自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成26年度 第4問】

【平成26年度 第4問】
 財市場における総需要ADは、消費C、投資I、政府支出Gの合計であるとする。所得をY、限界消費性向をc、所得がゼロでも必要な最低限の定額の消費額をc0とすれば、消費はC=c0+cYと書き表すことができる。総供給ASと所得が等しいとすれば、これらの関係から(1)式と(2)式が得られ、下図のように示すことができる。

f:id:sk6960:20160426115735j:plain
 いま、上記の標準的なモデルに追加して、所得Yに対して定率tで課税する線形の租税関数tYを考えると、消費関数はC=c0+c(Y-tY)となり(3)式を得る。
 また、企業投資が(3)式の I から外生的に増加してI’になった場合を(4)で表記する。
 このとき下記の設問に答えよ。

 

(設問1)
 この図の中に(4)式を描き、(2)式と比較した場合の記述として最も適切なものはどれか。

ア (2)式と(4)式の傾きは等しく、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式よりも
  下になる。
イ (4)式の傾きは(2)式よりも急になり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式
  よりも上になる。 
ウ (4)式の傾きは(2)式よりも急になり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式
  よりも下になる。
エ (4)式の傾きは(2)よりも緩くなり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式より
  も上になる。
オ (4)式の傾きは(2)式よりも緩くなり、(4)式の縦軸の切片の位置は(2)式
  よりも下になる。

 

(設問2)
 他を一定として、企業投資がIからI’へ1.8だけ増加した形で(3)式から(4)式への変化が発生したものとする。このとき、所得Yの変化として最も適切なものはどれか。ただし、限界消費性向cは0.8、税率tは0.2とする。

ア Yは1増加する。
イ Yは1.8増加する。
ウ Yは5増加する。
エ Yは9増加する。
オ Yは増加しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たぶん経済に苦手意識がある人にはとっつきにくい問題ではないかと思います。著者も最初にこの問題をみたときはそうでした。第一声が「なんだこりゃ?」ですもん。

問題を紐解いていきましょう。
まず最初の仮定から、AD=C+I+G であることが分かります。
次に消費は、独立消費c0を考慮して、C=c0+cY で表すとあります。この消費関数をADの式に代入したものが(2)式です。
ちなみに(1)式は、総供給=GDPという意味合いの式です。

次に、消費関数C=c0+cYについて、定率税tYのモデルを考えます。所得に対して税率tの税金が課せられますから、(Y-tY)が可処分所得になります。
しがたって、AD=c0+c(Y-tY)+I+G となり、Yをくくって、
AD=c0+c(1-t)Y+I+G を(3)式としました。

最後に、企業投資が外生的に増加してI’になったとあります。
この「外生的」というのは、「この議論の外で決められてしまう」という意味で、どんだけ増加するのかが分かりませんから、“一定数の増加”だとみなします。

あとは上述した内容をもとに(2)(3)(4)間の比較を行います。

(2) AD=c0+cY+I+G
(3) AD=c0+c(1-t)Y+I+G
(4) AD=c0+c(1-t)Y+I’+G  という各式について、以下のように変形してみます。
(2) AD=cY+c0+I+G
(3) AD=c(1-t)Y+c0+I+G
(4) AD=c(1-t)Y+c0+I’+G  としました。
これらは、Yの係数部分が格式の傾きを、Yの項以降が縦軸切片を表します。

したがって、(2)(3)の比較においては傾きつまりYの係数部分は t の分が減りますから(3)の傾きは(2)より緩くなります。縦軸切片は不変です。なお、(3)(4)の傾きは同じですね。
さらに、(3)(4)の比較においては傾きは変わらずですが、(4)の投資は外生的に増加していますから縦軸切片が上方にシフトします。

これらをふまえて設問1の選択肢を検討しましょう。
ア:(2)(4)の傾きは等しくないので不適。(4)の方が切片は上になります。
イ:(4)は(2)よりも傾きは緩やかです。だから不適。
ウ:イと同じです。切片は(4)の方が上にきます。
エ:(4)は(2)よりも傾きは緩やかです。切片は(4)の方が上ですのでこれが正しい記述ですね。

オ:(4)の方が傾きは緩やかです。後段の切片の記述が誤りで不適。
以上により、正解は、エ である。

続いて設問2にいきましょう。
条件を確認します。
限界消費性向c=0.8  税率t=0.2  ですね。I が I’へ1.8だけ増加し(4)式に変化したとあります。そのときの所得Yの変化を問うています。つまり、投資が1.8増加すると国民所得Yがどんだけ増えるかを問うているという、投資乗数の問題なんですね。条件に合うように数値を代入して投資乗数を求めます。
AD=0.8×(1-0.2)Y+c0+I+G
AD=AS=Y なので、Y=0.8×(1-0.2)Y+c0+I+G
Y=0.64Y+c0+I+G
0.36Y=c0+I+G
Y=1/0.36(c0+I+G)
ゆえに、投資乗数は1/0.36と分かりました。I’=1.8を代入すると、Y=5 となる。
したがって、ウ が正解である。