経営法務【平成18年度 第1問】
【平成18年度 第1問】
依頼者A氏から、小規模な会社を設立して新しい事業を行いたいが、会社法ができたことで会社の設立手続きに変更があったのかどうか詳しく教えてほしいとの依頼を受けた。
あなたのアドバイスとして最も適切なものはどれか。
ア 株式会社設立の登記を行う際に、出資の履行が行われたことを示す書面を添
付しなければなりませんが、発起設立・募集設立いずれの場合も、当該書面
は、銀行預金の残高証明だけで足りることになりました。
イ 現物出資に検査役の調査が不要となる範囲が拡大されましたので、現物出資
財産について定款に記載された価額の総額が500万円以下であれば、検査役
の調査は不要です。
ウ 取締役会が設置されていない小規模な株式会社の場合は、設立手続きも規模
に応じて簡素な形式になりましたので、発起人が作成した定款に公証人の認
証を受ける必要はありません。
エ 有限会社を設立することは原則出来ないこととなりましたが、特例として資
本金の額が10万円以下であれば、設立する会社を有限会社とすることも出来
ます。
診断士試験って第1問に改正論点を出してくることが多いね。27年の本試験も第1問が改正論点だったし。
この問題のポイントは設立手続きについてだが、
ア→発起設立・募集設立いずれも銀行預金残高証明だけでよいのか?
イ→現物出資は500万円以下なら検査役の調査は不要なのか?
ウ→取締役会不設置会社は定款の公証人による認証は不要なのか?
エ→会社法設立以後も有限会社は設立出来るのか?
が論点になっていそうだね。
そこいらを中心に選択肢の検討に入る。
まずはアだが、発起設立は財産の出資者は発起人しかいないので銀行の残高証明だけで可。ただし、募集設立は出資者が複数になるので払い込みが確実に行われたかどうかの各員が必要。よって「発起設立・募集設立いずれも」の記述が不適。
次はイ。財産出資の価額が500万円以下なら検査役の調査は不要。ゆえに正しい記述。また、財産出資は発起設立でも募集設立でも可。ただし、募集設立の場合には発起人のみ現物出資が認められる点に注意しよう。
ウは株式会社の定款は公証人の認証が必要。したがって不適。ちなみに持分会社は定款は必要だが、公証人による認証はいらない。
エは会社法が出来てからは有限会社の設立は出来ない。
したがって、正解は、イ である。