自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成19年度 第16問】

【平成19年度 第16問】

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 

 製造業を営んでいる中堅非上場企業のX株式会社(以下「X社」という。)の社長である甲氏は、製品市場の競合の激化から事業の採算が悪化しており、これを打開するために何らかの手だてが必要だと感じていた。そのとき、ライバルの非上場企業であるY株式会社(以下「Y社」という。)から、お互いの会社を合併して事業を共同で行わないかとの打診を受けた。

 それを聞いた甲氏は、Y社と合併することのメリットとデメリットを考えた。確かにY社と合併すれば、取り扱い製品のシェアが拡大することから代理店に対する発言力が増すとともに、生産量が増加するため原料の仕入れ先に対しても有利な調達が可能となり利益率の改善が期待出来る。

 しかし、合併となると、自身の経営権の問題や従業員の雇用の問題など解決しなければならない課題が多いとも感じていた。

 甲氏は会社の顧問であるコンサルタントの乙氏に助言を求めた。

 乙氏のアドバイスによると、事業を共同で行うことのメリットは十分にあるが、そのためには何も合併を選択しなければならない訳ではなく、業務提携契約でも可能である。また、事業を共同で行うことを重視するのであれば、合併に代えて株式移転によるいわゆる( A )を設立する方法もあるとのことであった。株式移転とは、一または二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに新設する株式会社に取得させる企業再編の手法である。この方法によれば、X社は( A )の傘下の子会社として独立して存続するため、労働条件や人事ポストの調整、商号の統一、企業文化の融合などの合併における諸問題を当面回避しながら、グループ会社のシナジーを追及出来る。

 この( A )の設立は、平成9年の独占禁止法の改正以後、商法及び会社法の整備により上場企業でもしばしば行われている企業の統合手法の一つである。

 

 

(設問1)

文中の空欄Aに入る最も適切なものはどれか。

 

ア 合同会社  イ 合名会社  ウ 持株会社  エ 持分会社

 

 

(設問2)

文中の下線部の株式移転に関する説明として、最も不適切なものはどれか

なお、以下の説明文中の完全親会社および完全子会社は、それぞれ会社法第773条第1項第1号および第5号に定義されている株式移転設立完全親会社および株式移転完全子会社をいう。

 

ア 二以上の株式会社が共同して株式移転を行うためには、当該株式会社は株式

  移転計画を共同して作成しなければならない。

イ 株式移転計画には、株式移転により設立する完全親会社の目的、商号、本店

  の所在地、発行可能株式総数、完全親会社の設立時取締役の氏名等を定めな

  ければならない。

ウ 株式移転計画は完全子会社の株主総会の特別決議による承認が必要である。

  この場合に、完全子会社となる会社の規模が小さくても簡易な手続きは認め

  られていない。

エ 完全親会社は、完全子会社の株式移転計画の承認が行われた日に、その発行

  済株式の全部を取得する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時期流行った持株会社について問われている。いわゆる「ホールディングカンパニー」のことだ。

株式移転や株式交換は完全親子会社を作る再編手法だ。一方で吸収分割は必ずしも親子関係が出来る訳ではない。また、株式移転が出来るのは株式会社だけであり、株式交換では、合同会社が親会社になれる

設問1は、ウ が正解。

設問2をみてみよう。

株式移転は二以上の株式会社でないと始まらない。株式移転も株式交換株主総会特別決議が必要であり、株式移転の場合には簡易再編は出来ない。一方で、株式交換は簡易的な手続きが可能だ。株式交換では、その効力の発生は契約締結時であり、株式移転の効力の発生は新会社設立日になる。

以上により、アは正しい記述だし、イは株式移転計画にあらかじめ定めなければならない内容を記されており、株式移転は株主総会特別決議が必要で簡易的な手続きは不可としているウも正しく、効力の発生日を株式移転計画の承認日としているエが不適切な記述。

よって、正解は、エ である。