経営法務【平成25年度 第1問】
【平成25年度 第1問】
企業買収の手法に関する以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社の代表取締役甲氏との間で行われたものである。空欄AとBには、下記のa~cの記述のうちいずれかひとつが入る。空欄と記述の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。
甲 氏:「私の会社も、将来に向けて海外に展開していかなきゃいけないと考え
ています。そうしたところ、取引銀行から、私の会社の事業とシナ
ジー効果が見込めそうな外国会社の事業買収の案件の紹介を受けたの
で、検討を始めたのですが、どういった手法が良いのか考えがまとま
らなくて困っています。株式の譲受け、事業譲受け、吸収分割といっ
た手法が考えられると思うのですが、それぞれどのようなメリット・
デメリットがありますか。」
あなた:「そうですね。まず、株式の譲受けについては、特約で禁止されていな
い限り、買収対象企業が契約を締結している相手方取引先の同意を必
要としません。次に、事業譲受けの場合、( A )。それから、吸収
分割の場合( B )。というように、それぞれ、メリット・デメリッ
トがありますし、税務的な観点からの検討も必要になります。弁護士
や弁理士の先生の協力も得て検討するのがよいと思いますよ。」
甲 氏:「なるほど、考えを整理することが出来ました。」
a 相手方が外国会社だと行うことが出来ないと実務的には考えられているの
で、今回のケースでは採用出来ないと思います
b 財務諸表に計上されていない偶発債務を切り離すことが出来るメリットが
あります
c 取引の相手が消滅してしまうので、後日何か問題があっても取引の相手に
責任を追及出来ないというデメリットがあります
〔解答群〕
ア A:a B:c
イ A:b B:a
ウ A:b B:c
エ A:c B:a
第1問だけあってかなり細かいところを問うていますね。
まずはa~cをみてみましょうか。
aは「相手方が外国会社だと行うことが出来ないと実務的に考えられている」とありますね。合併や会社分割、株式交換、株式移転は日本の法律である会社法によって設立されたものと考えられており、相手方が外国会社だとできない組織再編行為とされています。
bは財務諸表に計上されない偶発債務を切り離すことが出来るのは事業譲受け(事業譲渡)だけです。ある会社の一部門を、他方の会社に譲渡すると当該部門は別会社になるわけですから債務を切り離すことが可能です。
cでは、取引の開いてが消滅してしまうとありますから、これは合併です。合併は消滅会社は文字通り消滅することになりますから債権債務は消滅します。
したがって、( A )にはbが、( B )にはaが当てはまる。
以上により、正解は、イ である。