD2とります。これは adg です。また、この adg は課税後に発生する外部不経済adg と一致しています。ゆえに完全に相殺される形になり、正しい記述だと分かります。
dは課税したときの価格はP1ではなく、P2です。ゆえに不適。
以上により、正解は、ア です。

なお、課税後の税収は、本解説では、 adg としましたが、
四角形P2P1FH(=cdfg)でもOKです。
この場合、
消費者余剰→ab
生産者余剰→i
政府の税収→cdfg
外部不経済→adg
となり、社会的総余剰は、
ab + i + cdfg - adg =bcfi になりますから結果は同じです。しかし、課税後の「税収と外部不経済が相殺される」ことを確認するためには一工夫が必要になります。
とはいっても難しいことではなく、税収に当たる cdfg を等積変形すれば adg になるんですね。そこでようやく「相殺される」ことが確認できるわけです。