経済学・経済政策【平成21年度 第6問】
【平成21年度 第6問】
いま、マネーサプライ(またはマネーストック)Mが流通現金通貨Cと預金Dから構成され、
M=C+D とする。
また、ハイパワードマネーHは流通現金通貨Cと準備預金(日銀預け金)Rから構成される。
H=C+R
このとき、マネーサプライとハイパワードマネーとの間には、
が成立し、分数部分について分母及び分子を預金Dで割ると、
である。
このうち、C/Dを現金-預金比率、R/Dを準備率とする。(2)式は、貨幣乗数を通じたマネーサプライとハイパワードマネーとの関係を表してる。なお、過剰準備が存在せず、準備率は法定準備率に等しいと仮定する。
このとき、(2)式の説明として最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 買いオペは、ハイパワードマネーを増加させ、マネーサプライの増加を生じさせ
る。
b 貨幣乗数は1より大きい。
c 公定歩合の引き下げは、ハイパワードマネーの減少を通じてマネーサプライの
減少を引き起こす。
d ハイパワードマネーが一定のもとで法定準備率を引き下げると、貨幣乗数が低
下しマネーサプライは減少する。
〔解答群〕
ア a と b イ a と c ウ a と d エ b と c オ b と d
いろいろごちゃごちゃ書かれていますが、選択肢を見てみましょう。
a:買いオペは日銀が市中の債券等を買うことでハイパワードマネーを増やすことです。ハイパワードマネーは中央銀行がコントロールできる現金預金です。マネーサプライとは文字通り貨幣供給量ですから、買いオペすることでハイパワードマネーを増やし、マネーサプライが増えるわけですから本肢は正しい記述です。
b:(2)式を見ましょう。分子と分母にC/Dがあります。分母にあるR/Dは準備率ですね。で、分子に「1」があります。R/Dは準備率ですから“率”であり、1より小さい値です。分子分母にC/Dがあるということから(2)式のMは常に1よりも大きな値になることが分かります。ゆえに本肢は正しい記述だと分かります。
c:公定歩合の引き下げはハイパワードマネーを増やします。ゆえに不適。
d:(2)式を見てください。Hが一定で、R/Dを引き下げると分母の値が小さくなりますから全体としてMの値は大きくなります。つまり貨幣乗数が大きくなるということです。ゆえに不適です。
以上により、正解は、ア である。
ちなみに現在では公定歩合という言葉はなく、基準貸付利率と改称されています。この基準貸付利率操作は現在ではアナウンスメント効果でしかなく、直接的に利子率への影響はないです。