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自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成19年度 第4問】

診断士/経済学

【平成19年度 第4問】
 次の均衡GDPの決定に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 総需要ADが消費C、投資 I 、政府支出G、経常収支(輸出X-輸入M)から構成される経済モデルを想定する。すなわち、
  AD=C+I+G+X-M
である。
 ここで、消費関数と輸入関数はそれぞれ、
  C=C0+c(Y-T)
  M=M0+mY
として与えられ、YはGDPまたは国民所得、C0は独立消費、cは限界消費性向、Tは租税収入、M0は独立輸入、mは限界輸入性向である。なお、租税収入、投資支出、政府支出、輸出はおのおのT=T0、I=I0、G=G0、X=X0とする。
 他方、所得の処分は、
  Y=C+S+T
として示される。ここでSは貯蓄である。
 このとき、下図のように、①X-M線と(S+T)-(I+G)線の交点Eにおいて生産物市場が均衡し、均衡GDPはY0の水準に決定される。また、②X-M線または(S+T)-(I+G)線がシフトすれば、それによって均衡GDPや経常収支の水準も変化する

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(設問1)
 文中の下線部①について、最も適切な記述の組み合わせを下記の解答群から選べ。

a (S+T)-(I+G)線の縦軸の切片は、投資の水準が大きいほど上方に位置す
 る。
b X-M線の縦軸の切片は、輸出と独立輸入の大きさに依存する。
c 均衡点Eでは、OAに相当する経常収支の赤字が生じている。
d 限界消費性向cが大きいほど、(S+T)-(I+G)線は、より緩やかな形状で描かれる。
e 限界輸入性向mが小さいほど、X-M線は、より急な形状で描かれる。


〔解答群〕
ア a と c   イ a と e   ウ b と d   エ b と e   オ c と d 

 

(設問2)
 文中の下線部②について、最も適切な記述の組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 減税は(S+T)-(I+G)線を上方にシフトさせる。
b 政府支出の増加は(S+T)-(I+G)線を下方にシフトさせ、均衡GDPの増加と経常収支の悪化を引き起こす。
c 投資の増加は(S+T)-(I+G)線を下方にシフトさせ、均衡GDPの増加と経常収支の改善を引き起こす。
d 独立輸入の増加はX-M線を下方にシフトさせ、均衡GDPの増加と経常収支の
 悪化を引き起こす。
e 輸出の増加はX-M線を上方にシフトさせ、均衡GDPの増加と経常収支の改善
 を引き起こす。

〔解答群〕
ア a と c   イ a と e   ウ b と d   エ b と e   オ c と d 

 

(設問3)
 経常収支に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a アブソープション・アプローチでは、経常収支はGDP国内需要内需)の差額
 に等しい。
b 経常収支が黒字の場合、財政収支が赤字であれば、民間の貯蓄と投資の差額
 は必ずプラスになる。
c Jカーブ効果が発生しない場合、為替レートの増価は経常収支を改善させる。
d Jカーブ効果が発生する場合、経常収支は為替レートの減価によって一時的に
 改善するが、時間の経過とともに悪化する。

〔解答群〕
ア a と b   イ a と c   ウ a と d   エ b と c   オ b と d

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成19年度というのはどの科目も凄みのある出題が多いですねぇ。こんなの出されたびっくりするし、60分の試験時間内で解けるか分かりません。
というのはスピテキにもスピ問にも載っていないんですね。ということは捨ててもよい問題という扱いかもしれませんし、枝問3つありますが、そのうち1~2問取れればいいみたいな位置づけなのかもしれません。
なんにせよ、全くの初見では太刀打ち出来ないような出題が多いのが平成19年度の特徴だと感じています。

さて、本問は45度線分析を変形したISモデルについての出題です。
45度線分析は財市場のみを分析対象としますから、貨幣市場で決まる利子率、労働市場で決まる賃金は一定だと仮定します。
また、本問は政府、海外を考えるケースですから政府支出G、租税収入T、輸出X、輸入Mまで考慮することにします。

財市場では、Ys=YdとなるようにGDP:Yが決まります。
いま、Ys=Y、Yd=C+I+G+X-M だとすると、Ys=Ydより、
Y=C+I+G+X-M ・・・① が成り立ちます。
また、国民所得YはC(消費)、S(貯蓄)、T(租税)になりますから、
Y=C+S+T ・・・② が成り立ちます。
①②より、C+I+G+X-M=C+S+T ですから、
I+G+X-M=S+T となります。さらに変形して、
X-M=(S+T)-(I+G) ・・・③ が成り立ちます。
これは、X-M(輸出-輸入)は、(S+T)つまり貯蓄+租税収入から(I+G)つまり投資支出と政府支出の和を引いたものに等しい、ということを意味しています。
X-Mは経常収支(貿易収支)ですね。
(S+T)-(I+G) はさらに変形すると、(S-I)+(T-G) と変形できますが、このS-I は国内貯蓄から投資支出を引いたものであり、T-G は租税収入から政府支出を引いたもの、すなわち財政収支です。

さて、本問は「租税収入、投資支出、政府支出、輸出はおのおのT=T0、I=I0、G=G0、X=X0とする」とあることからそれぞれ所与であることが分かります。それぞれ“一定”だと仮定するわけです。

ですから③式について、T=T0、I=I0、G=G0、X=X0で“一定”だとみなしますから、
X-M は輸出Mに依存することになります。
輸入関数M=M0+mY が与えられていますから、X-M線は、X-(M0+mY)より、-mY+X-M0 と変形できます。すなわちX-M線の傾きは-mであることが分かります。
S+T は、T=T0で一定なので、国内貯蓄SがプラスならばS+Tも常にプラスです。
また、I+G は I もGもそれぞれ一定なので I+Gも常に一定です。
したがって、(S+T)-(I+G)線はSの大きさに依存することになります。

ここで、(S+T)-(I+G)線の傾きについて考えてみます。
(S+T)-(I+G)線の傾きはケインズの貯蓄関数を利用することで導出することができます。
いま、C=C0+c(Y-T)、Y=C+S+T だとすると、
Y=C+S+T は、S=Y-C-T と変形できます。これにC=C0+c(Y-T)を代入すると、S=Y-{C0+c(Y-T)}-T です。これを整理すると、
S=Y-(C0+cY-cT)-T → S=Y-C0-cY+cT-T →
S=Y-cY-C0+cT-T → S=(1-c)Y-C0+cT-T 
両辺に T を加えると、S+T=(1-c)Y-C0+cT となります。
つまり、S+T 線は傾きが(1-c)つまり限界貯蓄性向の曲線であることが導出できました。

(S+T)-(I+G)線について、(I+G)は一定でしたから、(S+T)-(I+G)線もやはり限界貯蓄性向(1-c)が傾きになります。

冷静に考えれば、こんなの短時間で導出するのは難しいですよね。だから19年度の問題は凄みがあると思います。
それでは、設問1から見ていきましょう。
a:(S+T)-(I+G)線の傾きは、上述したとおり、(1-c)です。つまり限界貯蓄性向が傾きを決めます。また、縦軸切片は、S+T=(1-c)Y-C0+cT の式の両辺に、-(I+G)を加えてあげます。そうすると、
(S+T)-(I+G)=(1-c)Y-C0+cT-(I+G) ですね。もう少し整理すると、
(S+T)-(I+G)=(1-c)Y-(C0-cT+I+G) と変形できます。
ですから、投資の水準を大きくすると、(C0-cT+I+G)は負ですから、切片は下方にシフトします。ゆえに「投資の水準が大きいほど上方に位置」が誤りです。
b:X-M線は、-mY+X-M0 でした。縦軸切片は+X-M0 ですから輸出Xと独立輸入M0に依存することになります。ゆえに正しい記述です。
c:経常収支はX-Mです。均衡点Eは横軸よりも上方にありますからOA分の黒字だということができます。したがって、不適。

d:(S+T)-(I+G)線は、(S+T)-(I+G)=(1-c)Y-(C0-cT+I+G)でしたから、限界消費性向が大きいほど限界貯蓄性向は小さくなります。(S+T)-(I+G)線の傾きは限界貯蓄性向ですから限界貯蓄性向が小さくなるほど傾きは緩やかになります。ゆえに正しい記述だとわかります。
e:X-M線は、-mY+X-M0 でした。限界輸入性向mが小さいほど傾きが緩やかになりますので本肢は不適です。
以上により、 b と d が正しいので、正解は、ウ である。

続いて設問2です。
a:減税は租税収入を減らします。つまり、Tが減少します。フツーに考えると、減税は財政出動ですからGDPは増加するのではないかと見当が付きますよね。つまり下方シフトです。下方シフトすれば均衡点が右にシフトするのでGDPは増えます。
一方で、先ほどの式で考えてみましょう。
(S+T)-(I+G)=(1-c)Y-(C0-cT+I+G) ですから減税はcTの値を減少させます。C0、I、Gは所与ですからTが減少すればcTも減少します。したがって、下方シフトします。ゆえに「上方」にシフトするとする本肢の記述は不適です。

b:(S+T)-(I+G)線は、(S+T)-(I+G)=(1-c)Y-(C0-cT+I+G) です。政府支出の増加はGが増えますから縦軸切片は下方シフトします。フツー、政府支出増加はGDPが増えるよね、と見当をつけるのもアリです。下方シフトの結果、GDPは増加し、均衡点はEよりも右にシフトします。均衡点Eにおける経常収支OAよりも小さくなるので経常収支は悪化ということができます。ゆえに本肢は正しい記述です。
c:投資の増加は(S+T)-(I+G)線の下方シフトです。投資が増えれば景気がよくなるな、だからGDPも増えるなと見当を付けます。下方シフトしますから経常収支は悪化します。ゆえに不適。
d:X-M線は、-mY+X-M0 でした。独立輸入はM0ですから独立輸入の増加はX-M線の下方シフトです。下方シフトするとGDPは減少、当然に経常収支も悪化しますから、本肢は不適。
e:輸出の増加は縦軸切片を上方にシフトさせます。そうするとGDPは増加し、経常収支は改善します。輸出増はGDP増加、経常収支改善という調整メカニズムを知っていると分かりますね。ゆえに本肢は正しい記述。
以上により、正解は、エ である。

最後の設問3です。
上述したように、X-M=(S-I)+(T-G) と表すこともできました。
この式の意味は、経常収支は国内貯蓄超過と財政収支の和に等しいことを表しています。
またJカーブ効果とは短期的な為替レートの変動により、かえって貿易収支不均衡が拡大する現象のことです。通常、円安になれば貿易収支が改善していきますが、それは長期的にであって、短期的には円安になってもすぐには貿易収支が改善されないということになります。
これらを踏まえて選択肢を検討しましょう。
a:アブソープション・アプローチとありますね。後回しにしよっと(笑)
b:経常収支がプラスの場合とはX-Mがプラスだということ。財政収支が赤字とはT-Gがマイナスだということ。経常収支がプラスで、財政収支が赤字であれば、貯蓄と投資の差額はプラスです。なぜなら、経常収支=国内貯蓄超過+財政収支 が成り立ちますから。ゆえに本肢は正しい記述です。

c:そもそも為替レートの増加は経常収支を悪化させます。Jカーブ効果は短期的には改善するはずが悪化したり、悪化するはずが悪化しなかったりという現象です。Jカーブ効果が発生する場合、短期的には為替レートの増加は経常収支を改善させる、という記述なら正しいといえます。ゆえに本肢は不適。
d:Jカーブ効果が発生する場合、為替レートが減価すると、短期的には経常収支は悪化します。時間の経過とともに改善していくので本肢の記述は不適です。
そうなると、実はaの記述は正しいものだといえます。
よって、正解は、ア である。

ところで、アブソープション・アプローチですが、X-M=(S-I)+(T-G) の式で説明ができそうです。
今一度確認しますと、
X-M → 経常収支。海外部門と呼びましょう。
S-I → 貯蓄から投資を引いたもの。民間部門と呼びましょう。
T-G → 財政収支。政府部門と呼びましょう。
言葉で言い直すと、
海外部門=民間部門+政府部門
となりますね。

左辺の海外部門がプラスなら、当然に右辺もプラスです。
海外部門(+) なら 民間部門(+) 政府部門(+) だし、
海外部門(+) なら 民間部門(++) 政府部門(-) だし、
海外部門(+) なら 民間部門(-) 政府部門(++) ですね。
どっかの部門に不均衡が生じたら、どっかの部門がそれを吸収(アブソープション)して均衡(バランス)を保つことをアブソープション・アプローチと呼んでいます。

そこで、もう一度設問3の選択肢aを見てみます。
肢は「経常収支はGDP国内需要内需)の差額に等しい」と書かれていますね。
GDP=Yであり、Y=YSです。GDPイコール総供給ということです。またYD=YですからGDPイコール総需要だということもできます。三面等価の原則により、YD=YS=Yとなるのですが、総供給-総需要の残余が輸出にまわる、それでバランスを保っているということがアブソープション・アプローチなんですね。
いやはや、なんていうか・・・。