経営法務【平成25年度 第14問】
【平成25年度 第14問】
中小企業診断士であるあなたと、顧客であるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)運営会社の社長甲氏との以下の会話を読んで、下記の設問に答えよ。
甲 氏:「今度、当社のSNS事業を、乙社に譲渡することになりました。」
あなた:「やはり、最近外資系のSNSサイトや無料通話アプリに押され気味でし
たものね。」
甲 氏:「これからいろいろ面倒な手続きがあるみたいですけど。」
あなた:「そうですね。譲渡資産の帳簿価額が御社の総資産額の( A )であれ
ば、株主総会の( B )による事業譲渡契約の承認が必要ですし、従
業員の雇用引き継ぎについても、( C )が適用されるのは
( D )の場合ですから、事業譲渡では原則に戻って労働者から個別に
乙社への遺跡について同意を得る必要があります。」
甲 氏:「知的財産の権利関係はどうなりますか。当社は独自開発したSNSの
昨日について特許を複数取得しており、その一部はSNSの運用ソフト
ウエアやデザインの著作権とまとめてライセンスに出しているんです
が。」
あなた:「特許については登録をしなくてもライセンシーが乙社に通常実施権を
対抗出来ます。著作権については、登録制度はライセンシーから乙社
に対して利用券を対抗するための①[a.手段ではない/b.手段となる]
ので、ライセンシーが利用を継続するには②[c.利用権の登録/d.乙社
の許諾]が必要です。」
(設問1)
設問会話の中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア A:15%超 B:普通決議 C:労働契約法 D:会社整理
イ A:20%超 B:特別決議 C:労働契約法 D:合併
ウ A:20%超 B:特別決議 C:労働契約承継法 D:会社分割
エ A:30%超 B:普通決議 C:労働契約承継法 D:支配株主の変更
(設問2)
会話の中の下線部①と②について、正しい発言の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア ①:a ②:c
イ ①:a ②:d
ウ ①:b ②:c
エ ①:b ②:d
与件には事業譲渡とありますね。
設問1からいきましょう。
「譲渡資産の帳簿価額が総資産額の」とありますから簡易再編なのかどうかもチェックする必要がありそうです。簡易再編の場合には分割会社の場合には総資産額の5分の1を下回れば承認株主総会は不要となりました。よって空欄Aには5分の1ですから20%超が当てはまりますね。「超」となっているのは、空欄Bから後に「事業譲渡契約の承認が必要」とあるからです。
この承認株主総会は特別決議ですから正解はイまたはウになりそうです。
事業譲渡の場合は労働契約承継法の適用はありません。適用があるのは会社分割です。
以上により、正解は、ウ である。
続いては設問2。ライセンス契約。
特許については通常実施権の登録は不要。特許法では第99条に、通常実施権が伏された後に、特許権者もしくは専用実施権者が変更になっても通常実施権を有するとあり、事業譲渡によりライセンサーが代わったとしても通常実施権を行使することが可能です。
一方、著作権の登録制度は対抗手段として存在している訳ではないですね。創作日の確定とか著作隣接権の設定などに関する事柄で登録は出来ますが、著作権法により登録出来る要件が定められています。したがって、著作権の利用には登録制度はないということになります。
よって、著作権の登録制度は利用権の対抗手段ではないし、利用を継続するためには乙社の許諾が必要になります。
以上により、正解は、イ になる。