経済学・経済政策【平成21年度 第4問】
【平成21年度 第4問】
次の均衡GDPの決定および変動に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。
右の図は、均衡GDPの決定を表したものである。
いま、総需要ADが消費支出C、投資支出 I 、政府支出G、貿易収支(輸出Xマイナス輸入M)から構成される経済モデルを想定する。
AD=C+I+G+X-M
また、消費関数、投資関数、輸入関数はそれぞれ、
C=C0+c(Y-T0)
I = I0-ir
M=M0+mY
として与えられる。各記号は、Y:GDP、C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T0:租税収入(定額税)、I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率、M0:独立輸入、m:限界輸入性向(m>0、c>m)である。なお、政府支出G、輸出Xは与件であり、おのおのG=G0、X=X0とする。利子率も与件であり、r=r0とする。
このとき、総需要線は
AD=C0+c(Y-T0)+I0-ir0+G0+X0-M0-mY
である。
他方、図中の45度線はY=ADを描いた直線である。
ここで、①総需要線ADと45度線の交点において生産物市場が均衡し、均衡GDPはY*の水準に決定される。②独立投資や輸出などの変化は乗数効果を通じて均衡GDPの水準に影響を及ぼすことになる。
(設問1)
文中の下線部①について、総需要線ADの説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 総需要線の傾きは、限界貯蓄性向と限界輸入性向の差に等しい。
b 政府支出の拡大と増税が同じ規模で実施された場合、総需要線の位置は変わ
らない。
c 投資の利子感応度がゼロの場合、利子率が低下しても総需要線の位置は変わ
らない。
d 独立輸入の増加は、総需要線を下方にシフトさせる。
〔解答群〕
ア a と b イ a と c ウ b と c エ b と d オ c と d
(設問2)
文中の下線部②について、輸出の変化に伴う外国貿易乗数として最も適切なものはどれか。
平成18年度第4問や平成19年度第4問に比べたらそんなに難しくはないです。だって、ADの式が与えられていますし一般的な45度線分析におけるAD線だからです。
そのAD線は、
AD=C0+c(Y-T0)+I0-ir0+G0+X0-M0-mY
ですね。もう少し整理できそうです。
AD=C0+cY-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0-mY
AD=cY-mY+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0
AD=(c-m)Y+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0 ・・・(1)
というように変形できるので、このAD線の傾きは(c-m)ということになります。
それでは設問1からいきましょう。
選択肢を検討します。
a:総需要線の傾きは(c-m)です。限界消費性向と限界輸入性向の差です。限界貯蓄性向ではありませんので不適。
b:政府支出の増大と増税が同規模で行われるとその効果が相殺されるかということですが、限界消費性向cは、0<c<1であり、cT0<G0です。ですから同規模で行われても政府支出の増大の方が効果が大きいといえます。ゆえに不適です。
cc:投資の利子感応度がゼロの場合、利子率が低下しても投資量は増えません。そもそも投資は利子率の減少関数であり、利子率が下落すれば投資量は増加しますが、感応度ゼロですから投資量は利子率の変化に反応しないのです。他の条件を一定とした場合、利子率が変化してもAD線は不変です。ゆえに本肢は正しい記述です。
Dd:独立輸入はM0です。(1)式を見れば明らかなようにM0が増加した場合、縦軸切片は下方にシフトします。ゆえに本肢は正しい記述です。
以上により、正解は、オ である。
続いては設問2です。少しめんどくさそうですね。
外国貿易乗数というものを求めよとあります。政府支出乗数や租税乗数を導出するように式を展開していけば問題なさそうですね。
(1)式より、AD=(c-m)Y+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0 で、
YS=YD=Y ですから、Y=(c-m)Y+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0 です。これを展開して、
Y=cY-mY+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0
Y-cY+mY=+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0
(1-c+m)Y=+C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0
したがって、Y=1/(1-c+m)(C0-cT0+I0- ir0+G0+X0-M0) です。
以上により、正解は、イ である。