経営法務【平成22年度 第8問】
【平成22年度 第8問】
特許法第35条によれば、職務発明とは、従業者、法人の役員、国家公務員または地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上使用者、法人、国または地方公共団体(以下「使用者等」という。)の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在または過去の職務に属する発明であると規定されている。次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
ア 菓子メーカーA社の従業者甲は、菓子を製造する装置に関する職務発明を完成
させた。当該発明に関する特許を受ける権利は、勤務規則に従い、A社に譲渡
されたが、A社は、特許出願を行わなかった。甲は、A社が特許出願を行わな
かったとしても、A社に対して特許法第35条に規定される相当の対価の支払
請求権を有する。
イ 携帯電話メーカーB社の研究開発部門に所属していた従業者乙は、B社在職中
に携帯電話に関する発明を完成させた後に、その内容を秘匿して退職した。
その後、乙が当該発明について特許出願を行った場合、当該発明は、職務発
明と認定される場合がある。
ウ 自動車メーカーC社の経理部門に所属する従業者丙が、自動車用エンジンに関
する発明を完成させた場合でも、丙の職務が自動車用エンジンに関する発明
を行うものではないので、丙が完成させた発明は職務発明には該当しない。
エ 筆記具メーカーD社の従業者丁は、筆記具に関する職務発明を完成させた。し
かし、当該発明に関する特許を受ける権利がD社に譲渡されず丁が当該発明に
ついて特許を受けた場合、D社は、特許法第35条に規定される相当の対価を
丁に支払わなければ当該発明を実施することが出来ない。
職務発明に関する問題だ。
ポイントは、発明者の業務は何ってとこでしょうか。
まずは選択肢をみてみましょう。
アですが、特許を受ける権利は甲からA社に譲渡されている。でも、A社は特許出願していない。この場合も当然に相当の対価を支払う必要がありますです。特許の譲渡料みたいなもんじゃな。
イは、乙は携帯電話メーカー時代に携帯電話に関する発明を完成させたのであるから職務発明に認定される可能性はありますです。
ウは、自動車メーカーで経理をやっている丙が自動車用エンジンに関する発明を完成させた場合ですが、丙は経理担当であり、エンジン開発担当ではないっす。だから職務が異なるのでこれって職務発明に該当しないです。
エは、D社の就業規則等に特許を受ける権利の承継についての定めがなかったのかもしれないです。定めがなければ当然に特許を受ける権利は丁にあります。ただ、筆記具メーカーで筆記具に関する発明をしたんだから、D社には無償の通常実施権が与えられるはずです。ゆえに、相当の対価を支払わないと当該発明を実施できないとする記述が不適。
ゆえに、正解は、エ であります。