平成24年度事例4
この事例は右手がどんどん動いていくのに、初見で自己採点レベル48点だったという体たらく。そそっかしい計算ミス、いわゆるボーンヘッドの連続で足切りの危機。それの振り返り。
第1問 損益計算書作成
条件に従って計算できれば問題ないんだけれど、一つでもミスると連鎖して全滅する。初見のときには連鎖して自滅した感じだ。
・改修費用=180,000千円 手持ちの現金:50,000千円+借入金130,000千円(金利4%)。耐用年数10年で残存価額ゼロの定額法で減価償却する。DEP=18,000千円
・改修後の客単価は@23,000 初年度の客数17,000人、2年目以降18,000人
・また固定費のうち、設備保守修繕費が20%増の12,000 水道光熱費は10%増の44,000 広告宣伝費は10%増の7,150 が見込まれている。残る固定費は不変
これらを踏まえて、
①売上高
初年度:@23,000×17,000人=391,000千円
2年目以降:@23,000×18,000人=414,000千円
②売上原価
売上原価は変動売上原価と同じだから、もともと16,500人で92,400千円なので92,400×17,000/16,500=95,200
売上高−売上原価=売上総利益だから、414,000-95,200=295,800
④販管費
販管費は変動販管費+固定費だから、変動販管費は、もともと16,500人で43,890千円なので、43,890×17,000/16,500=45,220
固定費=設備保守修繕費+水道光熱費+宣伝広告費+事務通信費+人件費+減価償却費 だから、固定費=44,000+6,000+7,150+12,000+119,300+43,400=231,850
ゆえに、販管費=45,220+231,850=277,070
⑤営業利益
売上総利益−販管費=295,800-277,070=18,730
与件より発生しない、とある。
⑦営業外費用
金融機関から130,000千円を金利4%で借入するから、支払利息=130,000×4%=5,200千円。よって、営業外費用=19,160+5,200=24,360
⑧経常利益
営業利益(+営業外収益)-営業外費用=18,730-24,360=-5,630
<初年度の損益計算書>
売上高 391,000
売上原価 95,200
売上総利益 295,800
販管費 277,070
営業利益 18,730
営業外費用 24,360
経常利益 −5,630
同様に、2年目以降は
①売上高
@23,000×18,000人=414,000千円
②売上原価
92,400×18,000/16,500=100,800
414,000−100,800=313,200
④販管費
変動販管費=43,890×18,000/16,500=47,880
固定費=231,850
47,880+231,850=279,730
⑤営業利益
313,200-231,850=33,470
⑥営業外費用=24,360
⑦経常利益
33,470-24,360=9,110
<2年目の損益計算書>
売上高 414,000
売上原価 100,800
売上総利益 313,200
販管費 279,730
営業利益 33,470
営業外費用 24,360
経常利益 9,110
設問1でミスったのは売上原価の算定でボーンヘッドをやってしまった。変動売上原価+変動販管費を求めて変動費率を出してしまったんですな。ごちゃごちゃやらないで素直にやっておけばよかったのにね。だからここでほぼ壊滅したんで40点取り損ねたわけ。
(設問2)
改修工事を行ったことで売上高増、販管費増、支払利息増、有形固定資産増、負債増となったことが分かる。この改修投資によって収益性が改善したかどうかがわかる指標は、
①改修イコール投資なので、投資のリターンを計る指標の「総資本経常利益率」をチョイス。これが選べなかった。
②借入して支払利息が増加しているので「売上高経常利益率」
③稼働率が悪く、売上に貢献できなかった旧館を改修した結果、売上増、客数増なんだから「有形固定資産回転率」
ゆえに、 総資本経常利益率 1.29%
売上高経常利益率 2.20%
有形固定資産回転率 0.69回
(設問3)
NPVの問題だが、実はこの問題はそんなに難しくない。設問1でPLを作成しているからだろう。ただ、改修前の営業キャッシュフローが、改修したことでどれだけ純増したかを確かめる必要があるのでそこだけ注意が必要だ。
・改修前の営業利益=-13,490 初年度=18,730 2年目以降=33,470
・営業CF=営業利益×(1-実効税率)+減価償却費
ゆえに、初年度の営業CFは、
{18,730-(-13,490)}×(1-0.4)+18,000=37,332
2年目以降の営業CFは、
{33,470-(-13,490)}×(1-0.4)+18,000=46,176
現価係数は、6%/1年=0.943 6%/10年=7.360 だが、2年目〜10年目は9年間だから7.360-0.943=6.417 を用いる。初期投資=180,000 を忘れずに。
NPV=37,332×0.943+46,176×6.417-180,000
=35,204.076+296,311.392-180,000
=151,515.468(千円)
ゆえにNPVは正のため、この投資案を実行すべきである。
計算過程を記述する必要があるから途中式などを丁寧に書くと部分点が狙えそう。
第2問(設問1)
・旧館を閉鎖、新館のみで営業。@20,000で客数15,000人
→売上高=20,000×15,000=300,000千円
・人件費、DEP除く固定費は30%減
→固定費=207,200千円 人件費=119,300 DEP=25,400
→207,200-119,300-25,400=62,500
→62,500×(1-0.3)=43,750
→新館のみの固定費=188,450
求めるのは損益分岐点比率。変動費率が分かれば良い。
売上原価=92,400×15,000/16,500=84,000 (←変動売上原価)
変動販管費=43,890×15,000/16,500=39,900
ゆえに変動費総額=123,900 変動費率=123,900/300,000=0.413
したがって、損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率)
=188,450/(1-0.413)=321,039.9182282・・・ →321,040(千円未満四捨五入)
損益分岐点比率=321,040÷300,000×100=107.013%
(設問2)
改善策実施後の損益分岐点比率=90% より、損益分岐点売上高=270,000千円
このときの変動費率=41.3%だから、
損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率) より、
270,000=固定費÷(1-0.413) 固定費=158,490
改善策実施前の固定費=188,450 より、
固定費の削減額=188,450-158,490=29,960(千円)
初見の時には設問2は売上原価と変動販管費の算出をミスっているからここもほぼ全滅だった。連鎖するからこわいね。
第3問(設問1)
企業価値を求めよって。割引キャッシュフロー法を用いよとあるからFCF÷WACCで算出するんだろう。
・単位:千円 千円未満四捨五入
・オーナー夫妻の給与16,000千円は不要(←人件費っすね)
今年度の営業利益=-13,490 オーナー夫妻の人件費、つまり販管費が不要になるので、営業利益=-13,490+16,000=2,510
よって、営業キャッシュフロー=2,510×(1-0.4)+25,400=26,906(千円)
ここで、負債=458,300 純資産=114,575 より、
WACC=(458,300×4%×0.6+114,575×5%)÷572.875×100=2.92%
したがって、企業価値=FCF÷WACC=26,906÷2.92%=921,438.35・・・ →921,438千円(千円未満四捨五入)
(設問2)
承継先として従業員と同業他社が考えられる。留意点は、従業員の場合、関係者への理解、知識やノウハウを継承するための後継者教育、株式を一定程度後継者に集中させておくことである。同業他社の場合は、まず自社の実力をできる限り磨き上げておくことに加えて、企業風土を守るために事前に経営に参画させること、従業員満足が得られるように従業員に十分な説明をして理解を得ること、関係者への理解を得ることである。
24年度は、変動売上原価と変動販管費が与えられた場合の感度分析に課題が残った。かなりあぶなっかしい感じだったの強烈に印象に残ってしまった。だから忘れないだろう。
最後の論述は部分点を稼げる程度にかければいいやね。
総じて、CFだのCVPだのNPVだのいつもと変わらぬラインアップの出題。ミスしなければ、というところだろう。ここが合否の分かれ目、か。