自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

財務会計【平成26年度 その2】

【平成26年度 第14問】
 効率的市場仮説に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答
群から選べ。

a 市場が効率的であるとき、市場は完ぺきな予測能力をもっている。
b 効率的市場では、市場価格はすべての入手可能な情報を反映している。
c 効率的市場では市場価格は変動しない。
d 投資家間の激しい競争によって市場効率性は高まる。


〔解答群〕
ア aとb
イ aとc
ウ bとc
エ bとd
オ cとd

 

この効率的市場仮説とは、市場が効率的であることを示す考え方である『ランダムウォーク仮説』を説明したものですが、経験則なだけであって、科学的に証明されていないです。
株価は一定の上昇傾向(ドリフト)をもちつつも、日々の値動きは前日までとは全く無関係に(ランダムに)変化するという仮説です。
この市場の効率性には3つの仮説があるといいます。
①ウィークフォームの効率性
・・・現在の価格は過去の価格に含まれている情報を反映しているというレベル
②セミストロングフォームの効率性
・・・現在の価格は全ての公開情報を反映しているレベル
③ストロングフォームの効率性
・・・市場価格には企業や経済分析のパブリック情報もプライベート情報も全て反映されているレベル

ここまで細かく出題されるかどうかは微妙なところですがね。

選択肢をみてみましょう。
a:この効率的市場仮説とは、株価は予測できるのかといった命題に対して、リスク以上のリターンを得ることはできないとする仮説です。ですから、完璧な予測能力は持ちえていないわけです。ゆえにaは不適。
b:効率的市場仮説では、反映できる情報は瞬時に反映されるとしているので正しい記述です。
c:情報は瞬時に反映されるのが効率的市場仮説ですから、市場価格は瞬時に変動するとします。ゆえに不適。

d:激しい競争によって市場はあらゆる情報を取り込むため効率性は高くなります。つまり、ウィークフォームからセミストロングフォームへ、さらにストロングフォームへレベルが上がっていくことになります。よって本肢は正しい記述です。

以上により、bとdが正しいので正解は、エ である。

 

 

 

 

 

 

【平成26年度 第15問】
 現在A社は、全額自己資本で資金調達しており、その時価は10,000万円である。A社は毎期600万円の営業利益をあげており、この営業利益はフリー・キャッシュフローに等しい。MM理論が成り立つものとして、下記の設問に答えよ。


(設問1)
 A社が利子率2%の借入を行うことによって2,000万円の自己株式を買入消却し、負債対自己資本比率を20:80に変化させたとき、A社の自己資本利益率は何%になるか。最も適切なものを選べ。ただし、法人税は存在しないものとする。

ア 7%
イ 8%
ウ 22%
エ 24%

 

(設問2)
 (設問1)のようにA社が資本構成を変化させたとき、法人税が存在する場合、資本構成変化後のA社の企業価値はいくらになるか。最も適切なものを選べ。ただし、法人税率は40%とする。

ア 9,960 万円
イ 10,000 万円
ウ 10,040 万円
エ 10,800 万円

 

 

設問1は、負債利子を営業利益から控除することに気をつければ問題ないはずです。
2,000万円を借入し、利子率2%ですから、負債利子=2,000万円×2%=40万円です。ですから毎期の営業利益は600万円-40万円=560万円になります。
自己資本は8,000万円ですから、
自己資本利益率ROE=560÷8,000×100=7% ですね。
以上により、正解は、ア である。

ちなみにもともとは営業利益600万円、自己資本10,000万円ですからROE=6%なんですが、負債を利用することでROEが高くなるパターンのやつです。

設問2です。
企業価値を求めますが、企業価値を求めるには①FCFをWACCで割り引く ②負債価値、株主価値を足す のいずれかの方法で解が導けそうです。

ここでは、与件に「営業利益はフリーキャッシュフローに等しい」とありますから①の方法、すなわちFCFをWACCで割り引く方法でいきたいところですが、WACCを算出するのに必要な株主資本コストが不明です。
ですから②で解くしかなさそうです。

負債価値は節税額を負債利子で割り引くことで算出できます。
2,000万円×2%×40%÷2%=800万円。
さて与件にMM理論が成り立つとありますね。負債を利用すると財務レバレッジ効果が高くなるので節税効果分だけ企業価値が高まります。
もともと全額自己資本であるときの企業価値は10,000万円であり、負債を利用することで節税効果分だけ企業価値が高まるわけだから、
負債を利用した場合の企業価値は、10,000万円+800万円=10,800万円。
以上により、正解は、エ である。

 

 

 

 

 

 

【平成26年度 第16問】
 次の文章の空欄A、B に入る語句として、最も適切なものの組み合わせを下記の
解答群から選べ。


 A社は現在、相互に排他的な2つのプロジェクトX案とY案の評価を行っている。X案とY案のNPVとIRRは下表のとおりである。なお、2つのプロジェクトとも初期投資を行った後はプロジェクト期間の終わりまで常にプラスのキャッシュフローをもたらす。

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 表のとおり、割引率10%のもとでNPVはY案のほうが高いが、IRR はX案のほうが上回っている。そこで、Y案のキャッシュフローからX案のキャッシュフローを差し引いた差額キャッシュフローのIRRを計算したところ、10.55%であった。したがって、資金制約がなく割引率が10.55%以下の時は差額キャッシュフローのNPVは( A )となり、( B )案が採択されることになる。


〔解答群〕
ア A:プラス   B:X
イ A:プラス   B:Y
ウ A:マイナス  B:X
エ A:マイナス  B:Y

 

 

排他的な2つのプロジェクトとありますから、一方を採用すると他方は棄却されます。本問はNPVとIRRがテレコになっているパターンの問題ですな。

Y案のCFからX案のCFを差し引くと、82万円です。この差額CFのIRR=10.55%だということですね。
IRRはNPV=ゼロのときの割引率ですね。IRRとは投資の収益率ですからIRR>利子率であるときに投資を実行することになります。つまり割引率が10.55%以下であるときは10.55%>割引率ですから投資は実行されます。すなわちNPVはプラスであると分かります。

次に、じゃぁ、X案を選択するのかY案を選択するのかってことですが、企業価値の最大化を目指す場合NPVが高いほうを優先します。
ですから選択するのはNPVが高いY案。
したがって、正解は、イ である。

 

 

 

【平成26年度 第17問】
 安全資産の収益率とリスク資産の収益率との相関係数ρの値として、最も適切なものはどれか。

ア ρ=-1
イ ρ=0
ウ 0< ρ < 1
エ ρ=1

 

これ、意外と正解率が低かったそうです。

実は安全資産の収益率とリスク資産の収益率との間には相関は全くないです。

よって、正解は、イ なんです。

安全資産はリスク(標準偏差)が高くなればリターン(期待収益率)も高くなりリスクが低ければリターンも低くなります。つまり、右上がりの直線になります。
一方、リスク資産を図示すると、弓形の形状になることが知られていますね。弓形ですからリスクが高くなればリターンも高くなるとは一義にいえません。

 

 

【平成26年度 第18問】
 A証券および市場ポートフォリオの収益率に関する以下のデータに基づいて、A証券のベータ値を計算した場合、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

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〔解答群〕
ア 0.4
イ 0.5
ウ 0.8
エ 2

 

 

本問はβ値を算出するだけの問題なんですが、式を覚えていないとダメだったらしいです。
ベータ=証券Aと市場ポートフォリオの共分散÷市場ポートフォリオの分散 ・・・①
で出すのですが、いちいち覚えていられませんね。
相関係数は次の式で算出します。
相関係数=証券Aと市場ポートフォリオの共分散(以下、「共分散」)÷A証券の標準偏差(以下、「A標準偏差」)×市場ポートフォリオ標準偏差(以下「Rm標準偏差」) 

相関係数の式を変形します。
共分散=相関係数×A標準偏差×Rm標準偏差 ・・・②
市場ポートフォリオの分散=市場ポートフォリオ標準偏差の2乗ですね。

②式を①式に代入しましょう。

ベータ=相関係数×A標準偏差×Rm標準偏差÷市場ポートフォリオの分散
ベータ=相関係数0.4×A標準偏差10%×Rm標準偏差5%÷Rm標準偏差5%×Rm標準偏差5%
ベータ=0.4×10%÷5%=0.8
よって正解は、ウ である。

 

 

【平成26年度 第19問】
 A社の配当は60円で毎期一定であると期待されている。このとき、以下のデータに基づいてA社の理論株価を算定した場合、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

【データ】
 安全利子率:2 %
 市場ポートフォリオの期待収益率:4 %
 A社のベータ値:1.5


〔解答群〕
ア 1,000 円
イ 1,200 円
ウ 1,500 円
エ 3,000 円

 

こいつは配当割引モデルの問題ですな。
本問では株主資本コストが分かっていませんが、CAPMモデルで求めることができそうですね。

CAPM=2%+(4%-2%)×1.5=5%

したがって、60÷5%=1,200

以上により、正解は、イ である。

これは難易度低いですね。

 

 

 

【平成26年度 第20問】
 企業価値評価に関する次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

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(設問1)
 文中の空欄に入る語句として、最も適切なものはどれか。

ア 収益還元法
イ 純資産価額法
ウ マルチプル法乗数法
エ リアルオプション法


(設問2)
 文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア PBRとは、株価を 株当たり売上総利益で除して求められる。
イ PBRとは、株価を 株当たり売上高で除して求められる。
ウ PBRとは、株価を 株当たり純資産で除して求められる。
エ PBRとは、株価を 株当たり当期純利益で除して求められる。

 

(設問3)
 文中の下線部②について、以下の問いに答えよ。

 A社の財務データは以下のとおりである。なお、A社の営業利益は、利息・税引前キャッシュフローに等しく、将来も永続的に期待されている。A社は負債を継続的に利用しており、その利息は毎年一定である。また、A社の法人税率は40%であり、税引後利益はすべて配当される。負債の利子率が5%、株式の要求収益率が9%であるとき、負債価値と株主資本価値とを合わせたA社の企業価値をDCF法によって計算した場合、最も適切な金額を下記の解答群から選べ。

【A社のデータ】(単位:万円)
 営業利益 1,100
 支払利息 500
 税引前利益 600
 法人税(税率:40%) 240
 税引後利益 360


〔解答群〕
ア 4,000万円
イ 6,000万円
ウ 14,000万円
エ 14,333万円

 

 

設問1は正答率が低かったそうです。初見でしょうかね。
企業価値評価に関して言えば、受験生であれば、
①コストアプローチ
②インカムアプローチ
③マーケットアプローチ
という三つを押さえておいたはずです。
アの収益還元法は②インカムアプローチですし、
イの純資産価額法は①コストアプローチですし、
ウのマルチプル法は③マーケットアプローチですし、
エのリアルイプション法は不確実性を伴う投資プロジェクトの価値を 評価する方法の一つですから本問には関係なさそうです。

これらの①~③をさらに細分化して押さえておく必要があるってことですな。
設問1の正解は、ウ である。

次は設問2です。
PBRは株価純資産倍率のことです。株式総額を純資産額で除したものです。または株価を1株当たり純資産額(BPS)で除したものですから、正解は、ウ です。これはカンタンでした。

次は設問3です。
企業価値をDCF法で求めます。

企業価値を求めますから、先の第15問設問2と同じ考え方で攻めます。
本問の場合も負債価値と株主価値を出して合算する方法で解きます。資本構成が不明なのでWACCが出せないからです。

負債利子=5%、支払利息=500 ですが、支払利息は債権者が獲得するCFです。ですからこれを負債利子で割り引くことで負債価値が出せます。
500÷5%=10,000 ・・・①

税引後利益はすべて配当されますから、税引後利益=360、株式の要求収益率=9%より、360÷9%=4,000 が株主価値 ・・・②

①②より、負債価値と株主資本価値をあわせた企業価値は、14,000万円とわかる。

以上により、正解は、ウ である。

 

 

【平成26年度 第21問】
 システマティック・リスクの意味として、最も適切なものはどれか。

ア 先物価格と現物価格との差が理論値からかい離することにより損益が変動する
  リスク。
イ 市場全体との相関によるリスクであり、分散化によって消去できないリスク。
ウ 市場で取引量が少ないために、資産を換金しようと思ったときにすぐに売ることが
  できない、あるいは希望する価格で売ることができなくなるリスク。
エ 取引相手に信用供与を行っている場合に、取引相手の財務状況の悪化や倒産
  により利払いや元本の受取が滞ってしまうリスク。

 

本問は知らないと解けないっす。
ステマティックリスクとは市場リスクのことです。
全銘柄に影響を与えるような、取り除けないリスクのことを市場リスクとかマーケットリスクとかシステマティックリスクとかいいます。
また、分散投資によって取り除くことができるリスクは個別リスクとかユニークリスクとかいいます。

ア:これをベーシスリスクといいます。
イ:これが正解。
ウ:これは流動性リスクといいます。
エ:これは信用リスクといいます。

 

 

【平成26年度 第22問】
 コール・オプションの価値に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 他の条件が一定であるとき、金利が高ければコール・オプションの価値は高く
  なる。
イ 他の条件が一定であるとき、原資産の価格が高ければコール・オプションの価値
  は高くなる。
ウ 他の条件が一定であるとき、原資産の価格変動性が高ければコール・オプション
  の価値は低くなる。
エ 他の条件が一定であるとき、行使価格が高ければコール・オプションの価値は低
  くなる。

 

いやらしい問題ですね。

コールの場合です。
ア:金利が高いとリスクもありそう。だから価値も高そう。
イ:原資産の価格が高いから価値があるのでは?
ウ:原資産の価格変動性はバラツキを表すんでは? バラツキが大きいほどリスクがある。リスクがあるほどリターンもある。だから価値は高そう。
エ:原資産価格と権利行使価格について、原資産価格>権利行使価格の場合利益が出ますな。だから権利行使価格が高いってことはそれ以上に原資産価格が高くならないといけないってこと。だから、権利行使価格が高いから利益でなさそう。利益が出ないオプションは不人気。だから価値なし。

よって、正解は、ウ ですね。