自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

財務会計【平成25年度 第1問】

【平成25年度 第1問】
 伝票式会計は、分業による経理処理の効率化のための工夫として広く採用されている。伝票式会計に関する以下の設問に答えよ。

(設問1)
 伝票式会計に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 伝票式会計を導入している場合、売上戻りは売上伝票に記入される。
b 伝票式会計を導入している場合、仕訳帳は利用されない。
c 伝票式会計を導入している場合、仕訳日計表には売上伝票と仕入伝票を集計
 しない。
d 伝票式会計を導入している場合、補助簿の記入は仕訳日計表を利用して行う。


〔解答群〕
ア a と b
イ a と c
ウ b と c
エ b と d
オ c と d

(設問2)
 本日における伝票の一部が以下に示されている。売掛金勘定の本日の残高として最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、昨日の売掛金勘定の借方残高は120,000円であった。

f:id:sk6960:20160303172749j:plain

〔解答群〕
ア 40,000円
イ 90,000円
ウ 100,000円
エ 240,000円

 

 

 

 

 

 

 

診断士試験は第1問から意味不明な問題を出します(笑) 受験生の出鼻をくじく作戦でしょうか。
伝票式会計は、仕訳帳の代わりに伝票を用いて取引の処理をする方法です。仕訳帳の代わり、ですから仕訳帳は利用されません。
伝票式会計には、①三伝票制 ②五伝票制 の2種類があります。
①三伝票制は『入金伝票・出金伝票・振替伝票』の3つを使用するものであり、
②五伝票制は『入金伝票・出金伝票・売上伝票・仕入伝票・振替伝票』の5つを使用するものです。

①三伝票制
・入金伝票の仕訳は、借方は必ず「現金勘定」となる。
・出金伝票の仕訳では、貸方はなからず「現金勘定」。
・振替伝票は、入金・出金以外の取引に使用されます。

ハナシは少し変わりますが、以下を仕訳してみましょう。

(例)商品100を売り上げ、20を現金で受け取り、残りは掛けとした。

これはフツーに処理すれば、

 現 金 20  / 売上 100
 売掛金 80

ですね。これは借方が2行に分かれていますが、貸方は1行だけです。こうすると、時には間違える可能性があります。借方と貸方が常に一致したほうが間違えないで済みます。ですから伝票式会計のように都度都度で仕訳をおこさないといけないようなものは「取引を擬制にする(分割する)」方法が採られます。
つまり三伝票制では取引を擬制にする方法が用いられ、

 入金伝票によって  現金 20 / 売上 20
 振替伝票によって  売掛金 80 / 売上 80

というふうに2つの取引に分割するのです。

同様に次を仕訳してみます。

(例)商品30万円を仕入れ、10万円を現金で支払い、残りは掛けとした。

フツーの仕訳は

 仕入 30万円 / 現金 10万円
            買掛金 20万円     なんだけれど、

三伝票制では取引を分割しますので、

 振替伝票によって  仕入 30万円 / 買掛金 30万円
 出金伝票によって  仕入 10万円 / 現金 10万円

とするのです。

この方法だと常に貸借が一致しますから間違いを防止できそうです。

②の五伝票制は、入金・出金・振替の各伝票のほかに仕入伝票と売上伝票の2つがあります。
仕入伝票は商品の仕入のときだけに使用するものです。だから必ず借方は仕入勘定となります。
 仕入 *** / 買掛金 ***  みたいな感じですね。
売上伝票は商品の売上のときだけに使用しますが、返品や値引きも売上伝票を使用します。すると、貸方は必ず売上勘定になりますね。
 売掛金 *** / 売上 ***  みたいな感じ。
五伝票制では、どのような取引でもいったん掛けで売上または仕入とみなして起票するという点が特徴です。
なお、五伝票制では全ての取引を擬制にする方法を用いることになっています。

(例) 商品100万円を売り上げ、20万円を現金で受け取り、残りは掛けとした。

フツーの仕訳は

 現  金 20万円   / 売上 100万円
 売掛金 80万円

五伝票制では、

 売上伝票によって  売掛金 100万円 / 売上 100万円
 入金伝票によって  現  金 20万円 / 売掛金 20万円  とします。

(例)商品を50万円仕入れて現金で20万円支払い、残りは掛けとした。

 仕入伝票によって  仕入 50万円 / 買掛金 50万円
 出金伝票によって  買掛金 20万円 / 現金 20万円  ですね。

また、選択肢cにある「仕訳日計表」とは、1日分の伝票を各勘定科目、補助科目の残高と貸借合計を要約して併記したものです。仕訳日記帳とは全く異なるものです。
また、伝票式会計では、補助簿への記入は仕訳日計表を通さずに各伝票から個別に転記を行います。f:id:sk6960:20160303172918j:plain

それでは設問1の選択肢を検討しましょう。a:伝票式会計では売上に関する取引はすべて売上伝票を用いる。値引きや返品も含めて、です。なお、値引き・返品の場合赤字で記入することになっています。ゆえに本肢は正しい記述です。
b:伝票式会計では仕訳帳の代わりに伝票を使うので仕訳帳は私用しません。ゆえにこれも正しい記述。
c:仕訳日計表は1日分の伝票を集計するので1日分の売上伝票や仕入伝票も集計する。ゆえに不適です。
d:伝票式会計では補助簿への記入は仕訳日計表を通しません。各伝票から個別に補助簿へ記入します。ゆえに不適。
以上により、正解は、ア である。

次は設問2です。本問は売上伝票がありますので五伝票制ですね。設問要求は売掛金残高を求めよということですので、各伝票から売掛金に関する内容をまとめればいいですね。
昨日の売掛金残高は120,000円です。
No.101の入金伝票でA店からの売掛金を60,000円回収できました。なので、残りは60,000円です。
B店に50,000円売り上げ、C店に70,000円売り上げています。これらは売上であり、入金ではないので売掛金として処理されます。なので、残り60,000+50,000+70,000=180,000円です。
また、No.303の振替伝票でB店からの売掛金80,000円を為替手形で回収していますので180,000円-80,000円=100,000円が残高です。
以上により、正解は、ウ である。