自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経済学・経済政策【平成25年度 第11問】

【平成25年度 第11問】
 いま、2種類の生産要素、資本Kと労働Nを用いて、生産量Yが算出されている。次の生産関数は、労働1単位あたりの資本と労働1単位当たりの生産量との対応関係を表している。
  Y=f(k)
 ここでk=K/Nは資本・労働比率を、y=Y/Nは労働1単位あたりの生産量である。また、労働成長率nは所与であり、常に完全雇用が実現しているとする。
 また、人々は所得の一定割合sを常に貯蓄するとする。
 下図の新古典派の経済成長モデルを参照した上で、労働成長率nの低下と貯蓄率sの低下、それぞれが定常状態における労働1単位あたりの生産量に与える影響に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。ただし、k1は定常状態の資本・労働比率を表している。

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〔解答群〕
ア 労働成長率の低下と貯蓄率の低下、いずれによっても減少する。
イ 労働成長率の低下と貯蓄率の低下、いずれによっても増加する。
ウ 労働成長率の低下によって減少し、貯蓄率の低下によって増加する。
エ 労働成長率の低下によって増加し、貯蓄率の低下によって減少する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソロー=スワンモデルについて問われていますね。
1人あたりの資本量は、貯蓄率の増加によって増えますし、
同じく1人あたりの資本量は、労働人口増加率の増加によって減ってしまいます。ソロー=スワンモデルにおいては、これら2つが均衡するところ(定常均衡)で1人あたり資本量が決まるとしています。

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上の図で定常均衡の点はk0の点だとしましょう。与件のように貯蓄率の低下、労働人口増加率の低下によって、f(k)がsf(k)にシフトした場合の記述を選ぶ問題が本問です。
ポイントは、上図のnkの直線です。
そもそも人口増加率(本問では労働成長率といっていますが)が増加すると、1人あたりの資本量(労働装備率)は減少しますね。
労働成長率nは所与(一定)だとしています。たとえば、n=0.1(10%)であれば、毎年労働人口が10%増加するということです。もし、一定である労働人口増加率が大きければ、1人あたり資本量はk=K/N ですからNが増えるとkの値は小さくなることが分かります。
つまり、労働人口増加率が増加すればするほど1人あたり資本量は減少します。1人あたりの資本量が大きければ大きいほど、新入りに分け与える資本量も多くなり、kの減り方は大きくなります。
上図の直線nkは「1人あたり資本が多いほど1人あたりの資本量(労働装備率)の減り方が大きい」ことを表す直線なのです。

また、新古典派では、貯蓄=投資とみなすので貯蓄が減少すると投資が減少する。つまり生産量が減少することを意味していますね。
これらを踏まえると、
労働成長率の低下は1人あたり資本量の減り方が緩和する、言い換えると1人あたりの資本量が減り方がゆるくなるので生産量は減少しない、ですし、
貯蓄率の低下は投資量の低下を意味するので生産量の低下をも意味します。
したがって、正解は、エ だということになりますね。