経営法務【平成21年度 第1問】
【平成21年度 第1問】
簡易吸収合併(会社法第796条第3項)における吸収合併消滅会社、吸収合併存続会社がとるべき手続きについて、以下の①から④の点について、会社法の規定を比較した。この比較結果を記載した以下の記述のうち、誤った内容が含まれているものを下記の解答群から選べ。
①株主総会決議による合併契約の承認が必要か否か。
②自社の株主に対する通知・公告を要するか否か。
③自社の債権者に対する通知・公告を要するか否か。
④自社の新株予約権者に対する通知・公告を要するか否か。
吸収合併消滅会社 吸収合併存続会社
① 必要 不要
② 必要 必要
③ 必要 不要
④ 必要 不要
〔解答群〕
ア ①
イ ②
ウ ③
エ ④
これも第1問だし(笑)
簡易組織再編の出題ですが、存続会社の合併契約承認株主総会を不要にする組織再編ですね。事業の全部譲渡、吸収合併、株式交換、吸収分割、新設合併で適用されるものです。原則、対価として渡す株式が純資産額の5分の1以下なら承認株主総会が不要になるというものですが、新設合併のみ、新設される会社の総資産の5分の1以下なら承認株主総会が不要です。
また、当然に消滅する方は簡易的な手続きは許されていないですね。
選択肢を検討しましょう。
①は合併契約の承認ですが、消滅会社は当然に必要です。また存続会社は、本件は「簡易吸収合併」とありますから不要です。正しい記述だから、よって不適。
②は自社株主に対する通知・公告です。消滅会社は必要。存続会社は必要なのか不要なのかですが、合併に反対する株主がいるかもしれないので通知・公告は必要です。正しい記述ですね。よって不適。
③は債権者に対する通知・公告です。消滅会社は当然に必要。存続会社は不要となっています。吸収合併も分割合併も消滅会社は消滅してしまいますから消滅会社の債権者保護手続きは必要ですよね。対して存続会社の方は、合併ですから債権債務を承継することになります。そうすると、余計に負債が増える訳ですから存続会社の債権者としては一抹の不安が出てくる訳です。ゆえに簡易でも略式でも合併については債権者保護手続きが必要となるので、これが誤り。
④は、新株予約権者への通知・公告です。存続会社ですから新株予約権の行使先は不変ですね。ですから通知・公告は不要です。
したがって、正解は、③のウ である。