経営法務【平成23年度 第1問】
【平成23年度 第1問】
A、B、C、Dの4人は、株式会社を設立することを考えている。4名全員が発起人となり、資本金額は1,200万円を予定しており、各人の出資内容は以下の通りである。また、A、B、Cは取締役となり、Dは監査役となる。Dは税理士である。これに関し、下記の解答群のア~エに示す4人の発言のうち最も適切なものを選べ。
(出資内容)
A:現金50万円、X社株式250万円分(X社は東京証券取引所一部上場企業)
B:商品300万円分
C:現金200万円、什器備品類100万円分
D:現金300万円
〔解答群〕
ア Aの発言
「私が現物出資するX社株式は、上場企業の株式であるので、定款認証の日の
6ヶ月前から前日までの終値の平均の金額を基準として算定してあれば、
検査役の検査は不要になるはずだ。」
イ Bの発言
「私が現物出資する商品は、税理士であるDがその金額が相当であることにつ
いて証明してくれれば、検査役の検査は不要となるはずだ。」
ウ Cの発言
「A、Bが現物出資する物について検査役の検査が不要となれば、私が現物出
資する什器備品類だけなら100万円分なので、検査役の検査は不要となる
はずだ。」
エ Dの発言
「検査役の検査が必要となると面倒だから、Aが出資する株式は150万円分、
Bが出資する商品は250万円分として、それぞれ現金を増やそう。そうすれ
ば、現物出資の総額が500万円だから、検査役の検査は不要なはずだ。」
X社は東証一部上場企業だって。こういう書き方をするところがひっかけを誘っているよね。
さて、現物出資にかかる検査役の調査が論点になっているけれど、ポイントは現物出資だけで500万円を超えると検査が必要になる点と、弁護士、税理士等の証明があれば不要だという点だね。選択肢を吟味してみよう。
アであるが、確かに上場会社の株式を現物出資にすることは可能だ。ポイントは、6ヶ月以上前から前日までの終値の平均の金額が算定基準なのかどうかだな。ここは初見だし、保留するか。
イだ。いくらDが税理士だからといって身内に証明してもらうというのはおかしくないか? だからこれは不適の候補だな。
ウだ。AとBで550万円となるから検査は必要だし、Cが加われば650万円になるからなおのこと検査は必要だ。これは不適だな。
エはどうかというと、Aが150万円分、Bが250万円分、Cが100万分の現物出資をしたら合計で500万円だ。だから500万円を超えていないので検査は不要になるね。素直に読むと、エが正しい記述のように思えるけれど。
解説にはこう書いてあった。
上場会社の株式の金額算定の基準は、①当該有価証券の市場での最終価格 ②公開買付価格 のいずれか高い方としているようだ。だからアは不適なんだ。
イについては、発起人は現物出資の価額を証明することが出来ないんだって。だから不適。
以上により、正解は、エ である。