自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

経営法務【平成24年度 第13問】

【平成24年度 第13問】

 特許権を取得した会社の専務取締役甲氏と、中小企業診断士であるあなたとの間の、特許権のライセンスに関する以下の会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 

甲 氏:「知財担当の主任から聞きましたが、平成24年4月から特許法の改正法が

    施行されて、特許権のライセンスについて登録制度が変更されたそうで

    すね。」

あなた:「はい。特許権の( A )の設定を受けたライセンシーが、特許権を譲り

    受けた第三者に自らの権利を対抗するため、これまでは特許庁にその権利

    の登録をする必要がありました。今後、ライセンシーは登録なしで

   ( A )を特許権の譲受人に対して当然に対抗できることになります。」

甲 氏:「当社はライセンシー側でもありますが、登録制度を利用していませんで

    した。」

あなた:「また、破産手続のことを考えると、破産管財人は破産手続開始時点で

   ( B )である破産者・第三者間の双務契約を解除できるのが原則です

    が、ライセンス契約においては、たとえ( C )が破産しても( A )

    について対抗要件が備わっていれば、破産管財人は( A )の設定契約

    を解除できません。今回の特許法改正により、特許権者から( A )の

    設定を受けたライセンシーはその後特許権者が破産しても、 破産管財人

    当然に対抗できます。ライセンスを受けた技術を安心して利用し続けられ

    ますし、特許権のライセンスビジネスでの活用の幅も広がります。」

甲 氏:「だけど、せっかく第三者が特許権を買い取っても、特許庁の登録を見ても

    分からないライセンシーへのライセンスを打ち切れないわけですよね。 そ

    れって特許権を活用したファイナンスとかM&Aの妨げになりませんか。」

あなた:「企業買収の際には、買収企業側が被買収企業側にデュー・ディリジェンス

    を実施し、被買収企業側からの_開示したライセンシーがすべてであり、 開

    示されないライセンシーは存在しない_という( D )条項をおけば、 買

    収側としては一応のリスク回避が可能です。ただ、おっしゃるとおり、隠

    れたライセンシーの存在やライセンス日付のバックデートの可能性が、 特

    許権を活用した資金調達のマイナス要因になりかねないという指摘はあり

    ます。」

甲 氏:「それに、特許権の譲渡後に譲渡人が新たなライセンシーとライセンス契約

    を結んでしまったりした場合、ライセンシーは( A )を特許権の譲受

    人に主張できますか。」

あなた:「特許法の条文上は、ライセンシーは( E )後に特許権を取得した第三

    者にその権利の効力を主張できますから、( F )が特許権の移転登録

    より先であれば、( A )の方が優先します。」

 

(設問1)

会話中の空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

 

ア A:専用実施権  B:双方未履行   C:ライセンシー

イ A:専用実施権  B:双方履行済み  C:ライセンサー

ウ A:通常実施権  B:一方履行済み  C:ライセンシー

エ A:通常実施権  B:双方未履行   C:ライセンサー

 

 

(設問2)

会話中の空欄D~Fに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

 

ア D:瑕疵担保責任  E:特許発明の実施

  F:ライセンス契約締結

イ D:実績補償    E:特許発明の実施

  F:ライセンス対象技術の実際の利用

ウ D:損失補償    E:通常実施権の発生

  F:ライセンス対象技術の実際の利用

エ D:表明・保証   E:通常実施権の発生

  F:ライセンス契約締結

 

 

 

 

 

 

 

 

平成23年の改正特許法に絡んでの出題です。改正論点はもれなく出題してくるのだなということでしょうか(笑)

平成23年の改正特許法では登録制度の変更がありました。通常実施権は設定登録を不要としたこと。また仮通常実施権も登録を不要にしたことなどが挙げられます。当然対抗制度とか呼ばれますが、専用実施権は登録が必要です。

どうやら会話の文脈からすべての空欄を埋めることは出来そうです。一気に行っちゃいますか。

空欄A:「あなた」の第二発言に「今後、ライセンシーは登録なしで」とありますからAには「通常実施権」が入りますね。これは簡単。

空欄B:Bにはよくわからない肢が並んでいます。先に空欄Cを見てみます。

空欄C:「( C )が破産しても(A:通常実施権)についての対抗要件が備わっていれば」とありますね。通常実施権を持つのはライセンシーですから空欄Cには「ライセンサー」が入ります。

ゆえに空欄Bには「双方未履行」が当てはまり、正解は、エ ということになります。

空欄D:選択肢をみると、まずはアはないなということが分かります。

空欄E:「( E )後に特許権を取得した第三者にその権利を主張できますから」とあります。ライセンサーからライセンス契約により通常実施権が発生します。もしライセンサーが破産した場合に、特許権は第三者に移ります。通常実施権には当然対抗制度がありますから、新たな特許権者に対して通常実施権の実施を主張できるという文脈です。だから空欄Eには「通常実施権の発生」が当てはまりそうです。

空欄F:当然に、通常実施権が発生するという契約がなければ通常実施権は発生しません。特許権が移転する前に、ライセンス契約が結ばれていれば通常実施権が優先されるはずですので、空欄Fには「ライセンス契約締結」が入りそうです。

そうすると、空欄Dには「表明・保証」が入り、正解は、エ ということになります。

 

なお、この「表明・保証」条項は、当該契約に関連する各種の事実について真実であると表明させることを表します。英語では、「Representations and Warranties」と表し、レップアンドワランティともいう。表明・保証条項には、当該事実が真実でない場合に相手方の契約解除や損害賠償請求などを可能にする補償条項を併せて規定するのが一般的であるといわれている。