自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成20年度 第8問】

【平成20年度 第8問】
 次の自由貿易地域に関する文章を読んで、自由貿易地域が形成された場合の経済効果の説明として最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 下図は、自国と2つの外国(X国とY国)間の貿易取引を表し、自国の輸入競争財市場(たとえば農産物)を対象としている。農産物の国内需要曲線がDD、国内供給曲線がSSで描かれている。

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 いま、X国からの農産物の輸入価格がP0、Y国からの農産物の輸入価格がP1であるとする。このとき、自由貿易を想定すれば、農産物はより安価なX国から輸入され、Y国から輸入されることはない。また、両国からの輸入に関税(T円)を同じだけ賦課したとしても、(P1+T)が(P0+T)よりも大きいため、農産物は依然としてX国から輸入され続ける。ここで、(P0+T)をP2で示し、(P1+T)線は図示していない。
 ところが、X国からの輸入には関税を賦課したままで自国とY国が自由貿易地域を形成した場合、Y国に対する輸入関税は撤廃され、両国からの輸入価格はP2>P1になるから、農産物の輸入先はX国からY国に切り替わる。


〔解答群〕
ア △EIJと△HKLの和が□FGLIより大きければ、自由貿易地域を形成する
  ことによって自国の総余剰が増加する。
イ 自由貿易地域が形成されると、△BEFと△CGHの余剰が回復する。
ウ 自由貿易地域形成下の貿易利益は、自由貿易下の利益△ABCより大きい。
エ 貿易創造効果は四角EFGHに等しい。
オ 貿易転換効果は△EIJと△HKLの和に等しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごちゃごちゃ書かれていますが、
X国には関税が賦課されていて、価格=P2
X国の関税賦課前の価格=P0
Y国とは自由貿易地域を形成したので、価格=P1
なんですよね。だからこれの余剰分析をしなさい、ということだけなんです。
価格線が分かればあとは関税の扱いに気をつけるだけです。

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<X国>
関税賦課アリ価格=P2
関税賦課ナシ価格=P0
消費者余剰 → ①②
生産者余剰 → ③⑦⑪
政府の税収 → ⑤⑨
総余剰 → ①②③⑤⑦⑨⑪

<Y国>
自由貿易地域形成下での価格=P1

消費者余剰 → ①②③④⑤⑥
生産者余剰 → ⑦⑪
政府の税収 → ナシ
総余剰 → ①②③④⑤⑥⑦⑪

<その差>
Y国との貿易での余剰 → ①②③④⑤⑥⑦  ⑪
X国との貿易での余剰 → ①②③  ⑤  ⑦⑨⑪
その差 → ④⑥-⑨

つまり、△EIJと△HKLの和から□LIFGを引いた分の余剰が増加したことになりますね。

これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。
ア:△EIJは④です。△HKLは⑥です。□FGLIは⑨ですね。④+⑥>⑨ナラ余剰は増加するとあります。
そもそも余剰の変化は、④+⑥-⑨でしたから本肢の記述は正しいです。
イ:△BEFは⑥⑩です。△CGHは④⑧です。余剰が回復するのは④⑥から⑨うを引いたものですから不適。
ウ:貿易をしない、つまり閉鎖経済下での総余剰は△DASですから①③⑦⑪です。
自由貿易地域形成下での総余剰は①②③④⑤⑥⑦⑪ですから自由貿易地域形成によって②④⑤⑥の余剰が増加しています。②④⑤⑥は△AKJです。
また、関税ナシで貿易、つまりホントの自由貿易の場合、価格線はP0ですから閉鎖経済下と比べて貿易による利益は△ABCの部分です。
ゆえに、△AKJ<△ABCより、△AKJのほうが小さいですから不適です。

エ:輸入先がX国からY国に変わることで増加する余剰分を貿易創造効果といいますから、Y国になって増加したのは△FIJと△HKL(④と⑥)ですから□EFGHとする記述は不適。
オ:貿易転換効果は、Y国に輸入先を変えたことで失われる余剰分ですから□LIFGです。△EIJと△HKLとする記述は不適です。
以上により、正解は、ア である。