自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第60話 経営法務⑩ 株です

今回は株式からです。長いので前置きはナシで。

株式とは、均一細分化された割合的単位の形をとった株式会社の社員たる地位のこと。意味不明。まぁよい。

株券とは、株式会社の株主としての地位を表す有価証券のこと。株券の発行は任意。定款に定めれば株券を発行することができる。また、株式譲渡制限会社では、定款に株券を発行する旨を定めた場合でも、株主から請求があるまでは株券を発行しなくてもよいとされている。

 ●株券 → 発行は任意。定款により発行可。譲渡制限会社は株券を発行すると定款で定めても、株主の請求があるまでは発行しなくてもよい

1.募集株式の発行

1)発行可能株式総数と発行済株式総数

会社法では次のような規定がある。
①公開会社では、設立時発行株式の総数は発行可能株式総数の4分の1を下回ることができない譲渡制限会社では4分の1を下回ることができる
②定款の発行可能株式総数についての定めを廃止することはできない
③定款の変更によって発行可能株式総数を減少するときは発行済株式総数を下回ることはできない
定款の変更によって発行可能株式総数を増加する場合、公開会社では発行済株式総数の4倍を超えることができない。譲渡制限会社では4倍を超えることは可能

※定款の変更は株主総会特別決議が必要

2) 募集株式の発行等の手続き

①株式譲渡制限会社の場合
譲渡制限会社では、募集株式の発行については原則株主総会特別決議が必要株主総会は、募集事項の決定を取締役または取締役会に委任することができる。この委任についても株主総会特別決議。委任された事項は当該決議の日から1年間有効

 ●譲渡制限会社 → 株主総会特別決議
          取締役または取締役会への委任も特別決議(有効期間は1年間)

②公開会社の場合
公開会社の場合は、原則、取締役会決議だが、募集株式の発行が有利発行の場合には既存株主に不利益が生じる可能性もあるので株主総会特別決議が必要となる。

 ●公開会社 → 取締役決議。ただし、有利発行の場合は株主総会特別決議

③検査役の調査
設立手続きと同様に、募集株式の発行にあたって現物出資を行う場合、検査役の調査が必要となる。ただし、現物出資の価額が500万円以下の場合は検査役の調査は不要。また現物出資者に対する株式の割り当てが発行済株式総数の10分の1以下であっても検査役の調査は不要。DES(債務の株式化)において、当該金銭債権について弁済期が到来していること、DESの目的となる金銭債権の価額が当該金銭債権にかかる負債の帳簿価額を超えない場合も検査役の調査は不要となる

③の論点はかなり細かい。

2.種類株式

 ここからは株式の種類についてふれる。いろいろあるんだなぁ。
定款に発行する株式の種類や発行可能種類株式総数を記載することで種類株式を発行することができる。種類株式は9つ規定されている。

①剰余金の配当
②残余財産の分配
①②について有利な内容の株式を有利株、不利な内容の株式は劣後株、有利でも不利でもない、基準となる株式は普通株とよぶ。
③議決権制限株式
株主総会において議決権を行使できる事項に制限がある株式のこと。公開会社も譲渡制限会社も発行することができるが、公開会社の場合、議決権制限株式の数が発行済株式総数の2分の1を超えた場合はただちに2分の1以下にするための措置をとらなくてはならない
④譲渡制限株式
取得請求権付株式
株主が、当該株式会社に対してその取得を請求することができる株式のこと。普通株から優先株といったように他の種類の株式に転換することができる権利を与えられた株式などが該当する。
取得条項付株式
株式会社が、一定の自由が生じたことを条件として取得することができる株式。あらかじめ定められた条件に従って、株式会社が強制的に株式の種類を変えることができる株式などが該当する。
全部取得条項付株式
株式会社が、株主総会特別決議によって当該発行済種類株式の全部を取得することができる株式のこと。

拒否権付種類株式(通称)
株主総会決議事項(または取締役会決議)について、当該種類株主総会の決議も承認要件に加えた株式。これにより、株主総会で承認された議案でも、種類株主総会で否決することが可能になる。そういう意味で「黄金株」と呼ばれる。
役員選任権付種類株式(通称)
取締役または監査役について、当該種類株主総会において選任する権限を与えた株式。委員会設置会社および公開会社は発行できない。なお、ここでいう“役員”には会計参与は含まれない。
 種類株主総会とは、種類株式を有する株主ごとに開催される株主総会

ここいらもかなり細かい論点が並ぶのだけれど地道に覚えていくしかなさそうだ。

3.自己株式

 自己株式とは、株式会社が保有する自己の株式のこと。株式会社が発行した株式を、当該株式会社が持つことだが、基本的には、発行した株式を出資者がもつことで資金調達するはずである。出資者は当該株式会社に対して株式を返還することで出資額を払い戻してもらうことはできないとされている。だから当該株式を譲渡したとしても株主が変わるだけで出資額は変わらない。
 したがって、基本的には当該株式会社は自ら発行した株式を会社として持つことはできないことになるが、それでも株式会社が自ら発行した株式を持つことがある。それについての説明。

まずは自己株式の取得について。
 株主との合意により有償取得する場合、原則として、株主総会の普通決議が必要。当該決議の有効期間は1年間で、分配可能額を超える自己株式の取得はできないと規定している。また、特定の株主から取得する場合には株主総会特別決議が必要であり、取締役会設置会社が子会社から取得する場合には取締役会決議でOK。市場取引または公開買い付けなどで自己株式を取得する場合には、取締役会設置会社であれば、取締役会決議によって取得できる旨を定款に定めることができる。

 ●自己株式の取得 → 原則、株主総会普通決議(有効期間1年)
  (例外) 特定の株主からの取得は株主総会特別決議
       子会社からの取得は取締役会決議
       市場取引または公開買い付けの場合、定款に定めることで取締役会決議

 特定に株主からの取得については、売主追加請求権が認められている。
 特定の株主以外の株主は、自己が持つ株式を当該特定株主に追加して欲しいと株式会社に請求することができる権利のこと。ただし、相続等一般承継で得た株式を、譲渡制限会社が自己株式として取得する場合は、売主追加請求権は認められない
なお、この売主追加請求権は、定款によって排除することができる。定款の変更には株主総会特別決議が必要だが、この場合は株主全員の同意を得なければならないとしている。

 ●売主追加請求権 
  → 特定株主以外の株主が当該株式会社に対して売り渡しを請求する権利
 ●一般承継で得た譲渡制限会社の株式 
  → 当該株式を自己株式として取得する場合、売主追加請求権は認められず
 ●売主追加請求権の排除 
  → 定款変更が必要で、株主全員の同意必要

次に自己株式の処分(売却など)について。
 原則として次のようになる。譲渡制限会社は株主総会特別決議。公開会社は取締役会決議(有利株の処分は株総特決)。
自己株式の消却
 株主の地位を消滅させることだから、発行済株式総数を減少させること。株式会社は自己株式のみ消却できる。消却できる株式は自己株式に限られるので発行済株式を消却するためには自己株式として取得しなければならない。
相続人等に対する売渡請求。
 株式会社は相続等一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対して、当該株式の売渡を請求することができる旨を定款に定めることができる。なお、売渡請求には株総特決による承認が必要とされる。
なお、自己株式には議決権がなく、剰余金の配当等もされない。だから自己株式をもつということはただ単に「持っている」に過ぎないということになる。

 ●自己株式の処分 → 譲渡制限会社は株主総会特別決議
           公開会社は取締役決議(有利株は株総特決)
 ●自己株式の消却 → 発行済株式総数が減る
 ●譲渡制限株式の売渡請求 → 定款の定め必要。売渡請求は株総特決の承認必要

4.株式併合・分割・無償割当

①株式併合
数個の株式を合わせて、例えば、今までの10株を1株にするような、少ない株式に変更すること。株主に不利益があるので、株主総会特別決議が必要。
株式分割
発行済株式を細分化して従来よりも株式の数を増やすこと。
株式分割は純資産額を変動させずに発行済株式数を増やすことができるので株価を引き下げる効果を持つ。株主に有利となるので、取締役会設置会社は取締役会決議、不設置会社は株主総会普通決議が必要

③株式無償割当
株主に対して、その有する株式の数に応じて、新たな払い込みをさせないで(=無償で)、株式を割り当てること。株式無償割当では、異なる種類の株式を割り当てることも、保有する自己株式を割り当てることも可能。当然に無償割当で自己株式が増えることはない。取締役会設置会社は取締役会決議が必要だが、不設置会社は株総普通決議。定款に別段の定めをすることができる。

 ●株式併合 → 株総特決
 ●株式分割 → 取締役会決議(不設置会社は株総普決)
 ●株式無償割当 → 取締役会決議(普設置会社は株総普決)

5.単元株

 単元株とは、一定の数の株式をもって株主が株主総会で議決権を行使できる株式のこと。たとえば、10株で1議決権だとすれば、100株保有する株主は10議決権を持つこととなる。
 株式会社は、定款に定めることで単元株制度を採用できるが、1,000および発行済株式の総数の200分の1にあたる数を超える数を1単元とすることができない。
 単元株の増加は株主に不利益。よって株総特決単元株の減少および廃止は株主に不利益がないので取締役会決議(不設置会社は取締役の決定)が必要となる。
 また、単元株制度によって、1単位に及ばない株主は、当該株式会社に対して株式買取請求権をもつ。また定款に定めることで株式会社は単元未満株主に対して売り渡すよう請求することができる。

 ●単元株式数の増加 
 → 1,000および発行済株式の総数の200分の1を超える数を1単元は不可。
   単元株式数の増加は株総特決必要
 ●単元株式数の変更 → 定款の定め
 ●単元未満株主 → 買取請求権あり
 ●定款に定めれば、単元未満株主に売り渡すよう請求できる


ふ~、長かったなぁ。