自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成17年度 第2問】

【平成17年度 第2問】
 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 有効需要の原理に基づき、総需要と総供給との関係から均衡GDPの決定について考えてみよう。
 まず、総需要ADが消費支出Cと投資支出 I から構成されるモデルを想定し、消費支出と投資支出がそれぞれ、
 C=C0+cY
 I=I0
として与えられるとする。ここで、C0:独立消費、c:限界消費性向、Y:国民所得あるいはGDP、I0:独立投資である。
 いま、下図のように、縦軸に総需要、横軸に国内所得(GDP)を表すとすれば、①所得水準とそれに対応して計画された総需要との関係はADとして描かれる。また、45度線は総需要=総供給(国内所得)の関係を示している。

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 このとき、均衡GDPはY*の水準に決まる。仮に、②国内所得がY1の水準にあれば、総供給>総需要の関係にあり、生産物市場には超過供給が発生する。なお、均衡GDPは限界消費性向が1より小さい場合に安定的になる。

 

(設問1)
 文中の下線部①について、AD線の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a AD線の傾きは限界消費性向に等しい。
b AD線の縦軸の切片は、(C0-I0)に等しい。
c 限界貯蓄性向が大きいほど、AD線の勾配はより激しくなる。
d 独立消費が増加すれば、AD線は下方にシフトする。
e 独立消費が増加すれば、AD線は上方にシフトする。

〔解答群〕
ア a と c   イ a と e   ウ b と d   エ b と e   オ c と d 

 

(設問2)
 文中の下線部②について、超過供給の調整メカニズムの説明として最も適切なものはどれか。

ア 有効需要の原理によれば、価格の下落を通じて超過供給が解消され、均衡
  GDPが実現する。
イ 有効需要の原理によれば、価格の上昇を通じて超過供給が解消され、均衡
  GDPが実現する。 
ウ 有効需要の原理によれば、雇用量の増加を通じて超過供給が解消され、均衡
  GDPが実現する。
エ 有効需要の原理によれば、生産の拡大を通じて超過供給が解消され、均衡
  GDPが実現する。
オ 有効需要の原理によれば、生産の縮小を通じて超過供給が解消され、均衡
  GDPが実現する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有効需要と45度線分析に関する出題ですね。有効需要は「需要の大きさが国民所得の大きさを決める」という原理ですが、サミュエルソンという人が45度線を使って説明しました。
45度線は総供給線Ysであり、Ys=GDPだとします。企業は供給するために生産するのですから、YsはGDPを意味するわけです。
一方、AD線は総需要線であり、YDで表してみます。Ysは企業が供給するために生産するのに対して、YDは企業に対して何を注文するかを表します。
理屈はともかく、ここでは、YD=C+I+G+X-M を覚えてしまう必要がありそうです。
本問では、「総需要ADが消費支出Cと投資支出I から構成されるモデルを想定」とありますので、言い換えると、「総需要YDが消費支出Cと投資支出I から構成」といえますし、消費と投資は考えないでよいみたいですから、
総需要AD(=YD)=C+I となりそうです。
※政府支出と海外は考えないモデルだということです。

さらに与件では、C=C0+cY、I=I0 とあります。C0は独立消費、I0は独立投資で所与ですから一定だとみなします。
ゆえに、総需要AD(=YD)=C0+cY+I0 と表すことができますね。

なお、本問では税金も考えていません。貯蓄についても考えていません。
また、投資は一定だとしましたが、投資量は利子率によって変化すると考えますが、その利子率は貨幣市場で決まります。45度線分析では財市場の分析のみですから貨幣市場で決まる利子率は一定だとみなします。

そこで、設問1をみてみましょう。
AD(=YD)=C0+cY+I0 ですから、AD=cY+(C0+I0) と書き直すことが出来ます。傾きは「c」ですから限界消費性向、縦軸切片は(C0+I0)です。
選択肢を検討します。

aはAD線の傾きは「c」ですから限界消費性向に等しいですね。ゆえに正しい。
bは縦軸切片は(C0+I0)です。ゆえにダメ。
cは「限界消費性向」ではなく、「限界貯蓄性向」と書かれています。限界消費性向が大きいほどAD線の勾配は急になりますが、限界貯蓄性向が大きくなるほどAD線の勾配は緩やかになります。だって、限界消費性向=c であり、限界貯蓄性向=1-c ですからね。
dは独立消費C0が増加すると縦軸切片が上方シフトします。ゆえにダメ。
eは正しいです。
よって、正解は、イ である。

設問2はカンタンです。超過供給が生じていますから、供給量を抑える必要があります。45度線分析では賃金の下方硬直性、貨幣市場で起案る利子率、労働市場で決まる物価は一定だと仮定します。調整メカニズムは生産量で行うわけです。
まぁ、そもそも、
ア:価格が下落すると需要が増えますが、価格の調整メカニズムは古典派の考えです。それに物価は一定とする仮定に反してしまいます。
イ:アと同じですね。
ウ:雇用量が増えると供給量が増えますから超過供給は解消されません。
エ:生産量を増やすとますます超過供給です。
ゆえに、正解は、オ である。