自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成23年度 第11問】

【平成23年度 第11問】
 下図は、2国モデルに基づく国際取引を表したものである。
 いま、農産物に関する自国の輸入需要曲線をD0D1、外国の輸出供給曲線をS0S1とする。自由貿易下の均衡価格はP0、均衡量はQ0である。
 ところで、自国が輸入財1単位に対してT円の関税を賦課した場合、外国の輸出供給曲線はS0S1からS2S3にシフトし、輸入価格はP0からP2に下落し、反対に国内価格はP1に上昇する。また、均衡量はQ1に減少する。

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この図の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 自国が輸入関税を課した場合、外国の経済余剰は四角形S2FGS0で示される。
b 自国が輸入関税を課した場合、世界全体で三角形EFGの経済余剰が失われ
 る。
c 自国では、関税収入が四角形P1FGP2に相当し、関税賦課時の経済余剰が自
 由貿易時の経済余剰を上回ることがある。
d 自由貿易の場合、自国の経済余剰は三角形S0EP0、外国の経済余剰は三角
 形D0EP0で示される。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と d   ウ b と c   エ b と d

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら本問は注意が必要なようです。
自国の輸入需要曲線と外国の輸出供給曲線が描かれています。
今までと異なるところは、今までは自国の需要曲線と供給曲線が描かれ、価格のラインが上下することがポイントでしたが、本問は自国は需要曲線、外国が供給曲線となっているため、価格のラインの見方に注意する必要があります。

もともとの均衡点は点Eですから、自国が欲する量と外国が輸出したいと思っている量が均衡しています。この場合は自国の輸入価格と外国の輸出価格が等しいということです。
問題は、価格ラインです。
関税を賦課すると、輸出側(外国)の輸出価格が上昇しますから輸出供給曲線は左にシフトします(S2S3)。輸入需要曲線は不変ですから均衡点は点Fに移ります。
このときの均衡量はQ1、価格はP1です。なお、P1は「国内価格」と与件にありますね。
国内価格? 国内価格は上昇?
また、均衡量=Q1のとき、輸入価格はP2です。
輸入価格?

もともとの均衡点は点Eですから国内価格はP0→P1に上昇します。
点Eは輸出価格も輸入価格もP0です。関税が賦課されて輸入価格がP0→P2に下落するということは、賦課されたはずの関税額が直接的に図示されていないのでここから関税額を導かないといけないことがわかります。ここが今までの問題と異なる部分です。ま、でもそんなに難しくないですけど。

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国内価格=P1で、輸入価格=P2ですから、その差P1-P2が関税額を表しているわけですね。
輸入価格に関税が加わったため、国内価格は関税の分が上乗せされて価格が上昇すると考えます。点Fはシフト後の輸出供給曲線と需要曲線の交点であり、均衡する点ですから需要量はQ1です。ゆえに国内の消費者が需要する価格が国内価格P1であり、その需要量のときの輸入価格はP2(点G)ですからその差が関税額です。

ここまで確認できればあとは余剰分析のみです。

 

もともとの均衡点は点Eですから、f:id:sk6960:20160425113455j:plain
価格ライン → P0
消費者余剰 → ①②③④
生産者余剰 → ⑤⑥⑦⑧⑨
総余剰 → ①②③④+⑤⑥⑦⑧⑨ ・・・(a) です。

関税が賦課された場合、
消費者余剰は、国内価格が価格ラインだから
価格ライン → P1
消費者余剰 → ①

生産者(輸出側)の余剰は、
輸出価格がP2だから
生産者余剰 → ⑧⑨
関税額は、P1-P2だから、
政府の税収 → ②③⑤⑥(または③⑥⑨)
総余剰 → ①+⑧⑨+②③⑤⑥ ・・・(b)  です。

余剰比較は
(b)関税賦課後  ①②③  ⑤⑥  ⑧⑨
(a)関税賦課後  ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨  ですから
④⑦の減少です。

これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。
a:外国とは輸出側です。輸出側は生産者余剰ですから△P2GS0です。
四角形S2FGS0は政府の税収を示しています。ゆえに不適。
b:関税を賦課した場合の余剰の損失は④⑦でした。④⑦は△EFGですね。よって本肢は正しい記述。
c:自国の関税収入は四角形P1FGP2(図中の②③⑤⑥)です。だから前段は正しい記述。後段の関税賦課時の余剰が自由貿易時の余剰を上回ることがあるというのが微妙です。一旦保留します。
d:△S0EP0(図中の⑤⑥⑦⑧⑨)は関税賦課前の生産者(外国の)余剰です
△D0EP0(図中の①②③④)は関税賦課前の消費者(自国の)余剰です。ゆえに本肢は明らかに誤りであることが分かります。
以上により、b と c が正しい記述だと分かるので正解は、ウ である。