自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成25年度 第20問】

【平成25年度 第20問】
 下図は、2人(AとB)、2財(XとY)の設定で描かれたエッジワースのボックスダイヤグラムである。OAが個人Aの原点、OBが個人Bの原点であり、2人が保有する2財の量を識別するため、XとYの右下にはAとBというインデックスが付されている。
 また、下図では、XとYにまつわる2人の初期の資源配分が線分DF上のパレート最適な点Kとして与えられている。点Kでは、線分DFと無差別曲線UAとが接している。なお、無差別曲線UA上には点Mもある。点線で描かれている線分CEは線分DFと同じ傾きを有し、点Nを通過する。線分CE上にはパレート最適な点Lも与えられている。
 このとき、下図に関する説明として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

f:id:sk6960:20160316172006j:plain


〔解答群〕
ア 所得再分配によって、点Kから点Lへ財の保有量を変化させることは、パレー
  ト効率的である。
イ 線分DFの傾きは、2財の価格の比率とみなすこともできる。
ウ 点Kから点Mへ財の保有量を変化させても市場の効率性は失われない。
エ 点Nから点Lへ財の保有量を変化させることは、個人Aと個人Bが保有する
  XとYの合計量をそれぞれ増加させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

エッジワースのボックスダイヤグラムは初登場でしょうかね。
これって上下に合体させただけなのでそんなに難しくはないです。2人・2財における交換経済の効用水準とパレート効率性を確認するためのものです。公平性については一切触れていません。ですから選択肢中に「公平性」に関する記述があれば速攻でバツです。
エッジワースの箱とも呼ばれますが、これについてポイントだけを確認しておきましょう。
まずは、無差別曲線は原点に凸ですからUAは個人Aの無差別曲線。与件には出ていない無差別曲線UBは個人Bの無差別曲線です。
図にははっきりと描かれていませんが、UAとUBで囲まれた部分を「交換可能領域」といい、この交換可能領域からはみ出した場合はいずれか一方の効用が下がっていることを示します。
また、無差別曲線同士の接点はパレート最適な点であり、図で言えば、KとLを結んだ線を契約曲線といいます。接点がパレート最適ですよ。交わった点はパレート最適ではないので注意が必要です。
さらに、他の経済主体の効用を低下させることなく、自己の効用を増加させることが出来ることを「パレート改善」といいます。
これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。

まずはアです。点Kから点Lへ財の保有量を変化させて見ましょう。お互いの効用が変わらなければパレート最適ですね。
KからLになった場合、個人Aにとっては効用が増えました。原点から離れていきますからね。一方、個人Bは原点に近づいてしまったので効用が下がります。個人Aの効用が高くなっても個人Bの効用が下がってしまっていますからパレート効率的ではありません。ゆえに不適。
次はイです。線分DFは予算制約線ですよね。であれば、線分DFの傾きは2財の価格比を表します。よって正しい記述ですね。
ウは、点Kから点Mに財の保有量を変化させます。
個人Aにとっては(無差別曲線UAを見ましょう)、個人Aの原点から離れていきますから効用が高くなります。他方、個人Bにとっては(一番左の無差別曲線を見ましょう)、個人Bの原点方面に近づいているのが分かりますね。そうすると、個人Bにとっては効用が下がることになります。すると、市場の効率性、つまりパレート最適でなくなるので不適です。
エは、図が複雑に見えるから難しく感じるだけです。紐解いていきましょう。
個人AにとってはNからLへの変化は、X財は減少、Y財は増加です。
個人BにとってはNからLへの変化は、X財は増加、Y財は減少です。
つまり相殺されてしまうので合計量は不変です。ゆえに不適。
以上により、正解は、イ である。