自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成21年度 第16問】

【平成21年度 第16問】

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 

 有限責任制の人的会社制度として、会社法合同会社制度が創設された。また、有限責任事業組合契約に関する法律により、新たな事業体としての有限責任事業組合の設立が可能となった。

 このほか人的資源の活用としては、民間で行う社会貢献活動の健全な発展を促進する目的で特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動法人を設立することが可能となっている。

 

(設問1)

合同会社有限責任事業組合は共通点も多い。次の説明のうち、最も不適切なものはどれか

 

ア 合同会社有限責任事業組合の債権者は、当該会社または組合の営業時間内

  は、いつでも、作成した日から5年以内の計算書類または財務諸表の閲覧ま

  たは謄写の請求をすることが出来る。

イ 合同会社の常務に属する業務以外の業務は、定款に別段の定めがある場合を

  除き、社員の過半数をもって決定する。有限責任事業組合も重要な財産の処

  分および譲受けや多額の借財という業務執行を決定するには、総組合員の過

  半数の同意によらなければならない。

ウ 合同会社の設立手続きは、社員になろうとする者が定款を作成し、設立登記

  をする時までにその出資の全額を払い込みまたは給付を行う。有限責任事業

  組合では、各当事者が組合契約書を作成し、それぞれの出資に係る払い込み

  または給付の全部を履行する。いずれも、設立時に公証人の定款認証を受け

  る必要はない。

エ 合同会社は定款、有限責任事業組合は総組合員の同意により、その出資者の

  損益分配の割合を出資の価額に応じたものと異なる割合に定めることが出来

  る。

 

 

(設問2)

合同会社有限責任事業組合との相違点として、最も不適切なものはどれか

 

ア 合同会社では、合同会社名義で特許権の出願が出来る。これに対して有限責

  任事業組合では、有限責任事業組合名義で特許権の出願をすることは出来な

  い。

イ 合同会社は、合名会社、合資会社、株式会社に組織変更することが出来る。

  これに対して有限責任事業組合は、このような組織変更が出来ず、当該有限

  責任事業組合を解散し、新たに会社を設立しなければならない。

ウ 合同会社は社員1名でも設立出来る。これに対して有限責任事業組合は、2

  名以上の個人または法人の組合員が必要となる。ただし、組合員のうち過半

  数以上は、日本の居住者または内国法人でなければならない。

エ 合同会社は、配当額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合

  には、当該利益の配当をすることができない。有限責任事業組合の組合財産

  は、その分配の日における純資産額から組合員の出資の総額と300万円のい

  ずれか小さい額を控除した額を超えて分配することが出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

合同会社は日本版LLCとも呼ばれ、有限責任事業組合は日本版LLPとも呼ばれる。有限責任事業組合に法人格を持たせた感じが合同会社と言われています。お互いに似たとこもあるし、似てないところもあるということで問題にはなりやすいのかもしれませんね。

まず設問1です。

アの肢の内容は見たことがありません。でも本試験で出されても慌てないようにしたいものです。このように初見の論点はこれが正解になることは少ないというのが定説です。簡単に「債権者なんだから見てもよくない?」程度に思っているのがよさそうです。

イです。前段の合同会社の件は正しい記述です。ですが、後段の有限責任事業組合の件は、「総組合員の過半数の同意」が誤りです。組合は全員で契約していますから、「過半数」ではなく「総組合員全員の同意」が必要なんですね。だからこれが不適。

ウは、正しい記述だと分かりますが、「いずれも、設立時に公証人の定款認証を受ける必要はない」とありますね。そうすっと、有限責任事業組合にも定款があるってことですね。

エは、基本的な内容で正しい記述です。合同会社は定款で、有限責任事業組合は総組合員の同意により、損益の分配割合を変更することが出来る。

以上により、正解は、イ となる。

 

続いて、設問2をみていきましょう。

選択肢を検討します。

アは、特許出願について問われていますね。

合同会社は法人格を持ちます。ゆえに、合同会社名義で特許出願をすることが可能です。それに対して、有限責任事業組合の場合は法人格を持ちませんから、有限責任事業組合名義で出願することが出来ないのです。出願する場合には総組合員による共同出願になっちゃいますね。よって本肢は正しい記述です。

イは、組織変更に係る記述です。

株式会社と持分会社は相互に組織変更が可能です。ですから前段は正しい記述ですね。後段は有限責任事業組合ですが、有限責任事業組合には法人格がありません。ですので、法人格のない有限責任事業組合が法人格のある組織に変更することは出来ないのです。したがって本肢も正しい記述です。

ウは、合同会社は1名でも設立します。合名会社も1名でもオーケーですが、合資会社のみ2名以上の社員が必要です。これは有限帰任社員と無限責任者の2タイプが存在する会社組織だからです。一方で、有限責任事業組合は「組合」ですし、組合は「契約」で成立しますから当事者が2名以上いないと契約出来ません。したがって、ここまでの記述は正しい記述です。

また、組合は民法で決められた契約の一つであるから有限責任事業組合の構成員には日本人もしくは日本の法人が必要だとしています。

ゆえに、肢の中の「組合員のうち過半数以上は、日本の居住者または内国法人でなければならない」の記述で、「組合員のうち過半数以上」という記述が誤りです。よって、これが不適ですから正解になります。

エについては初見ですね。だいたいにおいて、こういう初見の肢は正解にならないことが多いです。

 

ところで、ウの肢にある「過半数以上」って何人のことなんでしょうね? すごく不思議に思いましたけど。