自称週末ファーマーの国家試験受験記

自己啓発の延長なのか、自己実現の手段なのか、はたまた意地の張り合いか。生きているうちに“何か”を成し遂げたいから走り続けているような感じがする

第70話 経営法務⑮ 再編

会社は、戦略の手段として、合併などの組織再編を行う場合がある。
いろいろあるんですよねー。
事業譲渡②吸収合併③新設合併④株式交換⑤株式移転⑥吸収分割⑦新設分割 とこんなにあるんだよね。
じゃ、まずは①事業譲渡からいきますか。

事業譲渡

一定の営業目的のために組織化された機能的財産を、一体として移転すること。
たとえば、
     A社にはP事業とQ事業がある。
     B社にはR事業がある。
     A社のQ事業をB社に売却したい。
     B社はQ事業を譲り受ける代わりに対価として金銭を支払う
といった感じ。このとき、A社は譲渡会社、B社を譲受会社という。

事業譲渡に関する主な規定として次のようなものがある。
譲渡会社(A社)は当事者間に別段の意思表示がない限り同一市町村および隣接市町村において20年間の競業禁止義務を負う。伸長・短縮は可能だが、30年を超える特約は結べないことになっている。
また事業譲渡にはいくつかの種類がある。事業の全部譲渡、重要な一部の譲渡、重要でない一部の譲渡の3つだ。

 ●全部譲渡 → 譲渡会社(A社);株総特決必要  譲受会社(B社);株総特決必要
 ●重要な一部の譲渡 → 譲渡会社(A社);株総特決  譲受会社(B社);不要
 ●重要でない一部の譲渡 → 譲渡会社も譲受会社も不要

なお、「重要な一部の譲渡」とは、譲渡資産(上記の例でいうと、Q事業)が譲渡会社(A社)の総資産額の5分の1を超える価額のものをいう。超えない場合は「重要でない一部の譲渡」となり、譲渡会社も譲受会社も株総特決は不要となる。

 ●重要な一部の譲渡 → 譲渡会社の総資産額の5分の1を超える価額の事業を譲渡するとき

事業譲渡に反対する株主は株式買取請求権を有する。また事業譲渡計画に関する書面の備え置き、閲覧等の義務はない。事業譲渡には、債権者保護手続は不要だとされている。

 事業譲渡に反対する株主 → 株式買取請求権あり
 ●事業譲渡 → 契約の備え置き等の義務ナシ
 ●債権者保護手続 → 不要

次は合併。合併には②吸収合併と③新設合併とがある。
合併とは、2以上の会社が契約により1つの会社に合同する組織上の行為。

吸収合併

 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるもの。
 たとえば、C社がD社を吸収する場合、
      C社 → 存続会社
      D社 → 消滅会社。このときD社の権利義務はすべてC社に承継
といった感じ。

新設合併

 2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全てを合併により設立する会社に承継するもの。
 たとえば、E社とF社が新設されるG社に合併される場合、
      E社 → 消滅会社
      F社 → 消滅会社
      G社 → 新設される会社。E社、F社の権利義務の全部はG社に承継
といった感じ。

②③共通の規定は以下のとおり。
合併の当事者たる会社は、合併契約について原則として株総特決による承認が必要。合併契約の内容等を記載した書面を本店に一定期間備え置く義務がある。また、合併に反対する株主には株式買取請求権がある。合併は債権者保護手続が必要。全ての会社(株式会社および持分会社)で相互に合併できる。

 ●合併 → 吸収も新設も株総特決必要
 ●合併契約 → 本店に一定期間備え置き
 ●合併に反対する株主 → 株式買取請求権あり
 ●債権者保護手続 → 必要

実務上は新設合併は手続が多くあるので吸収合併のほうが多く見られるらしい。

次は④株式交換と⑤株式移転について。
言葉だけだとあまり聞きなれない感じがするね。株式交換と株式移転は親子関係をつくる組織再編です。

株式交換

 株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させること
 たとえば、
      株式会社のH社と株式会社(または合同会社)のJ社
      H社をJ社の完全子会社にしたい
      このときH社が完全子会社、J社が完全親会社
といった感じ。

子会社となるH社の株主が保有するすべての株式(H社株)を、親会社となるJ社の株式と交換することでH社を子会社化する。

 ●H社株主 → H社株をJ社に渡す
 ●J社 → H社株と引き換えにJ社株を渡す。つまり交換する
 ●株式交換 → H社株主がJ社株主へ

J社はH社の株式を100%保有することになり、H社を完全子会社化する。つまりJ社は現金でH社を買収する代わりに自己株式を利用することで現金の拠出をなくすことができる仕組みだ。

株式移転

 1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させること
 例えば、
 株式会社のK社と株式会社のL社がある
 M社を新設し、K社とL社を完全子会社にしたい
 このとき、M社は完全親会社となり、持株会社ホールディングカンパニー)となる
といった感じ。

子会社となるK社とL社の株主が保有する株式の全部を、新設されるM社の株式と交換する方法である。

 ●K社株主、L社株主 → K社株、L社株をM社に渡す
 ●M社 → K社株、L社株と引き換えに、M社株を渡す。つまり株式交換
 ●M社 → 新設されたM社がK社株、L社株を100%保有し、完全親会社(持株会社)となる

④⑤に関する規定は次のとおり。
株式交換契約、株式移転計画について原則として株総特決で承認を受ける必要がある。また当該内容を記載した書面を本店に一定期間備え置かなければならない
株式交換契約、株式移転計画に反対する株主は、原則として株式買取請求権を有する。株式交換、株式移転は債権者保護手続は不要持分会社は基本的には株式交換、株式移転の当事者にはなれないが、合同会社のみ、株式交換での完全親会社になれる。株式移転は株式会社のみ可能。

 株式交換契約、株式移転計画 → 株総特決
 ●当該契約および計画 → 内容を記載した書面の備え置き義務アリ
 ●反対株主 → 株式買取請求権アリ
 ●株式交換、株式移転 → 債権者保護手続不要
 ●合同会社 → 株式交換で完全親会社になれる(完全子会社にはなれない)
        合名会社、合資会社株式交換に参加できない
 ●株式移転 → 株式会社のみ可能


キリがいいのでここまでにしようかな。
続く。