経営法務【平成21年度 第7問】
【平成21年度 第7問】
A社の代表取締役社長からの次の質問に対する回答として最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【A社の代表取締役社長からの質問】
「当社は、平成16年(2004年)7月に設立され、設立時から苛性ソーダの製
造・販売を主な事業としていますが、このたびB社から『貴社の苛性ソーダの製
造方法について弊社の保有する苛性ソーダの製造方法に関する特許権に抵触す
るので直ちに製造・販売を中止し、現在市場に出回っている苛性ソーダを回収
するように。』との警告書を受け取りました。当社内で調べたところ、この警
告書に記載されたB社の保有する特許権の番号から特許出願がなされたのは平成
17年(2005年)5月であることが分かりました。この警告書に対してどのよ
うに対処すればよいでしょうか。」
〔解答群〕
ア B社の特許権に係る特許出願の時点で、すでに御社がB社の特許と同一の方法
により苛性ソーダの製造を行っていたことを立証できれば、B社の特許権が存
続していても将来にわたり苛性ソーダの製造方法を実施する権利がありま
す。
イ B社の特許権は、平成17年(2005年)5月に出願されており、まだ特許出願
の日から20年を経過していないため、現在でも有効に存続していることか
ら、すぐに製造・販売を中止し、市場に出回っている御社の苛性ソーダを回
収しましょう。
ウ 御社が用いている苛性ソーダの製造方法が、B社の保有する特許権に係る特許
発明の技術的範囲に属するか否かの判定を特許庁に請求するのが良いと思い
ます。
エ 御社は、B社の特許権に係る特許出願前から苛性ソーダの製造方法を実施して
いたので、B社の特許権に係る特許発明は特許出願前に公然と実施された発明
に該当するとして特許無効の審判を裁判所に請求して、B社とのライセンス交
渉を行うことが良いと思います。
これは善意のA社と、後願のB社が特許権を取得するパターンだな。だから先使用権が論点になるかも。
時系列に情報を整理すると、
2004年7月 A社設立、製造販売
2005年5月 B社特許出願
現 在 警告書受け取る
って感じだ。ふむ、先使用権がポイントになりそうだな。
アは、A社がB社の特許内容と同じ方法で製造していたことを立証すれば先使用権がが認められるってことか。立証責任があるんか。
イは、いきなり回収しましょうってわけにはいかないよな。
ウは、確かにこんな方法もあるんかもしれないなぁ。
エは、特許無効審判だってさ。こんな対抗手段もあるんかもしれないけれどね。でも、特許無効審判っていつでもできるっけ? あ、いつでも利害関係人ならできるんだ。それと、宛先って裁判所? 特許庁じゃね?
たぶん、アまたはウなんだろうなぁ。
予測通り、先使用権がポイントになるなら、アが正解だろうな。でも立証責任があるんかな? ええい、いいや、ア、で。
正解は、ア である。