自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成24年度 第21問】

【平成24年度 第21問】
いま、企業Aが個人Bに対して負の外部性を発生させる財を生産している。下図は、企業Aの私的限界費用の上方に個人Bへの影響を考慮した社会的限界費用が描
かれており、線分Eの長さは限界的な外部性の大きさを表している。当該財の価格
がPで一定であるとすれば、自由放任の状況下で外部性を考慮しない場合の企業
Aが選択する合理的な生産量はQ2、外部性を考慮して社会的余剰を最大にする
場合の生産量がQ1となる。なお、図中のCとDは線で囲まれた範囲の三角形の面
積を表すものとする。
この図に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。

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〔解答群〕
ア 現状で生産量Q2が選択されているとき、コースの定理によれば、企業Aと
  個人Bの自発的な交渉が可能であれば生産量Q1 が選択される。
イ 自由放任の状況下で外部性を考慮しない場合の企業Aが選択する生産量Q2
  は、2つの三角形の面積の合計(C+D)に相当する死重損失を生む。
ウ 数量規制によって生産量がQ2からQ1へ減少する場合、企業Aは、面積C
  に相当する分だけ余剰が減少する。
エ 生産量がQ2からQ1へ減少する場合、個人Bは、2つの三角形の面積の合
  計(C+D)に相当する分の外部不経済を被らずに済む。

 

 

 

 

 

 

価格と社会的限界費用に囲まれた領域を「S」、社会的限界費用と私的限界費用に囲まれた平行四辺形の部分を「T」としましょう。

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企業Aは生産者側で、私的限界費用曲線及び社会的限界費用曲線が描かれていますから生産者余剰は分かりますね。でも消費者余剰についてはさっぱり分かりません。この場合の消費者は個人Bですから個人Bの余剰は分からないままなんでしょうか?

そもそも消費者余剰とは、消費者が支払っても良いとする価格と市場価格がを比べて支払ってもよいとする価格が安いとき余剰が発生します。つまり、消費者が支払っても良いとする価格よりも市場価格が高ければ消費者は需要しないですね。
少し意味合いが異なりますが、極端な例で説明しましょう。
たとえば、大気中の空気を販売しようとします(空気は自由財ですから正確に言えばこの例証は正しくないです)。
消費者は空気の値段は「ゼロ」だと考えていますが、キレイな大気をもつ企業は空気を売りたいと考えています。その値段を10円とするとき、消費者は10円出してまで呼吸しようとしないです。
この場合、縦軸である価格の軸と需要曲線の交点が、価格よりも下方にあることになり需要曲線と価格線が交わることはありません。

消費者余剰とは需要曲線と価格線に囲まれた部分の面積で示すことが出来ますので、需要曲線と価格線が交わらないとき余剰を示すことは出来ないのです。
ま、そもそも需要曲線は書いてないですし。
これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。

アです。まずコースの定理というワードが出てきました。
コースの定理とは。「交渉に費用がかからないとすれば、当事者間の所有権の設定次第で、自発的な交渉が行われ、パレート効率的な資源配分が行われる」というものですね。所得配分じゃなくて資源配分なんですよ。
で、自発的な双方の交渉によって、社会的費用を負担し、外部不経済をなくすことが出来る生産量Q1が選択されるとする。ゆえに正しい。
イです。外部性が発生していない場合、企業Aの余剰、すなわち生産者余剰はSTCの部分です。私的限界費用と価格線に囲まれた部分ですね。このときの生産量はQ2です。
生産量がQ2のとき、外部不経済が発生したとすると、生産=Q2、私的限界費用と社会的限界費用の乖離分が負の外部性だから、平行四辺形のTCDの部分が外部不経済にあたりますよね。
したがって、もともとの余剰STCと負の外部性が発生した場合の余剰TCDを比べると、STC-TCD=S-D となりますから D にあたる部分が死荷重です。
ゆえに、C+D が死荷重だとする記述は誤りであることが分かります。

続いてウ。
生産者余剰は限界費用(供給曲線)と価格線に囲まれた部分ですから、
生産量=Q2のときの余剰→STC
生産量=Q1のときの余剰→S
生産量=Q1のときの負の外部性→T  ですから、
STC-S-T=C となり、この部分が減少した余剰。ゆえに正しい記述。
最後にエです。
生産量=Q2のとき、企業Aの生産者余剰はSTCでした。ちなみに生産者の余剰とは企業の利潤です。利潤=収入-費用でした。収入は生産量×価格ですから、この個人Bは生産者余剰であるSTDの部分を負担していることにもなります。また、生産量=Q2のときの外部不経済はTCDでしたから、この企業AはTCにあたる部分の費用を負担しています。つまり、利潤から負の外部性の部分を費用負担していると考えるのです。
生産量=Q2のとき、個人Bは被害をこうむっていると考えると、個人Bの被害とは“負の外部性である D の費用負担だ”としましょう。
つまり、TCDという負の外部性の費用を企業AはTCを負担し、個人BはDを負担していると考えるのです。
そこで、生産量がQ1になると、生産者余剰はS、負の外部性はTとなり、Dの負担分は消えます。
そうすると個人Bは、生産者余剰がSだけになることから、購入することで支払っていたCの部分と、外部不経済としてこうむっていた被害分のDの負担がなくなる。
ゆえにエは正しい記述となる。
以上により、イ が正解である。