自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成20年度 第18問】

【平成20年度 第18問】
 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 消費と余暇に関する、ある労働者の当初の予算制約式が次のように与えられているとする。
 C = w × ( 24 - L )
 ここで、Cは消費、wは時間当たりの賃金、Lは余暇時間とする。労働者は、余暇時間以外の時間に働くとする。下図のように、人々は消費と余暇に関する無差別曲線と予算制約式により、最適な労働時間と消費水準を決定する。ここで、この労働者の初期の最適点はE点で与えられている。

f:id:sk6960:20160317154245j:plain

(設問1)
 賃金が低下し、予算制約式が変化して、下図のように点線で与えられたものとする。このとき、新たな最適点はE’となった。余暇の時間に対する所得効果と代替効果に関して、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

f:id:sk6960:20160317154322j:plain

〔解答群〕
ア 所得効果の影響より、代替効果の影響の方が大きい。
イ 代替効果の影響より、所得効果の影響の方が大きい。
ウ 所得効果の影響と代替効果の影響は同じである。
エ 所得効果と代替効果、双方とも存在しない。

 

(設問2)
 もともとの最適点がE点で与えられている。政府の福祉政策により、所得水準がある一定水準以下の労働者に対して給付金が出ることになった。この場合、労働者が新たに選択する消費と余暇の時間の組み合わせに関して、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

f:id:sk6960:20160317154406j:plain

〔解答群〕
ア 消費は上がって、労働時間を増やす。
イ 消費は上がって、労働時間を減らす。
ウ 消費は同じで、労働時間も変わらない。
エ 消費は下がって、労働時間を増やす。
オ 消費は下がって、労働時間を減らす。

 

 

 

 

 

 

 

スルツキー分解の余暇・消費モデルですね。
縦軸は消費で、横軸は余暇になっています。当然ですが、余暇は最大で24時間です。与件より、余暇時間以外は労働時間です。ですから、余暇が16時間であれば労働は8時間というわけです。
また、wは時間当たりの賃金とありますから、最大でも24w 円が所得です。
さらに言えば、余暇の値段は w です。
これは、余暇を1時間過ごすと本来得ていたであろう1時間分の所得を失うからです。つまり、余暇1時間=w円ということになります。
設問1は賃金率が下落していますから、余暇の値段が下落したということです。割安になった余暇は増えます。これが代替効果です。
下の図を見てください。

f:id:sk6960:20160317154656j:plain


賃金率が下落した後の予算制約式(点線)と平行な補助線を引き、無差別曲線との接点をGとすると、E→Gの変化が代替効果です。また、GからE’への変化は所得効果になります。
ゆえに、EG>GE’ですから代替効果の影響の方が大きいといえます。
ゆえに、正解は、ア である。

 

次は設問2です。
所得水準がある一定水準以下の労働者に給付金が出ます。バラマキっすかね。
そもそも賃金率はともかく、労働者はある一定の水準以下なら給付金がもらえますから余暇時間を減らし、労働時間を増やして所得を多くするよりも労働時間を増やさずに一定の水準をキープし給付金をもらうほうが合理的だと考えます。
これは与件として与えられている図でも分かります。

f:id:sk6960:20160317154915j:plain


給付後の予算制約式は、給付決定水準で並行になっている部分があります。さらに制約式は給付決定水準から右下がりになっている部分もあります。
平行な部分は「この水準なら給付金ももらえるし、労働しなくても消費は一定を維持できるから余暇時間を増やすか(労働時間を減らす)」という意味です。
また、右下がりの部分は「給付水準まで労働してもいいけれど、働かなくても給付金が出るんだから、水準ギリギリ働くよりは消費は減るけれど時間を余暇に使うか(労働時間を減らす)」という意味です。
つまり、福祉給付後の予算制約式(変更部分のみ)でもっとも効用が高いのは下図でいう点Rです。だから点Rに最適消費点が移ります。
そうすると、もともとの最適消費点Eよりも、
余暇時間 → 増加
(労働時間 → 減少)
消費 → 減少
であることが分かります。

給付後の予算制約式に接するように無差別曲線を描くと余暇は増加し、消費は減少する点と接します。どこと接するように描いてもそうなります。

また、設問1のようにこう考えてもOKです。
給付金が出るということは、逆に賃金率が下がったことになります。それゆえ、余暇の値段が下がることになり(労働の値段が上がることになり)、割安になった余暇を増やします(割高になった労働を減らします)。
賃金率が下がった上に余暇を増やす(労働を減らす)ので消費は増えません。

いずれにしても図で判断できると一目瞭然ですから、労働時間は減り(余暇時間が増え)、消費も減ります。
以上により、正解は、オ である。