経営法務【平成22年度 第3問】
【平成22年度 第3問】
破産手続き、民事再生手続き及び会社更生手続きについて述べた次の文章について、下線部①~④の説明のうち最も適切なものを下記の解答群から選べ。
破産手続き、民事再生手続き及び会社更生手続きの違いとしては、第一に、手続きが目指す結果の違いが挙げられる。すなわち、①破産手続きは、清算型と呼ばれ、法人・自然人を問わず破産者が破産手続き開始決定時に保有する全ての資産を金銭に換価して配当に充てることになるが、民事再生手続き、会社更生手続きは、再建型と呼ばれ、それぞれの手続きに従って、債務者の再建を図りながら弁済を行うこととなる。
第二に、対象となる人の違いが挙げられる。②破産手続き、民事再生手続きでは法人・自然人を問わず全ての人に適用されるが、会社更生手続きは、会社法上に規定がある会社のみに適用され、それ以外の法人・自然人には適用されない。
第三に、手続きの主体の違いが挙げられる。③破産手続き、会社更生手続きでは、管財人が選任され、管財人が資産の管理処分等を行うが、民事再生手続きでは、管財人という制度が法律上存在しないため、債務者自身が主体となって手続きを遂行することとなっている。
第四に、抵当権等の担保権に関する基本的な取り扱いの違いが挙げられる。④破産手続き、民事再生手続きは、担保権は別除権となり、担保権者は手続き外で担保権を実行することが可能であるが、会社更生手続きにおいては、担保権は更生担保権となり、手続き外での実行は禁止される。
〔解答群〕
ア 下線部①
イ 下線部②
ウ 下線部③
エ 下線部④
過去問タテ解きも破産法制に突入しました。
破産法制も大学時代に破産法という講義で経験がありますが、それ以上でもそれ以下でもないです。
さて本問は下線部①~④の間違い探しということになりますが、一つずつ検討していくしかなさそうです。ではみてみましょう。
まず①。破産手続きは清算型ですし、民事再生、会社更生手続きは再建型です。破産手続きは、法人・自然人を問わないのも正しい記述です。ただ、破産者が保有する全ての資産を金銭に換価するという記述が誤り。破産者には自由財産と呼ばれる、換価されない財産をもつことが破産法で認められている。だって無一文になってしまっては、何のための破産法だか分かりませんもんね。ゆえに①は不適です。
続いて②です。
破産手続き、民事再生手続きは法人・自然人問わず適用されるのは正しい。会社更生手続きは会社法に規定がある会社のみに適用という記述が誤り。会社法に規定のある会社の中でも、会社更生手続きは株式会社のみに適用される。ゆえに不適。
次いで③。
破産手続き、会社更生手続きには管財人制度があることは正しい。しかし、民事再生手続きにも管財人制度が存在する。原則、民事再生では再生債務者に業務遂行権と財産管理権があるが、裁判所が必要と認めた場合、管財人を選任することが可能。ゆえに不適。
最後の④は、破産手続き、民事再生手続きでは担保権は別除権なのは正しい。しかし会社更生手続きにおいては担保権は更生担保権となり、担保権は拘束されてしまう。ゆえに④は正しい記述。
また、破産手続き、民事再生手続きは別除権があり、会社更生手続きには別除権はないが、いずれも担保権消滅制度は認められている。
以上により、正解は、エ である。