自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成18年度 第8問】

【平成18年度 第8問】

ケーキ、チョコレートの専門店Xを経営するパティシエ(菓子作り専門の職人)甲は、生クリームとチョコレートとフルーツを用い、スポンジケーキの上にデコレートして『女性の憧れ』をイメージするモチーフを創作し、図案化した。このモチーフをチョコレートケーキに具現化するには、機械を用いて製作できるものではなく、人手によらなければできないものであるため、パティシエ甲は、この自ら創作したモチーフに基づいてチョコレートケーキ a を1つ1つすべて手作りで製作し、バレンタインデー(2月14日)に販売することにした。

そこで、パティシエ甲は、チョコレートケーキ a がすばらしいデザインに仕上がっており、このまま販売すると他のパティシエに模倣される恐れがあるので、自分が職人技で作りあげたチョコレートケーキ a のデザインを何とか保護したいと考えた。

そこで、あなたは、パティシエ甲から、このデザインの保護はどのようにして受けられるのか相談を受けた。この相談に対するあなたのアドバイスとして、最も適切なものはどれか。

 

ア チョコレートケーキaのデザインは、『女性の憧れ』をイメージするモチーフ

  として図案化したものの著作権に該当し、著作権法で保護を受けることが出

  来ます。

イ チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が手作りによって製作した

  チョコレートケーキa(物品)の形状に特徴を有するものですから、物品の形

  状の意匠に該当し、意匠法で保護を受けることが出来ます。

ウ チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が独自の製作技術を駆使し

  て考案したもので独創性を有しており、物品(チョコレートケーキa)の形状

  に係る考案に該当し、実用新案法で保護を受けることが出来ます。

エ チョコレートケーキaのデザインは、パティシエ甲が独特の手順(方法)に基

  づいて製作することによって完成するものですから、パティシエ甲の独特の

  製作手順が物(チョコレートケーキa)を製造する方法の発明に該当し、特許

  法で保護を受けることが出来ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題文が長い・・・(泣)

まぁまずは与件を整理しますか。

このチョコレートケーキaは手作りで、機械で作ることが出来ないとありますね。

そうすると工業上の利用可能性はないものとみなされます。ゆえに本件は意匠法には該当しないと分かります。パティシエ甲の職人技は独創的には違いないけれど、この職人技が技術的思想かどうかを論ずることになると思います。

特許法で保護されるなら、自然法則を利用した技術的思想のうち高度な発明である必要があるし、

実用新案法で保護されるなら自然法則を利用した技術的思想の創作に基づく物品の形状、構造または組み合わせといった考案である必要があるし、

著作権法で保護されるなら思想または感情を創作的に表現したものでなくてはならない。

問題は、この『女性の憧れ』といったモチーフが特許法でいう「技術的思想」に該当するのか、実用新案法でいう「技術的思想を考案した」ものなのか、著作権法でいう「表現」なのかを見極める必要があるわけだ。

選択肢の検討に入ろう。

アは、著作権法で保護されるとしている。『女性の憧れ』はチョコレートケーキaのデザインであり、創作的に表現したものであるといえる。ゆえに著作権法の保護対象となり、本肢は正しい記述。

イは意匠権。機械で作れないので不適。

ウは実用新案権法で保護とある。チョコレートケーキaのデザインが自然法則を利用した技術的思想であれば保護対象となりうるが、『女性の憧れ』をモチーフにしたデザインは技術的思想とはいえないので不適。

エは、特許法で保護とあるが、特許法で保護される技術的思想は客観的な再現性が求められるものだと考えられる。パティシエ甲にしか作れないという技術は伝承可能なものではないため、特許法での保護は受けられないと考えられる。

以上により、正解は、ア である。